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Sid.27 聖法術をお披露目された

 休憩が終わると二十六階層へ向かう。

 階段を下りる前にモルテンから「ここからは別次元の戦闘になる」と言われた。


「ゲヴァールだと倒しきれなくなる」


 ゲヴァール、つまりライフルのことだ。

 ピンポイントで狙えるだけの腕があれば別だそうで。つまりはヴェイセルくらいの腕が無いと倒せない。精密な射撃か数で勝負するか、どちらかになるらしい。

 ヴェイセルにも言わるが「弱点となる部分が極めて狭い。精密射撃はまだイグナーツには無理だからな」だそうで、代わりに重機関銃を三脚架にセットして、それを担いで移動した方がいいとなった。


「それと数も増える」


 これまでは数で攻めてこられた場合、デシリアの黒魔法やヘンリケの聖法術で対応していたそうだ。ひとりの剣士が相手にできる数は基本一体だけ。同時に複数は無理。

 ヴェイセルにしても重機関銃を持ち込めず、ライフルで一体ずつ倒すのが精一杯。

 攻略に時間が掛かるようになったそうで。


「だからこそ、イグナーツには期待してる」


 荷物を持っても戦闘ができる。重さや嵩張ることを意識せず運べるのは貴重だと。

 期待まで背負わされたけど、何が出て来るか分からない。俺で対処できるのかどうか。

 ただ、移動速度は遅いそうだから、慌てず対応すれば倒せるはずと。


 簡単な説明が済むと階段を下りて、二十六階層へ足を踏み入れた。

 ただの洞窟みたいだった二十五階層から上。ここはまるで人が掘ったような。円を描く天井になだらかな壁面。床も平らで凹凸が殆どなく、極めて人工的な雰囲気のラビリントになってる。


