013「試食会」
「「「「「は? じゃがいも料理の試食会ぃぃ!!!!」」」」」
孤児院長からそのまま調理場に向かおうと食堂を通り抜けようとした時、ちょうど畑にいたメンバーがいてその子達から声をかけられたので軽く事情を説明するとハモるレベルで驚かれた。
「おいアナ! 孤児院長室で何があったんだよ?!」
「え? 何がって⋯⋯孤児院長に『何で計算できるの?』って聞かれたから『病気が治ったらできるようになったよ』って畑で皆に言ったのと同じように説明したら信じてもらえて、それから孤児院長が『他にどのような知識がある?』って聞かれたから、じゃがいも料理の話をして何なら『商品化したい』まで言ったら『試食して美味しかったらいいよ』ってことになって今に至ります。まる」
「「「「「全っ然、意味がわからない!」」」」」
え〜? 何で〜? ちゃんと説明したのに〜。
「え? ちょっと待って? てことは今日のお昼は孤児院長も一緒に食べるってこと?」
「うん、そうだよ」
「マ、マジ⋯⋯!? 私、孤児院長と一緒にご飯食べるのすっごい久しぶりなんだけど」
「私もー」
「俺も」
「僕も」
そういやアナスタシアの記憶にも孤児院長と一緒にお昼を食べた経験はほとんどなかったな。もしかしたら貴族だから孤児院を運営はしていてもあまり好きではないのだろうか? でも、そんなに孤児院が嫌そうには見えないけどな〜。
「ていうか、大丈夫なのアナスタシアっ?! じゃがいもって毒があって食べられないんじゃ⋯⋯」
と、シエラが青い顔をしてそんなことを言ってくる。
「ううん、そんなことないよ。たしかに毒はあるけどそれはじゃがいもの『芽』と、あと『緑に変色したもの』だけだから。それ以外特に毒とか無いよ」
「え? そうなの!」
「うん。しかも、じゃいがもってめっちゃ美味しいから!」
「「「「「え? 美味しいのっ!?」」」」」
お? 食いついてきた!(引いてる引いてる)
「うん。で、これからじゃがいも料理を作って孤児院長に試食してもらうことになったんだけど、みんなの分も作るね」
「え? いいの!?」
「もちろん。あ、でも誰かじゃがいもを洗うのと切るのを手伝って欲しいな」
「それだったら私手伝うわ!」
「わ、私も、ちょっと興味あるから手伝ってあげるわ」
ここでシエラとなんとヴィラも手伝うと声をあげてくれた。
「あたいもー!」
「あたいもー!」
「料理が絶望的なあんたたちはダメ!」
さらに、セーラとアイラも手伝うと手を挙げたがヴィラがすぐに却下した。よほど料理が苦手らしい。ということで、俺とシエラとヴィラの3人で料理を作ることとなった。
「ねえ? そのじゃがいも料理って名前あるの?」
「名前は⋯⋯⋯⋯『ポテトフライ』よ!」
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「それじゃあ、早速なんだけどこの大きい鍋に油を半分くらいまで入れてくれる?」
「えっ?! そんなに!」
「あと、じゃがいもは表面の皮を剥いて、それから芽を取り出すんだけど⋯⋯そうそうそんな感じ」
「へー、皮剥いたらこんなきれいな色してたんだ〜」
「あ、これが芽ね。これが毒になるからしっかり取ってね」
「「は〜い」」
そうして、シエラが大鍋に油を入れると、
「ファイア」
と言って、薪に火をつけた。
「すごい! 今のって魔法?!」
「え? うん、そりゃまぁ⋯⋯。あれ? アナスタシアって魔法使えないの?」
あ、そういえば俺が魔法使えなくなったのは秘密なんだっけ?
「あ、使えないっていうか⋯⋯魔法苦手なんだよね」
「そうなの? でも生活魔法くらい使えるでしょ?」
「えっと⋯⋯出たり出なかったりとか?」
「そっかー。魔法が苦手な子って生活魔法も難しいって聞くけど本当にそうなんだねぇ」
「う、うん」
「大丈夫だよ、アナスタシア。これくらいの魔法、私が代わりにやったげるよ!」
「ありがとう、シエラ!」
シエラ、なんてええ子やぁぁ!!!!
