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健康診断ウホ騒動!

転生したら、人間のままでゴリラ扱いされていました。


しかも、動物園で。


これは、異世界ハーレム転生を夢見た青年・植松健人(24)が、

なぜか人間の姿のまま、ゴリラ舎で飼育されているという理不尽すぎる人生の続きを描いた物語です。


言葉は通じない。

服も着られない。

檻の中では、ウホウホ唸るしかない――。


なのに心だけは、ちゃんと人間。

恋も、恥じらいも、プライドもある。


目の前にいるのは、真面目でちょっと天然な飼育員の佐々木あかり。

彼女の笑顔、優しさ、時おり見せる無防備さに、ゴリラのフリをしながらも、どんどん惹かれていく。


だが健人にとっての最大の壁は、

恋でも、檻でもなく――「どう見ても人間なのに誰にも気づかれない」という世界のバグそのものだった。


なぜ俺は、人間に見えているのに“ゴリラ”なのか?

なぜ佐々木は、俺にバナナを与えながら笑っているのか?

そしてなぜ、そんな彼女がますます愛おしく思えてしまうのか――?


これは、人間の姿でゴリラ扱いされた男の、

恋と尊厳とトイレとドラミングの物語。


それでは、はじまりはじまり。

ウホウホしいけど、きっとまっすぐなラブストーリー。

動物園の朝。スピーカーからの放送が園内に響き渡る。


「本日は全個体、健康診断を実施します。特にゴリラ舎の個体、逃げても無駄です」


健人(ピンポイントゥゥ!!)


ゴリラ舎の奥で震える俺。いや、俺“ウホ松ケン人”は、いま生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされていた。


なぜなら、来たのだ――あの女医が。


「ケ〜ンちゃ〜ん♡ 今日も毛並みサイコーじゃな〜い?」


そう言って現れたのは、白衣の下にぴっちりしたニットを着込んだ、妙にテンション高い獣医・小島レイカ先生。


バストの主張が過ぎるし、ヒールで動物園を歩いてくる神経もヤバい。

手には、針の長すぎる注射器。

その全体像はもはや、“美しき拷問官”。


「じゃ〜、チクッと“愛のスパイス”注入しちゃうわよ〜♡」


健人(ウホォォォ!? なんでそんなホラーな言い方なんだウホ!!)


俺は即座に決断した。逃げる。これはもう逃げるしかない。


「ウホオオオオオオオオ!!!!」


叫びながら檻を突き破り、全力ダッシュ。

ゾウエリアを突っ切り、カバの池をジャンプし、ワニの柵をスルー。


「ケンちゃん脱走ォォォォ!!」


「またかアイツ!! 先月は採尿で逃げたぞ!!」


そんな中、あの女医は言った。


「もぉ〜、逃げ足速い♡ モテる男の証よね〜♡」


何言ってんだこの人。



──そして、俺が逃げ込んだのはチンパンジーエリアだった。


「ウキャキャキャ!!」

「ウホ!」(助けてくれ!)


なぜかチンパンジーたちがハイタッチで歓迎してくれる。


「パチーン!」

「ウホホッ!」(ノリ良ッ!!)


テンションが上がったチンパンジーたちは、なぜかラップを始め出す。

鉄柵をリズムよく叩くヤツ。ビートボックスするヤツ。

俺は自然とマイク(バナナ)を握っていた。


「Yo! ケン人! ゴリラ代表! 注射から逃げてこの場に登場!」


「ウキャァァ!!」(盛り上がる)


……え、なにこれ? HIPHOP動物園?



そこへ、颯爽と現れたのが我らが飼育員、佐々木あかり。


「……なにしてんの」


健人「ウホウホ!」(えっと…ノリで…)


佐々木はしばし沈黙したのち、帽子を後ろ向きにかぶりなおす。


「Yo! Yo! ケンちゃんビビって逃げてる場合じゃねぇ〜! 健康診断、ちゃんと受けろ〜!」


子どもたち「飼育員さんがラップしたーー!!」


健人「……ウホ」

※訳:なんで乗った。


佐々木は帽子を戻し、真顔で言う。


「……いや、私なにやってんの!? ケンちゃん! 檻に戻るよ!!!」



注射会場。

佐々木がそっと俺の手を握ってくれる。


「大丈夫。怖かったら、ぎゅってしてていいから」


健人(……尊……)


そこへ、またあの女医。


「ふふっ、ケ〜ンちゃ〜ん♡ ちゃんと戻ってきたのね〜♡ じゃ、いっくわよ〜♡ チクッといっとく〜?」


佐々木「……いやそのノリ、もはやセクハラじゃないですか?」


プスッ。


「ウホオオオオアアアアアアアア!!!!」


俺の魂の絶叫が、再び動物園に響いた。



その夜。


佐々木「……はい、よくがんばりました。バナナパフェ、特盛です」


健人「ウホォ……(天使……)」


パフェの上には、さりげなくハート型のチョコが添えられていた。


それを見て、俺はひとこと。


「ウホ♡」

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