017「アナスタシアのプレゼンテーション」
——次の日
コンコンコン⋯⋯。
「アナスタシアです」
俺は孤児院長に言われた通りまとめた資料を持って孤児院長室へやって来た。中から「入りなさい」と許可をもらったので中に入ると、
「おはよう、アナ」
「マイルスさん!」
と、孤児院長だけでなくマイルスさんもいた。
そんなソファに座っている二人から「アナスタシアも座りなさい」と勧められたのでそのまま俺もソファに座る。
「これからの話は現場で指揮するマイルスにも共有する必要があるので私が呼び出したのだ」
「なるほど。たしかに必要ですね」
「よろしく。アナ」
ということで、早速話が始まった。
「これが一応、今思い浮かんだものをまとめた資料です」
そういって俺はテーブルに資料を出したが、具体的な話をする前に先に自分の想いを孤児院長に伝える。
「孤児院長⋯⋯。私は自分も含めて孤児院の子供達の将来のために、このポテトフライの商売を考えています」
「子供達の⋯⋯将来?」
「はい。なので、この商売がうまくいけば子供達にそれ相当のお給料を与えて欲しいです。それがあれば欲しい物が買えるようになったり、貯金ができるようになったりと、将来に対しての希望が持てると思うんです!」
「⋯⋯続けなさい」
「はい。安定した収入が得られれば子供達は孤児院からの独立を現実的に考えられるだろうし、逆にその利益で孤児院の環境が良くなれば自らそのまま孤児院に残る子も出てくるかと思います。いずれにしてもお給料と孤児院の環境改善をすれば、子供達の将来の選択肢は広がると私は思っています!」
「なるほど」
「なので、孤児院長! ポテトフライの売り上げから子供達へそれ相当のお給料を出すことを約束して欲しいです!」
「ア、アナスタシア!? 君は⋯⋯」
マイルスさんが俺の言葉を聞いて何か言いかけようとしたが引っ込めた。
「ふむ、それが君の望みか」
「はい」
俺が想いを伝えると、孤児院長が顎に手を当ていつものように少し考え込んだが、
「いいだろう。商品が売れて大きな利益となるならそれ相当の給料を約束しよう」
「あ、ありがとうございます!」
「こ、孤児院長っ!?」
と、孤児院長はすぐに俺の提案を了承した。これを見たマイルスさんは思わず孤児院長に声をかけた。まー俺だって孤児院長がすぐに了承するとは思わなかったもん。マイルスさんも同じ心境だったんだろう。
「だが、それは簡単な話じゃないぞ?」
「わかってます! なのでここからはポテトフライの商品化について具体的な話をしていきます」
そういって、俺は気合いを入れて本編である『ポテトフライのプレゼン』に臨んだ。
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俺は二人に資料を見てもらいながら具体的な説明をする。
「じゃがいもの収穫量が1回で20キロ⋯⋯その半分の10キロ分で1袋100グラムで200袋製造⋯⋯1袋銀貨2枚で販売⋯⋯。ア、アナ⋯⋯君はこれを1人で1日で作成したのかい?」
「え? はい」
「⋯⋯そ、そうですか」
マイルスさんがなんか青い顔をしながらそんなことを聞いてきた。体調でも悪いのだろうか? であれば、マイルスさんの体調のためにも急いで話し合いを終わらさねば。
「あと、ポテトフライの入れ物ですがこういう感じの紙袋を使いたいです」
俺は資料に紙袋の描いたイメージ絵(マッ◯のポテトの入れ物をイメージ)を見せながら説明すると孤児院長が反応した。
「ふむ。こういう紙袋なら道具屋でも売っているので、まず200袋を道具屋で買って取り寄せるとしよう。もし、君が言うようにポテトフライが売れるのであればその紙袋を製造している工場と改めて専属取引すれば原価も抑えられるだろう」
「ありがとうございます」
俺と孤児院長が淡々と話を進めている中、孤児院長の横にいるマイルスさんはさっきからずっと無言のまま話を聞いているだけだった。⋯⋯青い顔をしたまま。
「あ、あのマイルスさん」
「! な、何でしょう⋯⋯?」
「さっきから顔が真っ青で元気が無さそうなのですが⋯⋯もしや体調が悪いのですか?」
「あ、いえ、そんなことは⋯⋯」
と、マイルスさんが返事をしようとした時、
「気にするな。マイルスは問題ない」
なぜか孤児院長が答えた。
「なんでそこで孤児院長が返事するんですか?! 私はマイルスさんに聞いているんですよ!」
「ア、アナ、大丈夫ですよ。孤児院長の仰るとおり本当に問題ないですから」
「本当ですか? 孤児院長に脅されてませんか?」
「そんなことするわけなかろうが!」
孤児院長に怒られた。
「はぁ⋯⋯。それよりも君はこれをいつ頃から始めたいと考えているのだ?」
「え? そうですねぇ。紙袋さえ届けばすぐに用意できるので1週間後といったところでしょうか?」
「⋯⋯どこで販売するのかね?」
「孤児院です。あ、でも孤児院に買いに来てくれる人が出てくるまでは『試供品』を配って街で宣伝する予定です」
「シキョウヒン? なんだ、それは?」
「あ、街に出てポテトフライを無料でお渡しするんです。で、渡す時に『孤児院で販売しています』と伝えて宣伝も兼ねます」
「へー、それはいいですね」
「でしょう!」
ここでさっきまで元気がなかったマイルスさんが俺の話に共感してくれた。どうやら体調は本当に悪くはないようだ。そんなマイルスさんの反応を見てホクホク顔でいると、
「⋯⋯なるほど。どうやら君は一つ重大な《《失念》》をしているようだな」
「え?」
突如、孤児院長が冷ややかな声で反論してきた。




