031「ポテトフライ販売プロジェクト始動(2)」
——『ポテトフライ試供品配布 2日目』
今日は『東門』から攻めるのでそこへと移動しようとしたら、
「あ、ちょっと待っておくれ!」
と声をかけられた。見ると昨日俺が試供品を渡したおばちゃんだった。
「あんた昨日の⋯⋯ほら『シキョウヒン』って食べ物を渡した孤児院の子だろ?」
「あ、はい。あと、あれは『シキョウヒン』ではなく『ポテトフライ』って食べ物です」
「そうそう『ポテトフライ』! あれは孤児院で買えるのかい?」
「いえ、販売は来週月曜日からです」
「ええっ?! 今買えないのかい! 何だい、どうしても食べたくて銀貨2枚用意したってのに⋯⋯」
「すみません⋯⋯」
「別にあんたが謝ることないさ。でもそれならお隣さんにも言っとかないとだねぇ」
「お隣さん?」
「そうだよ。昨日あんたらが配ったポテトフライがすごく美味しいってうちの近所ではすごい評判になってるんだよ」
「えっ?! そ、そうなんですか!」
「だから私は皆よりも早く買おうと思ってあんたらがここに来るのを待っていたんだ」
「そ、そうだったんですね。すみません⋯⋯」
「いいんだよ。それじゃ皆には私からも伝えとくわ。来週ね?」
「はい。来週の月曜日からです」
「わかったわ。来週、必ず買いに行くからね。いっぱい作っといておくれよ。あれだけ美味しいんだ、ウチらの近所以外でも絶対に評判になるからさ!」
「は、はい!」
そういって、おばちゃんが手を振って帰って行った。
「も、もう近所で評判になってるって⋯⋯マジ?」
い、いやいや、浮かれるな俺! 反響はまだ一人だけだしそれで判断するのは早計⋯⋯、
「あ、昨日の孤児院の! 探したぞ!」
「えっ?!」
次はおっさんに声をかけられた。内容はさっきのおばちゃんと一緒だった。
「何だよ、じゃあ知り合いに言っとくわ! 来週絶対に孤児院に買いに行くからな!」
そういって、おっさんはちょっと残念そうにしながら帰っていった。
「これは⋯⋯間違いない(ごくり)」
夕暮れ前——東門で試供品を配り終えた皆が帰ってきた。
「はい、注目ぅ〜!」
俺はキラキラ輝く金色の髪を金◯先生ばりに右手でかき上げながら皆に声を掛ける。
「え〜、今日朝のことですが、東門に行く前に昨日試供品を配った人から声をかけられました。『ポテトフライはいつから販売するんだ』という内容でした」
「あ、それ私も聞かれたわ!」
「俺も俺も!」
と、ヴィラとラッセルも俺と同じように声を掛けられたとのこと。⋯⋯やはり俺以外にもいたか。
「私以外にも声をかけられた人がいるということは、まだ2日目ですがすでに試供品の反響が出始めているということですね」
「「「「「おおっ!」」」」」
「ですので、明日の『北門』も気合いを入れて試供品配り頑張りましょう!」
「「「「「はーいっ!!!!」」」」」
「えいえい、むんっ!」
「「「「「えいえい、むんっ????」」」」」
俺は、頑張り屋のマチ◯ネタン◯イザちゃんを見習ってより一層の気合いを入れた。皆がキョトンとしながらも『マチたん掛け声』に付き合ってくれた。ありがとう!
