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30/80

Sid.30 数で押してくるモンスター

 会敵する数が多く弾薬の消費もそれに応じて増える。いや、俺の撃ち方が滅茶苦茶になってるからだ。

 それでも少しずつ暴れず済むようになってきてる。

 ついでに抱え持つことで火傷も絶えない。その都度、ヘンリケが治療してくれるけど、物凄く無駄なことをさせてる気がして。本人に言うと「頑張った証だから遠慮要らないの」だそうで。とは言え完治してるわけじゃない。バレルやレシーバに焦げた皮膚まで付着してる。左の手指は爛れ気味で出血も。

 せっかく買った服の袖も焦げてるし。


「せめて把手があれば」

「把手?」

「レシーバに把手が付くだけで、扱いやすくなると思うんです」

「イグナーツなら扱えそうだし、カスタマイズしてもらうか」


 本体だけで十六キロあるから、一般的な射撃手には重すぎて抱えて使えないらしい。俺はそれを持って撃つことができる、と言うことで銃砲店に頼んで、カスタマイズを検討することになった。


「イグナーツの手」

「別に構いません」

「でも、そこまでしなくても」

「いいんです。役に立てれば」


 心配するデシリアだけど納得した上でやってるし。

 しかし「献身もいいが、自分の体も労れ」とモルテンに言われてしまう。


 火傷の痛みに耐えながらも二十八階層をクリアし、二十九階層に向かうが、その前にヘンリケから「きちんと治そうね」と言われ、暫し治療の時間となった。

 モンスターが現れたらモルテンとアルヴィン、それとヴェイセルが対処する。

 あの三人に任せておけば危険な状況には陥らない。


「ちょっと酷いね」

「ボロボロだよ」

「銃が凄い熱を持つんで」

「無理しすぎ」


 ヘンリケが治療する傍らで、心配そうに様子を窺うデシリアだ。

 加療士による治療は短時間で完治させるに至らない。治癒することを助けるだけで、あとは自力での回復になるわけで。

 それでも爛れた皮膚の再生を促し出血は抑えられる。指紋までは再生されてないな。


「あたしにできるのはここまで」

「ありがとうございます。大丈夫です」

「無理はしないでね」


 簡易的な治療が済むと二十九階層へ向かい、ここでモルテンから説明された。


「この階層は混合になる。少し手間が掛かるが気を抜かず対処してくれ」


 瞬時にモンスターの種類を見分け、最適な攻撃手段を取る。

 殻を纏った奴と正面攻撃の利かない奴。それらが混ざってくるそうだ。


「イグナーツ」

「あ、はい」

「重機関銃は三脚にセットしておけ」

「でも」


 火傷してまでやらなくていい、だそうで。

 見てて痛ましいそうだ。仕方ないか。

 初動が遅れることは想定済みだから、しっかり準備して確実に倒せばいいと。


 二十九階層を進むと早速混合状態のモンスターと会敵し、戦闘態勢になるが俺はと言えばしっかり床に固定し、銃口を向け狙いを定めることに。

 モルテンやアルヴィンが一定数を倒し、ヴェイセルがピンポイントで一体ずつ倒す。三人の動きと連携が凄くて、初動の遅れにより戦闘に参加する機会が。

 戦闘終了の際に言ってみることに。


「あの、何もしてないんですが」

「気にするな。この先必要になる」


 弾薬をかなり消費してるから、少し温存しておけってことらしい。二十八階層では弾倉を二つ使ってる。確かに使い過ぎだと思う。

 まだ階層主の相手が残ってるのと、帰りにもモンスターの相手をする必要がある。

 弾数は多ければ多い程、倒せるモンスターの数も増える。本来は無駄弾を使う余裕なんて無いから。


「左右だ!」


 右と左の支洞から同時にモンスターが来て、モルテンとアルヴィンとヴェイセルが右側へ。俺は左側を受け持つことになった。

 重機関銃をセットする間に、デシリアが足止めで魔法を使う。


「外側だと効果ないでしょ?」

「確かに」

「見た目は派手で攻撃した感じはあるけどね」


 足止め程度にはなってるから、それで準備はできた。

 トリガーに指を掛け引くと、秒間八発の銃弾が射出され、角度調整をしながら倒す相手と、殻の隙間を狙って撃つことを繰り返す。

 手数で勝負することでバタバタ倒れるモンスターだ。

 隣で見てるデシリアだけど耳塞いでるし。やっぱり煩いよね。それと俺の後ろに立つヘンリケだけど、なんか時々当たるんだよ。頭に。柔い感じのものが。ちょっと気になるけど、今は戦闘中ってことで。


