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Sid.42 リハビリを兼ねての攻略

 新しくフォアグリップと銃床を取り付けた重機関銃。フォアグリップは八本のネジで固定されてる。銃床は木製でしっかり固定されている。

 そしてプローン即ち伏射用に、銃身に取り付ける二脚銃架が装備された。不要な時は外して銃床内に収納できる。

 肩にかけて持ち歩けるよう、三点支持スリングも装着可能になった。

 持ってみると重量が増したのが分かる。三キロ、いや四キロくらい増えたか。


「重い?」


 デシリアが聞いてきて、持ってみるか問うと「試しに」とか言って持ってみるけど構えるに至らず、すぐに手渡してきた。


「重すぎるよ」

「重量増えたんで」

「撃てるの?」

「問題無いと思います」


 デシリアは格闘戦も熟せる、とは言っても強さがそのまま腕力じゃないから、重いものは重い。

 ヴェイセルも持ってみるけど「反動まで考えると撃てないな」と言っていた。

 銃だけじゃなく二百五十発入りの弾倉までセットするとね。さらに重量が増すわけだし。

 それでもプローンならばヴェイセルにも扱える。むしろ俺より正確な射撃ができそうだ。


「あとで俺も試させてもらおう」

「ぜひ手本を見せてください」


 ここで腕組みして俺を見るヴェイセルが居る。

 なんか言いたそうな。


「もし、なんだが」

「はい」

「いや、無理されても困るが」

「なんですか?」


 同じ重機関銃をもうひとつ持つことができるか、と。


「ああ、無理して欲しくないから持てとは言わんけどな」

「いいですよ」

「まあ無理、え?」

「三脚を持たずに済むので、その分余裕があります」


 驚くヴェイセルだけど、そうなると嬉々として店主に「同じ仕様でひとつ」なんて言ってる。

 やっぱり強力な火力が欲しかったんだ。ヴェイセルなら無駄弾を撃つことなく、効率よくモンスターを倒せるだろうし。

 結局、また一週間後に重機関銃を受け取りに来ることに。


「イグナーツに負担掛けるんだ」

「余裕があるって言うからな」

「問題無いです」

「無理しなくていいんだよ」


 プラス二十キロ程度だし、俺自身は戦力として大して役に立てない。荷物持ちとしてなら役立てることで、ヴェイセルの火力が上がるし攻略もしやすいと思う。


「ねえイグナーツ」

「なんです?」

「総重量ってどのくらいになりそう?」

「えっと、八十キロ」


 たぶん大丈夫だと思う。過去最大で百十キロまで担いだことがあるし。

 重機関銃二丁、弾倉を十六個くらい、弾薬も多数。食料と飲料、応急処置セット。

 あ、そうか。今後深い階層に潜るとなると寝袋も。


「少し分散した方がよくない?」

「でも、それだと俺の居る意味が無いです」

「だって、負担が」

「いいんです。それが俺の仕事だから」


 心配するデシリアだけど現時点で、俺は戦力としては足を引っ張る。だったらヴェイセルの火力が上がることを期待するし、その方が攻略が楽になると思うから。

 射撃手の技能持ちのヴェイセルなら、俺より遥かに重機関銃を上手く扱えるでしょ。

 こうして改造した重機関銃を持ってホームに戻る。

 嬉しそうなヴェイセルだけど「俺のために荷物を増やすことになる。その分手当を出すから期待してくれ」だそうで。


 リハビリを兼ねた当日朝。

 まだヴェイセルの重機関銃は無いから、三脚を持たない分だけ軽くなった荷物を背負う。

 重機関銃は肩から提げておけば即応しやすい。


「なんて言うか」

「重いんだろ? それ」

「勇ましいね」


 モルテンも驚くしアルヴィンは見るからに重そうだと。ヘンリケは力強さを感じさせて頼り甲斐がありそう、なんて言ってるし。

 重機関銃を構えて撃てる、なんて人は存在しないのか。

 でも、そのうち改良されて軽機関銃も出てくるんだろう。これでサブマシンガンもあれば心強いんだけどな。

 いずれの話として期待して待っていよう。


 徒歩でアヴスラグに向かい二階層までは、ただの荷物持ちとして付いて行き、三階層から戦闘に参加するんだけど。


