033「ポテトフライ販売開始!(1)」
——『ポテトフライ販売開始』
「みんな⋯⋯準備はいい?」
「「「「「おう!」」」」」
午前10時——いよいよポテトフライの販売開始の時間となった。
俺は建物から出て、孤児院の敷地入口の門扉を開けに行こうとした⋯⋯すると、
「あ、出てきた!」
「お、来たぞー!」
「待ってたわよー!」
「ポテトフライ買いに来たぞー!」
「早く開けてくれー!」
「え? え? え?」
扉が開くのを今か今かと待っている多くの人たちがいて、俺の姿を見るや否や歓声が上がった。
いや、何これっ?! フェス? 何かのフェスぅぅ〜〜っ!!!!
想像以上の数に唖然としたものの、孤児院が開くのを結構前から待っていたのか少し苛立っている様子だったので俺は気を取り直して門扉を開けに走る。
「皆さん! 本日はお越しいただきありがとうございます! 今からポテトフライの販売となりますが一度に皆が入ると危険なので2列に並んで入ってきてください。ポテトフライは大量にあるので大丈夫ですから押さずにゆっくりと入ってくるようお願いいたします。では開けまーす!」
ガチャリ⋯⋯ギィィ〜。
「ゆっくり、ゆっくりずつ、3列に⋯⋯はい、そうです。お願いしまーす!」
お客さんが俺の指示をちゃんと聞いて3列に並んでゆっくり入ってきてくれた。
見た感じ、ざっと30人前後といったところか。
「料理班! 50袋用意〜!」
「「ラ、ラジャー!」」
俺は料理班のシエラとファラに指示を出す。
ちなみになぜ50袋なのかというと一人で2袋以上買う人を見越しての判断だ。ただお客さんは平民なので『2袋銀貨4枚』を出せる人はそう多くないとは思うが、しかしその30人を捌いている間に追加でさらにお客さんが来ることを想定しての判断でもあった。
さて、そんな料理班だが、今回そこにはヴィラともう一人⋯⋯最年少のファラを抜擢した。
というのも、ファラは計算はそこまで得意ではなかったが、文字の読み書きの覚えがよかったのと料理に関して才能を発揮。そういうこともあって、今回2人しかいない重要な料理班にファラを大抜擢した。
********************
「ポテトフライ1つちょうだい!」
「はい、どうぞ!」
「俺は2袋だ!」
「ありがとうございます!」
「こっちも2袋お願い〜!」
「かしこまりました〜!」
ポテトフライは食堂で販売することとなった。理由としては、食堂なら広いし机やイスなどがあるので何かあったとき柔軟に対応できると考えたからだ。
実際、食堂に置いてある長机を横に3つ並べ、1つの長机ごとに『商品受け渡し役』と『会計役』の2人を配置するなど食堂にあるものを最大限利用した。
そして、ここはお金の受け渡しを行う重要な場所でその作業を一手に引き受けるのが『会計役』。なので、ここには子供達の中で特に計算に強いヴィラ、ボンズ、ミネアの3人を当てた。
計算が強いといえば本来シエラがそれに該当する。なんせ孤児院の子供達の中で計算の最速王者。RTA王者だ。しかも彼女は計算だけでなく料理も接客もこなす『オールラウンドプレイヤー』でもあった。
悩んだ挙句、シエラには料理班に入ってもらった。
あと会計役にボンズがいるが、彼は最初計算を苦手としていたが100マス計算をやってその才能を開花した。なんとシエラ、ヴィラに次いで上位3番目の計算問題の成績優秀者となるまでに至った。わからないものである。
いずれにしても、この会計を3つに分けるやり方を取ったおかげで、30人以上いたお客さんをそこまで待たせることなく裁くことができた。
残りの子たちは、商品受け渡し役を交互にやったり、できあがったポテトフライを机まで運んだりするなどホールスタッフなどをやってもらった。
ちなみに俺は全体を見守り指示を出すフロアマネージャー役を担当。会計や商品受け渡しなどでまごつかないようフォローしたりしていた。
********************
その後、予想通り最初の客を裁く途中にさらにお客さんが列を作った。おかげで60袋を売り切った。
いや、それは語弊があるな。60袋は《《あっという間に》》売り切れた。
——午後1時
お客さんがちょうどいなくなったところで孤児院の門扉を閉めた。ポテトフライ販売1日目の終了である。そして、その1日目の結果だが、
「きょ、今日1日で81袋⋯⋯。金額でいうと銀貨162枚売り上げました」
「「「「「は?」」」」」
マイルスさんが今日の販売結果を報告した。皆、その場で固まる。
「は、はーい⋯⋯」
「はい! シエラ君!」
「え、えっと⋯⋯昨日の話では全部で200袋分用意してて、それで何とか1ヶ月で完売できるよう頑張ろうって話だったと思うんだけど、それが初日だけで90袋売れたって⋯⋯それってかなり売れたんじゃ⋯⋯」
「はい、かなり売れました! 爆売れ必至です!」
「はいはいはい!」
「はい! 元気印のセーラ君!」
「今日90袋も売れたんなら、明後日でもう完売じゃね?」
「ノー! 世の中そんな甘くありません! 寝言は寝て言えです!」
「はいはいはーい!」
「はい! 妹アイラ君!」
「お腹空いたー!」
「余り物のポテト食ってなさい!」
などなど、皆が初日の売り上げに最初はおっかなびっくりだったが、しばらく経って冷静になってくると「これってすごくない?!」「私たちが作った商品が売れたんだ!」とポテトフライが売れたことを実感するとあちこちで嬉しい悲鳴が上がった。
それにしても初日は予想以上の売り上げで大成功だった。しかし今日だけで81袋も売り上げたということであれば、明日はだいぶお客さんは減るだろうと予想する。
理由としては、今日購入に来た人たちは孤児院に近い南門の平民街の人たちだと思われるからだ。そして、あれだけの数であれば今日でほとんど行き渡っただろうと思われる。
明日以降はグッとお客さん減るだろうな〜。
あと、南門以外の街からはそんなすぐには購入には来ないと思う。南門の人たちの反響次第かな?
いずれにしても、俺的には明日から徐々に売り上げは落ちていくと思っている。
ただ、まー初日は大成功だったので、明日から売り上げは落ちていくなんてそんな野暮なことを言わなくてもいいだろう。
だって、残り119袋を1ヶ月で売り切れば御の字なんだから。うん。
次の日——俺は自分の見通しの甘さを痛感することとなる。