「なんか少し雰囲気が」

「ここからが本番だからね」

「え、どういうことです」

「二十五階層までは練習」


 モンスターの攻撃も強力で数が増し厳しさも、その分跳ね上がるのが二十六階層以下だそうだ。

 モルテンから補足で追加される。


「それとだ、主洞の他に支洞が多数あり、そこからもモンスターが出現する」


 これまでは前後だけ注意していれば良かったが、ここから下は左右にも注意を傾ける必要があると。

 アルヴィンが先導し後方にモルテン。その後ろにヘンリケとデシリア。そして俺。しんがりはヴェイセルが務めることに。

 後方の安全はヴェイセルが担う。左右と後方は俺が担う形になってる。


「責任重大だよ」

「重すぎます」

「心配しなくてもいいって」


 左右から出現するモンスターは、まずヴェイセルが対処し俺が攻撃。対処不能の場合はヘンリケの聖法術やデシリアの魔法で。

 また前方のモンスターに関しては、俺の前に四人居ることで、重機関銃を使わず魔法で対処するらしい。四人が障害物になるから銃撃は無理だ。


「あとは後方のモンスターをヴェイセルと一緒に」


 ひとつ疑問が出てきた。


「モンスターって前や後ろ、どこから一番多く出てきます?」

「左右」

「え」

「だからイグナーツに左右を任せるの」


 無茶な。索敵とかできないのに、どうやって気配を探るのか。

 と思っていたら索敵はアルヴィンがやってるそうだ。補助魔法って索敵のことだったのか。


「常時発動してるからな。負担は大きいが」


 モルテンに視線やジェスチャーで合図しているそうで。そうすると号令を掛けるのがモルテン。他が一斉に戦闘態勢に入るとか。

 全然気づけなかった。これだと、まだまだ仲間とは言えないな。


「来たぞ。右」


 支洞から向かってくるモンスターが居るようだ。

 咄嗟に重機関銃を構えられるわけもなく、ヴェイセルがライフルを放ち、俺が重機関銃を使える状態になる時間を稼ぐ。

 抱えていた重機関銃を下ろし床に固定して、モンスターが来る方向を見ると数が多そうな。


「任せたぞ」

「とりあえずぶっ放して」


 レバーを引き起こし戻すと射撃準備が整う。サイトを起こして狙いを定め、トリガーを引くと秒間八発の銃弾が飛んで行く。

 五・五秒の斉射で四体が倒れるも、後続が居てさらに四・五秒の斉射をすると、合計七体を倒すことができた。

 一体を倒すのに十一発も使ったのか。弱点はあるはずだから、それを探っておかないと無駄に弾薬を消費してしまう。


「咄嗟だったからな。今回は充分だ」


 ただし、弱点の把握をするように、と言われてしまった。分かっていたけどできなかったから言われるのも已む無し。


「何発使ったか分かるか?」

「えっと、八十発くらいです」

「何秒間撃ってたの?」

「十秒です」


 相変わらず正確な体内時計だ、なんてデシリアは言ってるけど、俺の唯一の取り柄かもしれないし。それが無かったら使用弾数も残弾数も把握できない。

 あと、弱点は教えてくれないようだ。自力で探る癖を付けろと言うことだから。

 三十七階層以降は誰も知らない。だから俺が自ら気付けるように、ってことだ。


 魔石の回収を済ませ再び前進すると、今度は正面から多数のモンスターが向かってきた。


「あたしがやる」

「デシリアは召喚のために温存してて」

「何にもしてないんだけど」

「いいから。召喚は負担掛かるでしょ」


 ヘンリケが聖法術で纏めて排除するようだ。初めて見るな。どんなものなんだろう。

 と思っていたらモンスターの真上から、目も眩む光と耳をつんざく音が発生した。雷だ、これは。モンスターの数の分だけ枝分かれして、全部が直撃してるし。凄すぎる。

 片付くと魔石を回収しに行くが全部で十三体も居た。

 戻って合流するとヘンリケに聞いてみることに。


「あの、さっきのは」

「ヨールデュラドニンって言う聖法術なの」

「何回でも使えるんですか?」

「体力次第かな」


 体調が良く大地の機嫌を損ねなければ、二十回以上使えるそうだ。今日のコンディションだと十八回くらいだと言う。


「大地の機嫌ってなんですか?」

「ファーナの力を拝借してるから、お願いして使わせてもらってるの」


 どうやら星の力を拝借ってことらしい。この星、惑星のことなのか。極端なファンタジー世界でもない限り、平らな世界ってことは無いだろうし、天動説でも無いだろうし。

 て言うか惑星が意思を持ってるの? さすがファンタジーな世界だ。


「他にも何か使えるんですか?」

「炎とか水とか土もかな」


 便利そうだ。そのどれもが今日のコンディションから言えば、十五から十八回くらい使えるそうだ。全部使い切ってしまうと二日は身動きできなくなるらしい。

 ゆえにできるだけ温存するそうで。それはデシリアの召喚も同じ。


「デシリアの召喚で出てくる存在は、もっと滅茶苦茶だから」

「ちゃんと加減できるから」

「一度も加減とやらを見たこと無いけどなあ」

「今日はちゃんとやるもん」


 なんか凄そうだ。いずれ目にするんだろうけど、なんか少し怖いかも。

 移動を開始すると次は後方から迫ってくる。


「イグナーツ。今度は弱点を探ってみよう」

「はい」


 ヴェイセルが近寄って来ないよう、牽制してるけど倒してるし。腕が良すぎるんだろう。

 俺はと言えば、一度に撃ち捲るんじゃなく、少しずつ当てる部分を変えながら探る。さっきは慌てたせいで一回に五秒前後も打ち続けた。少しずつ撃って試してみよう。

 射撃態勢を取りトリガーを引き、一秒間撃ち続けることを何度か。

 少しずつ着弾点を変えることで、数発程度で倒れるモンスターが居た。人型のようなモンスターだけど、足らしい足は無く軟体動物の如く、ぬるぬるした感じで這うように移動してる。

 上半身は人のようではあるが、どうやら鱗に覆われていて、みぞおち辺りに隙間があり弱点になってるのか。


 弱点と判断した箇所に向け銃弾を次々叩き込むと、六発程度で倒れるモンスターだ。

 全弾弱点に命中しているわけじゃない。何発かは外れているが、弱点の周囲を削るから少ない弾数で倒せると分かった。


 それにしても気色悪い姿だ。なんか嫌悪感を抱かせる。

 全て倒しきると使用弾数は最初に探るために二十四発で二体。以降は一体に六発。モンスターの数は全部で十二体で合計八十四発。

 一体倒すのに七発で済んだ。

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