「こんな浅い階層じゃ重機関銃は意味が無いな」


 過剰。

 数発ぶっ放すだけでモンスターが爆ぜる。それでもプローンに慣れるために、しっかり伏せて正確に狙いを定め撃つ。

 ヴェイセルも試し撃ちをするけど、狙いが正確でバースト射撃の仕方まで上手い。

 三発ずつ放ち仕留めてるわけで。一連の動作にも無駄が無く、効率が良すぎて他の人の出番が無いくらい。


「これだとリハビリにすらならんな」

「じゃあ十六階層くらいまで行く?」

「そうだな。初っ端から無理はさせたくないが、さすがにこれだと」


 俺の体調を勘案し十六階層まで潜ることに。


「痛みが出たり体調が悪くなったら、すぐに言えよ」

「はい」

「腕の調子はどうだ?」

「問題無いです」


 痛みもない。動きにも問題はない。スタンディングでの射撃も負担はなかった。

 むしろ保持しやすくなって反動も抑え込める。抱え持って撃つより、やっぱり楽に銃撃ができる。

 重機関銃を軽機関銃の如く扱えるってのが。普通ならあり得ないけど、この世界に来て膂力だけは元の世界より上昇してる感じだ。

 なんら技能も持てずと思ったけど、力だけはあるのが救いかも。


 十階層で俺の腕の状態を見るヘンリケだけど「ほぼ完治してるみたいね」と言われ、これなら本格的な攻略も可能だと言っていた。

 十階層での休憩を終え十一階層へ向かい、隣に立つデシリアが「モルテンとアルヴィンを盾にしておけば、イグナーツに危険は及ばないからね」と、俺に言ってるようで二人に向かって言ってるし。


「任せておけ」

「もう二度と危険に曝さない」


 宣言通り俺には一切近寄らせない。しかも射線はしっかり確保してくれる。見事な動きを見せてくれるわけで。

 俺はと言えば射線が通れば銃撃を行う。


 十階層で少しの休憩を取り十一階層へ移動する。

 ここまで階層主も問題無く倒せている。ニーリングで撃つまでもなく、スタンディングでも充分に当てることができた。

 きちんと保持できるだけで、無駄に撃つことも無いから弾薬の消費も抑えられてる。


「よし、十六階層へ行くぞ」


 階段を下りて十六階層に入るが、ここでも苦労せずにモンスターを倒せている。

 あんまり楽に倒せてしまうと、俺の腕が、なんて考えてしまうが油断や増長は禁物。前回の失敗はそれがあったと思うし、咄嗟の際の判断もまだまだ未熟。

 気を引き締めて十六階層を移動し、十七階層の階段手前で引き返すことに。


「今回はリハビリだから無理はしない」

「そうだね。このまま勢いで二十階層とか行くとね」

「不測の事態が無いとも言えないからな」


 数日掛けて体を慣らし銃の扱いにも慣れてもらうとなってる。

 重機関銃を持っての射撃だから、通常より負担が掛かるだろうとの配慮もあるみたい。

 何しろ重いのは確か。反動も相当あるし。

 力で抑え込むことができているけど、長丁場になると無理が来るかもしれない。


 地上目指して移動し無事に陽の光を浴びると、ひと息吐ける感じだ。


「明日は十九階層まで行ってみるか」

「無理なら今日と同じ階層で引き返すが?」

「大丈夫そうです」

「無理はしちゃ駄目だからね」


 みんな体調を気遣ってくれる。

 でも、本当に今日くらいなら問題は無いし、二十階層を超えても問題無いと思う。

 ヴェイセルが「射撃手の技能、生えてないか?」なんて言ってるけど。


「技能って、授かると何か分かるんですか?」


 気になっていたこと。授かると変化を生じるのか、何かしら感覚で理解するのか。

 それともファンタジーでよく見る、ステータス画面みたいに表示されるとか。


「感覚だな」

「そうだね。急に扱えるようになる感じ」

「目覚める、ってのが近いかな」


 じゃあ授かってないな。目覚めた感覚は無いし急に扱えたってわけでもない。


「変化は無いです」

「気付かないだけ、ってのもあるかもね」

「でも本当に何も変わってないです」


 技能なんて授からなくても銃を扱える。それで充分だと思う。

 そもそも銃なんて訓練次第で、誰でも扱えるようになるものだし。

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