 合計九十三発放つとモンスターを全て排除できた。向かってきたのは十二体だったから、九発は無駄撃ちしたことになる。

 それでも抱え持っていた時より、節約はできたから良しとしておく。


 俺が打ち終えた頃にはモルテンたちも、戦闘を終了し魔石を回収してるし。


「イグナーツ、数が多いからあたしも手伝うよ」

「俺がやります」

「いいから。ここまで仕事してないし」


 と言うことで一緒に魔石の回収をする。


「さっき、何を気にしてたの?」

「え」


 もしかして頭の上に乗ってたもの?


「いえ、後ろのヘンリケさんが気になって」

「ずるいよね」

「えっと。何がです?」

「だって、あたしより豊満」


 うん。想像できた。妖艶な人だし胸元は強調されてるし、やっぱそれだよね。俺みたいな未経験者には刺激が強過ぎるんだよ。


「楽しんだ?」

「あ、いえ。倒すのに集中したんで」

「そう?」


 少し疑ってるけど、ごめん。これって男の本能だし。い、いやいや。別に彼女でもないし、深い仲でも無いから謝る必要は無い、と思いたい。

 それでも集中したのは事実。

 ヘンリケも俺を揶揄ってたのか、それとも余裕があると見ていたのか。戦闘中にすることじゃないとは思うけど、気付かず載せてたってこともあるかも。


「回収終わり」

「今回の回収で金額ってどのくらいになるんですか」

「うーんとねえ。そこそこ、かな」


 数が多いから分からないか。俺も弾薬は数えても魔石の数は把握してないし。

 全員が一か所に纏まると移動を開始する。


「今度は前後」


 またも混合部隊。

 前方へ駆け出すモルテンとアルヴィン。続いてヴェイセルが銃を構えながら向かう。すぐに戦闘状態になるけど、発光することがあるから魔法剣か。

 こっちも余裕があるわけではない。

 即座に重機関銃をセットし撃とうと思ったら、十メートル程度先に壁ができてるし。


「足止め」


 ヘンリケの聖法術で土の壁を作ったようだ。

 それを壊そうとするモンスターのようだけど、簡単には崩れないんだな。強度が充分にあるってことか。


「あのね、イグナーツ君。右からも来てるの」

「え」

「後ろは放置でいいから右をお願い」

「あ、はい」


 そう言うことか。

 三方向からなんて、こっちが分散してしまうわけで。普通なら窮地に陥りそうだけど、ヘンリケもデシリアも余裕がある。

 土の壁の向こう側で爆発音がするし。デシリアの黒魔法だろうな。


 銃口を向けトリガーを引き撃つと、次々倒れるモンスターだ。

 さすがに少し慣れてきて、見た瞬間にどこを狙えばいいか分かる。殻を持つ奴は倒しやすいけど、跳弾を利用する奴は少し手間だな。どうしても無駄に撃つことになるから。


 それでも全部倒しきる頃には、全員が戦闘を終了していた。


「楽勝だった」

「そうですか」

「イグナーツは?」

「まだ苦戦します」


 跳弾がヴェイセルみたいに一発で決まらないから。

 技能のお陰と言っていたけど、技能無しでもなんとかしないと。こればかりは数を熟して間隔を掴むしかないんだろうな。

 モルテンが俺の側に来て「替えの剣を渡してくれ」と言ってる。


「折れたんですか?」

「すぐ限界が来てな」


 替えの剣を渡すと柄だけになった剣を渡された。


「これは?」

「一応持参しておいてくれ」


 受け取ってバックパックに仕舞っておく。


「イグナーツ。あたし二十分間無力だから」

「頑張ります」

「あら、あたしが居るから大丈夫よ」

「イグナーツならひとりで戦えるもん」


 ヘンリケとデシリアの女の闘い、だろうか。

 でも俺の場合はある程度時間を稼いでもらわないと。準備に少しだけ手間が掛かるから。


「あの、ヘンリケさんに時間稼ぎを」

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