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Sid.34 メンバーの年齢と聖霊士

 代替要員と呼ぶのが相応しいのかどうか。

 デシリアって彼氏居ないんだな。サバサバした感じの性格だし、それなりにモテそうなのに。見た目も悪くないと思うし、スタイルも華奢ではあっても、たぶん出るところは出てる。


「あの」

「何?」

「彼氏って居ないんですか」


 真顔になると俺をじっと見つめてきた。そうやって見つめられると照れる。


「こういう仕事をしてるとね、恋愛から掛け離れちゃうんだよね」


 今居るパーティーは平均年齢が高い。恋愛感情を抱ける相手は居ないと。

 そう言えばメンバーの年齢って知らないんだよな。唯一デシリアが二十一歳ってことだけ。

 そんなことを考えていたら教えてくれた。


「モルテンが三十七歳。妻子持ち」

「え」

「あんな厳つい見た目だけど、ちゃんと居るんだよ」


 普段はホームで寝泊まりするが、休日は妻の下へ帰っているそうで。


「アルヴィンは三十二歳、独身。ヴェイセルは三十四歳で独身」


 一番近くて十一歳差。別にそれでも相手次第では問題無いが、アルヴィンは休日となると女遊びで忙しいらしい。モテるんだ。ついでに巨乳好きだとか。エロいんだ。デシリアには大きく育てよ、なんて言って来てむかつくと。

 ヴェイセルは銃が恋人になっていて、生身の女性にあまり関心がないそうで。フェチって奴かも。

 妖艶すぎるヘンリケの年齢は、なんて思ってたら。


「ヘンリケは二十八歳で独身で男居ない」

「居ないんですか? モテそうなのに」

「パーティーメンバー全員が恋人、だって」


 恋人とは言っても肉体的な付き合いをするわけではない。精神的な面で、と言う話だそうで。

 面倒を見なければならない男が、今までは三人。そして今は四人居るから、他所に男を作ってる暇はないそうだ。


「あと五年もしたら、あたしとイグナーツがシルヴェバーリの中心になるんだよ」


 無茶な。

 デシリアはともかく俺なんて、足を引っ張らないようにするだけで、中心で居られる存在じゃないでしょ。所詮はただの荷物持ちだし。荷物持ちが銃で多少の戦闘ができる程度。


「今後、若い人を募集して次の世代に引き継ぐんだって」

「若いって十代とかですか」

「うん、見習い。十八歳以下で将来性の高い子」


 今は俺を育てて次期リーダーを目指してもらう、とか言ってるし。絶対無理。

 リーダーはデシリアに任せた方がいい。あ、駄目だ。召喚を多用されるときっと詰む。他に有望株が来るだろうから、そっちに任せた方がいい。


「探索者をやれる年齢って四十代前後だから」


 ラビリント内のモンスター相手は、四十代を超えると厳しくなるそうで。一線を退くと探索者ギルドからの恩給が支給されるとか。

 探索者を辞め転職し、五十五歳で隠居生活するそうだ。五十五歳になると、少額とは言えど国から慰労金が支給される。それで細々と生活するらしい。

 年金制度は存在していないようで、一時金と貯蓄で過ごすのか。なんか老後は厳しそうな。


「二人で盛り上げようね」


 無理です。


「なんか乗り気じゃないね」

「だって、俺荷物持ちですよ」

「戦える。重機関銃を扱える」

「あくまで補佐です」


 もっと自信を持っていいと。俺ひとり加入しただけで、攻略が楽になったのは事実だそうだ。

 重機関銃を今以上に上手に扱えれば、制限付きの技能持ちより役立つとまで。

 しかも重い荷物を持って移動できる。パーティーに安定感が出るんだそうだ。


 と言うことで店をあとにし、少しだけ町を散策する。

 手は繋がってる。デシリアの手の柔らかい感触。汗ばんできそうな。


「あの、なんで手を」

「手?」

「手を繋いで」

「ああ、これ? だってはぐれそうだし」


 しっかり繋いでいないと、どこかに置き去りにしそうだと。それって、子どもと同じ扱いって気もしないでもない。

 一歳、二歳差程度なのに男、じゃなくて子どもかあ。今は仕方ないのかも。

 頼り甲斐ってのは無いんだろうな。自信を持てってのと矛盾してる気はするけど。


「ねえ、あの人」

「え」


 デシリアが指さす先に居る人。顔も見たくない人物だ。


「聖霊士の女だよね」

「あ、そ、そうですね」

「ひとりで何してるのかな」

「あの、放っておいた方が」


 ひとり背中を丸め歩いてるけど、クリストフと仲睦まじい間柄だったし、今もあのクソ野郎の面倒見てるんだろうな。何がいいんだか知らないけど、互いに性格破綻者同士気が合うんだろうな。

