018「子ども先生アナスタシア爆誕(1)」
「失念⋯⋯ですか?」
「そうだ。君はこれを孤児院で販売すると言ったが《《誰が》》それをやるのだ?」
「それは私とか子供達が⋯⋯⋯⋯あ!」
「気づいたようだな。孤児院にいる子でお金の計算ができる者などいないぞ?」
そうだった⋯⋯。孤児院の子供達はお金の計算はできないんだった。
「それだけではない。文字の読み書きもまともにできない子ばかりだ。そんな子供達にどうやって接客させるというのだ?」
「そ、それでは、私とお金の計算ができる世話人さんで接客をやるというのは⋯⋯」
「却下だ。君は言っただろ? これは子供達の将来につながる仕事だと。それなのに我々大人が介入するのは違うのではないか?」
「うっ!」
孤児院長の言う通りだ。子供達の将来を考えた事業であればできるだけ大人に頼らず子供達だけで完結できるようにしなければならない。
「君が今すぐにやるべきは子供達への教育だ。⋯⋯違うか?」
「⋯⋯そのとおりです」
「まったく習ったことのない子供達へ文字の読み書きやお金の計算、さらには接客も教える必要があるだろう。これらを子供達が習得するにはかなりの時間がかかる。私の見立てでは1年は必要だと思う。であれば、君のこのポテトフライの事業はすぐには無理だ」
そういって孤児院長が俺のポテトフライ事業は一旦保留ということで話まとめようとしてきた。しかし、
「孤児院長! ではもしも⋯⋯もしも私が子供達に1ヶ月以内に文字の読み書きや計算を習得させることができたら事業を認めてくれますか!」
「何だと?」
俺は孤児院長の判断に抗う。
「そんなことができるのか?」
「やります! やってみせます!」
俺はポテトフライの販売をすぐに始めたかったので、できるかどうかは置いといて必死に孤児院長に懇願した。無謀とも言えるし、そもそもこんな子供の言葉に孤児院長が耳を傾けるようなことなどな⋯⋯、
「いいだろう。もし本当にできるのなら1ヶ月後にポテトフライの販売を許可しよう」
「⋯⋯へ?」
俺は孤児院長がまさか了承するとは思わなかったので一瞬呆けた反応をする。
「なんだ? 返事がないようだが? やるのか? やらないのか?」
「や、やります、やります! あ、あああ、ありがとうございますぅぅ!!!!」
「よろしい」
こうして、子供達が文字の読み書きやお金の計算が身に付くことを条件に、1ヶ月後のポテトフライの販売を許可してもらった。
********************
「今日から皆に文字の読み書きとお金の計算を勉強してもらう。教えるのはアナスタシアだ。皆、励むように」
「「「「「は?」」」」」
「子ども先生アナスタシアです。アナスタシア先生とお呼びください。では以後お見知りおきを⋯⋯」
「「「「「え? えええええええっ!!!!!」」」」」
食堂に集められた子供達や世話人らが孤児院長と俺の挨拶に軽い絶叫を上げた。さもありなん。
「静粛に」
孤児院長が片手を上げて強制的に場を静粛させる。
「これは昨日食べたポテトフライを売るために必要な勉強だ。皆、しっかりと励みなさい。世話人はアナスタシアのサポートをするように。以上。ではアナスタシア、あとは任せたぞ」
「かしこまりました。孤児院長」
「うむ。では頼んだ」
そういって、孤児院長がスタスタスタと早足で孤児院長室に戻っていった。
「では早速授業を始めたいと⋯⋯」
「「「「「ちょ、ちょっと待ったぁぁぁ!!!!」」」」」
ここで突然リッツや他の子達から一斉に『ちょっと待ったコール』が上がった。ね◯とんかな?
「どうしました、皆さん? 何か質問でも?」
「質問しかねーよ!」
「何が一体どうなってんのよ!」
やいの、やいの。
子供達が騒ぎ出したので世話人が止めるかと思ったが、世話人も話を聞きたいのか特に子供達の質問責めを止めるようなことはしなかった。⋯⋯ので、
「わかりました。では、ご説明致しましょう!」
「「「「「あ・た・り・ま・え・だ・!」」」」」
ということで、俺は皆に孤児院長と話をしたポテトフライの商売をする上で『子供達の文字の読み書きとお金の計算を身につけること』という条件の話をした。
「え? 俺たちが文字の読み書きやお金の計算が身につくのが条件?」
「はい」
「いや無理だろぉ?! 文字は多少読めるのもあるけどお金の計算なんてやったことねーよ!」
「そうよ! ていうかアナスタシアはできんの!?」
「できるまる」
「嘘! なんでっ!?」
「なんか病気が治ったらできるようになったでござる」
「「「「「はぁぁぁぁ????」」」」」
まだ俺がお金の計算ができるのを知らない子供達と世話人が驚きの声を上げるが、リッツやシエラなど既知の者たちが横で「なんかよくわからんがアナスタシアの言っていることはマジだぞ」と説明してくれた。ありがとう。
「で、でもさ〜、そんな文字の読み書きや計算を1ヶ月で身につけるなんて無理だよね?」
「う、うん。わたし文字の読み書きなんてほとんどできないもん⋯⋯」
「お金の計算なんて絶対に無理ぃぃ」
そこかしこから子供達の『無理ゲー悲鳴』が上がる。
たしかに俺もできるかどうかわからないが、しかしこの世界で生き抜くにはまず自立する術を身につけることが一番だと思うし、この底辺の生活を一刻も早く抜け出すにはそれが最短だと思っている。
よって、子供達にはぜひとも頑張ってもらいたいのでモチベーションを上げてもらうよう『メリット』の話を始めた。