ちなみに「魔法が苦手な子は魔法をよく失敗する」という知識はアナスタシアの記憶で知っていたので、そのネタを利用させてもらった。
こういう火を出す『ファイア』とか光を出す『ライト』というのは『生活魔法』と呼ばれていて、それとは別に攻撃魔法や防御魔法、治癒魔法といったものを『魔法』と呼んでおり、『生活魔法』とは明確な区別がされている。
というのも『魔法』を使役するにはかなりの魔力量が必要で、そしてそんな豊富な魔力量を有するのがお貴族様であること。そして魔力量の少ない平民は『生活魔法』しか使えないこと。以上のことから、
「豊富な魔力量を必要とする高貴な『魔法』と、平民程度の魔力量で使役できる『生活魔法』を一緒にするな!」
ということで、明確な区別⋯⋯というより『偏見』とか『差別』みたいなものが存在するのだ。怖っ!
そう考えると『魔力作れない体』な俺ってイコール『魔法を使えない』ってことだから、平民の中でもかなりハンデ背負っているようなもんなんだな⋯⋯。
フン、いいもん。現代知識チートでカバーするもん!
鍋の準備が終わると、俺とシエラとヴィラ3人でじゃがいもの皮剥きをする。それが終わると芽を取っていき、その後はひたすら細長くじゃがいもを切っていった。
イメージはマ◯ドナルドのマッ◯フライポテトだ。
すべてのじゃがいもを細長く切った後、一気に鍋の中に放り込んでいく。
ジュワァァァ⋯⋯!
「うわぁああぁあぁぁ、なんかすごい美味しそうな匂いぃぃ〜」
「ほ、本当だ。すごく良い匂い⋯⋯」
二人とも初めてということもあって、じゃがいもが揚がる匂いを嗅ぎながらよだれが垂れそうないきおいでうっとりしている。いやすでに垂れてた!
そうして、じゃがいもがほんのりきつね色になったところで鍋から取り出し、大皿にザッと豪快に盛り付けた。
「あとは最後にお塩をパラパラ⋯⋯と」
孤児院長が言ってたように調理室に塩が豊富にあったので満遍なく使わせてもらった。そして⋯⋯、
「ポテトフライの完成でーす!」
俺は初めての異世界料理を完成させると、嬉しくていつもよりテンション高めに叫んでしまった。
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「こ、これが、じゃがいも⋯⋯料理⋯⋯」
食堂には、子供達と世話人、世話人頭、そして普段滅多に食事をすることがない孤児院長もいた。そんないつもはいない孤児院長がいることで食堂は謎の緊張感に包まれていた。
「こ、これが、あの畑で植えていたじゃがいも⋯⋯なの?」
「えっ!? これって家畜の餌じゃないの?」
「毒があるから人間は食べれないって聞いたけど⋯⋯大丈夫なの?!」
机にポテトフライが並ぶと皆が『家畜の餌』や『毒があるんじゃないの』などといった言葉が飛び出す。しかし、
「で、でも、何か⋯⋯良い匂いじゃね?」
「う、うん。美味しそう⋯⋯(ごくり)」
揚げたてのポテトフライの香りに空腹感を刺激された子たちがチラホラいた。そんなザワザワした頃合いで孤児院長が手を挙げると食堂がシンと静まり返る。
「これはアナスタシアが作ったじゃがいもを使った料理だ。本来であればこれは毒性のある植物なので食べられないはずなのだが、アナスタシアがいうにはじゃがいもの芽と緑色に変色したものじゃなければ毒は無いし食べられるそうだ」
「えええええ!」
「そ、そうなのっ?!」
畑にいなかった子供達から驚きの声が上がる。
「またアナスタシア曰く、じゃがいも料理はとても美味しいらしくそれを彼女は商品として売りたいと言ってきた。よって今こうしてお昼時間を使って試食とあいなった」
孤児院長の言葉に皆が「え、商品?」「売りたい?」「どゆこと?」とザワザワし出すが、孤児院長は特に気にすることなく話を進めていく。
「では早速いただくとしよう。今は誰も口にせぬように!」
孤児院長が子供達にピシャリと厳しく告げると料理に手を触れようとした⋯⋯その時、
「アナスタシア⋯⋯ところでこの料理の名前は何というんだ?」
「ポテトフライです」