 関わるまい、と思っていたけど手を引かれるし。


「あの」

「声掛けてみよう」

「あ、いや。放置で」

「ちょっと様子がね」


 気になるそうで。

 側まで行くと声を掛けてるし。やめて欲しい。この連中とは金輪際関わりたくないのに。

 幾らか抵抗してもお構いなしだ。


「ねえ、聖霊士の人」


 背中を丸め気味に歩いていたけど、声を掛けられ振り向くと、少し驚いた感じで俺を見てる。


「生きてる」

「え」

「てっきり死んだと」

「置き去りにしたんだっけ」


 クリスティーナに詰め寄るデシリアだけど「あの、もう関係無いはずだから」と言って、先を急ごうとするも腕を取って「話があるんだけど」と。


「何か用?」

「悪いと思わないの?」

「何が」

「置き去りにしたこと」


 知らないと。ラビリントでは己の行動の結果は己で享受する、なんて言ってる。確かにそうだけど、でも俺は命令されて自由は無かった。命令が無ければ、こんな奴、荷物諸共置いて逃げることもできた。

 なんか腹立つ。


「違約金で縛っておいて、よくそんなこと言えるよね」

「そんなのクリストフが決めたことだし」

「それで自由が利かなくて死にそうになったんだよ」

「あたしのせいじゃない」


 クズだな。何で神はこんな奴に権能を授けたのだろう。どれだけ悪趣味で意地の悪い神なのかってことだよな。自分と同じ思考の持ち主を優遇するんだろう。

 人も腐ってるけど、崇める神自体も腐りきってる。


 暫しの言い合いをしていたけどクリスティーナが「もういいでしょ。パーティーは解散。死者も出た。クリストフは使い物にならない」と言ってる。

 治療を受けたものの完全に元の状態には戻らず、今も障害が残り移動するのもひと苦労らしい。


「で、面倒見てるの?」

「別れた」


 冷徹すぎる。あの甘々な関係が壊れたのか。

 今はひとりだそうだ。

 探索者を続けようと応募したが、尽く断られ今は教会でシスターをしていると。性悪シスターだ。よくそんな奴を教会も迎え入れるよな。あ、でも、神の権能持ちだから教会も優遇するのか。それと教会も腐ってるよな。腐れ神を祀ってるんだから。


「まさかとは思うけど、イグナーツを恨んでたり」

「そこまで腐ってない」

「どうだか」

「本心では少しは悪いと思ってた。でも言えなかった」


 クリストフがリーダーで、絶対の権限を持ち誰も逆らえない。全員でクリストフを持ち上げ気分を良くしておかないと、クリスティーナですら殴られたそうだ。

 殴られる程度だと、お得意の神域の防壁は発動しなかったらしい。命の危機に晒される事態でしか発動しないそうで。


「もういいでしょ」

「謝らないんだ」

「誰に?」


 呆れた表情でクリスティーナを見るデシリアだ。


「イグナーツに決まってるでしょ」


 クリスティーナの頬を掴んで睨むデシリアが居る。本気で怒ってるんだ。


「や、やめてよ」

「謝れば許してあげる。あたしにも慈悲はあるから」


 デシリアの手に力が篭もるとクリスティーナの顔が歪み「いひゃいから、やめひぇ」と涙目になって言ってるし。それに対して「謝れば済むんだけど」と譲らない。


「わひゃった」

「謝るんだよ」

「ひゃい」


 手を離すとなんか悔しそうだけど「ごめんなさい」と。


「頭くらい下げたら?」

「あ」


 また掴まれてるし。顔面が歪んでるよ。美形なのに滑稽な顔になってる。

 手をどかそうとしても動かない。デシリアって腕力も握力もあるんだな。

 結局、腰を九十度に曲げて深々と頭を下げ「ごめんなさい」と謝罪した。


「じゃあこれで手打ちにしてあげる」

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