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神様ミスに気づいたが変更の仕方わからかった件について

転生したら、人間のままでゴリラ扱いされていました。


しかも、動物園で。


これは、異世界ハーレム転生を夢見た青年・植松健人(24)が、

なぜか人間の姿のまま、ゴリラ舎で飼育されているという理不尽すぎる人生の続きを描いた物語です。


言葉は通じない。

服も着られない。

檻の中では、ウホウホ唸るしかない――。


なのに心だけは、ちゃんと人間。

恋も、恥じらいも、プライドもある。


目の前にいるのは、真面目でちょっと天然な飼育員の佐々木あかり。

彼女の笑顔、優しさ、時おり見せる無防備さに、ゴリラのフリをしながらも、どんどん惹かれていく。


だが健人にとっての最大の壁は、

恋でも、檻でもなく――「どう見ても人間なのに誰にも気づかれない」という世界のバグそのものだった。


なぜ俺は、人間に見えているのに“ゴリラ”なのか?

なぜ佐々木は、俺にバナナを与えながら笑っているのか?

そしてなぜ、そんな彼女がますます愛おしく思えてしまうのか――?


これは、人間の姿でゴリラ扱いされた男の、

恋と尊厳とトイレとドラミングの物語。


それでは、はじまりはじまり。

ウホウホしいけど、きっとまっすぐなラブストーリー。

バナナしか出てこない朝はもう慣れた。

今日も俺は檻の中で筋トレをしつつ、佐々木あかりの姿を待っている。


「……来た。」


軽やかな足音。作業着。ポニーテール。いつも通りの彼女の姿。

なのに──今日は、なんだか落ち着かない。


(……昨日の園田のやつ。勝手に俺の前で惚れかけてんじゃねぇよ)


心の中でバナナを握り潰す俺。

が、そんな俺の前に、予想外の人物が突如現れた。


檻の中に──異世界風の木製のドアが「バフッ」と現れる。


「!?」


俺は身構える。

ドアがぎぃぃ……と開くと、中から現れたのは──銀髪ローブの優男。背中には貧弱な羽が2枚。


「よいしょ……よし! 到着~!!」


(……神様、来た)


「ケントくん!? ケントくーん!! 転生アフターケアのお時間です!」


「ウホッ!!」(訳:おせぇよ!!!)


「おっ、やっぱ怒ってる感じあるよね~! いや~ミスっちゃったかも! ごめんごめん☆」


(ミスった、じゃねえ)


神様はタブレット的なものをスワイプし始めた。


「ほら、ケントくんの願い、“強くなってモテたい”ってやつ。ちゃんと届いてたんだよ? うんうん」


(それでなぜ動物園……)


「ただ場所の設定がね? 手動でやったらズレちゃったんだよね~。転生先、たぶん選択間違えたっぽい! ワハハッ!」


(“っぽい”じゃねえ!)


「でもすごいよ? バズってる! “イケメンすぎるゴリラ”って! 筋肉と知性を感じるとか、めっちゃ評価高い!」


(誰の人生だコレ……)


「ちなみに~。飼育員の佐々木さんとの距離、最近どう? いい感じじゃない?」


「ウホッホオ!!(訳:違うし!!!)」


「えー、あの時の石拾いの“瞬間”とか、マジで恋愛フラグ立ってたでしょ? 同時に手を伸ばして……指先ちょっと触れて……あれ青春だったよ?」


「ウホォォ!!(訳:見てたのかよ!!)」


「ねえねえ、もしかして佐々木さんのこと、ちょっと好きなの? 恋してるのケントくん??」


「ウホッ! ホホホホオオオ!!!(訳:お前の口を石で塞ぐぞ!!!)」


神様はやたらテンション高く笑っていたが、急に手元の画面を見て「あれ?」と呟く。


「……あれ、修正コマンドどこだ?」


(え?)


「やっば。やり方わかんない。あっれぇぇぇ~~?」


(おい)


「3か月くらいしたら魔力回復するから、そのときにはたぶん戻せると思う! うん、多分!!」


「ウホォオオオオオ!!!!(訳:今じゃないと意味ないだろうが!!!)」


「ま、でもこの世界で恋もできそうだし、成長してるし、いい方向じゃん?」


「ウホホホッ!!!(訳:黙れ黙れ黙れ!!)」


「うんうん、じゃあまた来るね! 佐々木さんとの進展、報告してくれてもいいからね! バイバーイ!」


──バタン。


扉が消え、檻の中に静寂が戻る。


俺は突っ伏して呟いた。


(なんなんだよ……)


その直後──


「ケントくん? さっきから、すごい顔してたけど……何かあった?」


佐々木あかりが作業着姿でやってきた。

俺は反射的に目を逸らす。


(恋の進展とか言うな……恥ずかしくて目合わせられねぇ……)


今日のバナナは、なんだかいつもより甘かった。

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