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——『ポテトフライ試供品配布 3日目』
それは、試供品配布で北門に向かおうと孤児院から出た時だった。
「あ、出てきたー!」
「⋯⋯え?」
外に出ると、数十人の人だかりができていた。
「う、うわぁぁめっちゃ人いるぅぅ〜!!」
「なんだなんだぁっ?!」
俺も含め他の子らも目の前の人だかりにただただ戸惑っていた。すると、
「昨日配ってたポテトフライを買いに来た! 孤児院で売ってるんだろ?」
「え? あ、いやポテトフライの販売は来週月曜日からになります⋯⋯」
「ええええっ?! 来週ぅ〜!」
「は、はい。試供品を渡すときに説明していたと思うんですけど⋯⋯」
「あ〜そういえば言ってたっけか? 覚えてねえわ」
ええぇぇ⋯⋯。
いや、でもこうして孤児院に人だかりができるってことは、ほとんどの人がこのおっさんみたく来週から販売するってこと聞き忘れてんじゃねーか?
「ええ〜、ポテトフライってまだ買えないんですかぁ〜?」
「ポテトフライ買いたいんですけどぉー!」
「ポテトフライちょーだーい!」
「おーいポテトフライ、売ってくれー!」
声を聞く限りどうやらそのようだ。
いや、めっちゃ反響あるのは嬉しいけどさぁ〜⋯⋯お前らちゃんと話聞けやぁぁ!!!!
とはいえ⋯⋯とはいえである。
これは想定以上の反響だ。いやだってまだ試供品配布2日目よ? まだ南門と東門しか配ってないでこれよ?
正直「想定外の反響で草ぁ!」である。
これだけの反応がすでにあるのであれば販売を前倒ししていいかも⋯⋯。いやむしろそうしないと明日以降もっと混乱が広がって余計に対応が難しくなる可能性は高いだろう。であれば、
「わかりました。本来ならば来週月曜日からの販売でしたが、皆様のご要望にお応えしまして前倒しで今週土曜日からポテトフライの販売を開始したいと思います!」
「「「「「おおっ!」」」」」
俺はポテトフライの販売日の前倒しを決断しそれを発表。すると人だかりから歓声が上がった。
「それまでに皆様のお知り合いやご友人にもお伝えくださいませ。今週土曜日皆様を心よりお待ちしております!」
「やったぁぁ!」
「よっしゃぁぁ!」
「絶対に買いにいきますー!」
「お金用意しなきゃ!」
そうして、何とか大きな混乱もなく集まった人たちは去っていった。
人だかりが去った後、今度は子供達から「マジかよぉ!」「いや前倒しとか大丈夫ぅ〜!?」など不安の声が飛び交った。
「試供品配布2日目でお客さんが押しかけてくるという想定以上の反応だったので前倒しを判断しました。なぜならそう言わないと明日になればもっと人が押し寄せる可能性があり、そうなると私たちや世話人の大人たちを入れても対応は難しかったからです。なので、その混乱を避けるためには仕方ないと判断しました」
俺の話を聞いて皆が一応の納得をしてくれた。しかし、
「で、でも、今週土曜日からって残り2日しかないけど大丈夫なの?!」
ヴィラが皆を代弁するような不安事を聞いてきた。
「問題無いよ。だってポテトフライはみんなもわかるとおりじゃがいもを縦に細切りにして揚げて塩かけるだけだし。それに一度に大量に作れるでしょ? 客の入りを見ながら余分に揚げるペースでやっていけばいけると思うよ」
俺が具体的に対応策を話すと、皆も「たしかに練習通りにやれば問題ないか」と冷静になってくれた。
そう、ポテトフライは作るのが難しくない上、一度に大量に作れるので柔軟性が高いのだ。
「とりあえず前倒しになったから、明日の試供品配布は北門と西門を同時にやりましょう。それと今日みたいに話を聞いていないお客さんが孤児院に買いにくるかもしれないので私と何人かで孤児院で対応しましょう」
「「「「「わかったー!」」」」」
「あと、土曜日の本番に向けて『料理班』と『接客班』に分けて練習します」
「「「「「らじゃー!」」」」」
「みんな、急な変更になって大変だと思うけど、このままの勢いで行くわよー!」
「「「「「おおーっ!!!!」」」」」
やるしかないぜ!




