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TS転生者の生存戦略〜Transsexual Reincarnation's Survival Strategy〜  作者: mitsuzo
第一章「孤児院の少女編」

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020「孤児院長の考察(1)」



——孤児院長:クロフォード・????


 食堂でアナスタシアがこれから文字の読み書きやお金の計算などを皆に教えると伝えた後、私はさっさと部屋へと戻ってきた。


「ふぅ、アナスタシアのあの知識⋯⋯やはり彼女は⋯⋯」


 私は昨日から今日にかけての彼女のことを振り返る。


 最初は、彼女が『魔素核(マナコア)喪失症』から生き返ったこと。


 あれは確かに医者と私で彼女の心臓や脈を確認して死んでいるのを確認したので、それから生き返ったのは本当に驚いた。


 ただ、それだけなら私はここまでアナスタシアに関心を寄せなかったが問題はその後だ。


 彼女は病気から回復したものの『魔素核(マナコア)』の機能が完全に停止したらしく、そのため魔力が作れない体となってしまった。魔道具が溢れるこの国では普段の生活にもかなり支障が出るだろう。


 私はそう言って彼女に同情したが、しかし彼女はそんな私を見て「別に問題ない」「命が助かっただけ儲けもんですから」などと平然と、さも当たり前のように言ってのけた。9歳の女の子がだ。


 私はそんなアナスタシアの達観したような言葉や態度を見て思った⋯⋯⋯⋯もしかすると彼女は『預言の刻印板』に記されている『預言の聖女』ではないのかと。



********************



 それから私は親友であり、この孤児院の世話人頭をしているマイルスにその日のうちに彼女を監視するよう告げると、早速次の日マイルスから報告が入った。


 報告ではアナスタシアが薬草採取で森に行くということで孤児院から街に出たときにある言葉を呟いたというものだった。


「イセカイ⋯⋯?」


 それは初めて聞く言葉だった。


 気になった私は、すぐにマイルスを追い出して部屋にある『預言の刻印板』に関する資料を読み漁った。しかし、そこに『イセカイ』という言葉についての記述は見つからなかった。


 私はどこかに『イセカイ』という言葉についてのヒントがないものかと部屋中の資料を読み漁っていた⋯⋯その時だった。


 コンコン⋯⋯と部屋をノックする音。「誰だ」と確認すると「セーラです!」「アイラです!」といつもの元気で能天気な双子の声がドア越しから聞こえた。


 私は「何の用か」と聞くと二人から「アナスタシアがおかしなことを言っているので畑まで来て欲しい」という返事が返ってきた。私は部屋から出ると二人に「すぐに行こう」と言って早足で畑へと向かった。


 畑に着くとアナスタシアや他の子供達が何やら言い合いをしているのが見えた。あとマイルスも見える。するとマイルスが目線で合図を送ってきたが私は「まかせろ」と目線で返事をし、ヴィラから直接話を聞いた。すると「アナスタシアが習ってもいないお金の計算ができる」と訴えてきた。


 それを聞いた私は一瞬固まった。なぜならヴィラが訴えた「アナスタシアが習ってもいないお金の計算ができる」というのは『預言の刻印板』に書かれている『こことは異とする世界から現れ、その叡智と神の御力をもって』という一節の『叡智』に当たるのではないかと思ったからだ。


 とはいえ、ここで話すようなことでもない上、アナスタシアにあまりこちらが探っているのを気づかれるのもマズイ気がした私は、一旦アナスタシアの主張する「病気が治ったらできるようになった」という話を肯定した上で孤児院長室に来るよう指示した。


 そして、部屋に来た彼女が告げる内容に私はさらなる驚愕と興奮を覚えることとなる。



********************



 部屋に入り、彼女からもう一度話を聞いた。すると、彼女はヴィラに言ったのと同じように「病気が治ったら計算ができるようになった。でも自分でもなぜだかわからない」などと言ってきた。


 彼女の態度は見るからに怪しかったが、一旦ここは「魔素核(マナコア)喪失症は未知の部分が多い」といって半ば受け入れるスタンスを見せた。


 というのも、彼女の口からどうしても聞きたいことがあったからだ。


 その次に彼女に「じゃがいもがなぜ食用だとわかったのか」と聞くとそこで彼女がかなり動揺する。さらには彼女が私の質問をごまかそうとした態度が「貴族の令嬢がごまかす仕草に似ている」と指摘すると、さらに彼女の動揺が広がったのがわかった。


 それにしても彼女はあまりに隙が多すぎる。問い詰めてる私が言うのもなんだが本当に非道い。


 その後、アナスタシアは私の指摘にかなり混乱しているのか言葉を止めて考え事をしているようだった。


 正直、ここでさらに問い詰めるのもよかったが、しかし彼女に警戒され過ぎるのもマズイと思った私は「もしかしたらこういう知識も病気が治ったおかげで得た知識かもしれん」と助け舟を出す。


 すると、彼女は「私が勝手に勘違いをした」と思ったのか安堵の表情を浮かべる。私は彼女が安堵するこのタイミングで一番聞きたい話を切り出した。


——————————————————

「いや、なかなかに興味深い。まるで神々が遺したといわれる『刻印板』のような話だ」

——————————————————


 すると、私の言葉に反応して彼女が、


——————————————————

「刻印板⋯⋯ですか?」

——————————————————


 と興味を持ったような返事をしたので、


——————————————————

「ああ。この国が建国した時から存在する『刻印板』⋯⋯いわゆる『石板』のようなものなのだが、そこには『こことは異とする世界から現れ、その叡智と神の御力をもって』という記述があるんだ」

——————————————————


 と説明。さらにワザと「こんなおとぎ話を信じるような話をして恥ずかしい』という態度を示すなどしてちょっとした《《トラップ》》を仕掛けてみた。「さすがにやり過ぎか?」と思ったら、


——————————————————

「え? それって『こことは違う《《異世界》》から現れ』》ってことですか? え? 孤児院長ってそんなおとぎ話を本気で信じているんですかぁ?」

——————————————————


 などと、アナスタシアは私のトラップにちゃんと引っかかって煽ってきた。


 まったくこいつはどうしてこうも隙だらけなんだ? こんなトラップに簡単に引っかかるとは⋯⋯。


 いやそんなことはどうでもいいか⋯⋯。重要なのは、彼女の口からマイルスの報告にあった『イセカイ』を『預言の刻印板』の一節にある『異とする世界』と同じであるかのような言い換えをした。


 しかも《《さも当たり前のように》》⋯⋯。


 私はこの事を受け、改めて彼女が『預言の刻印板』に記されている『預言の聖女』ではないかとさらに確信を強めた。


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