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『退魔鬼譚』 ~妖怪学校一の美少女と異世界帰りの勇者は怪異退治が任務である~  作者: 保志真佐
第四章 御剣仁と妖怪喫茶店

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047妖怪喫茶店①




 図書室で楓と勉強会をした翌日の土曜日。

 2人は高校で合流した後、件の喫茶店に向かっていた。


 「楽しみだニャ」


 ついでに、五月も連れて。


 3人とも、制服姿である。


 楓が五月も連れて行こうと言い出したのだ。

 五月が甘い物好きを考えてだろう。


 「うん、私も楽しみ」


 自身の腕に抱きつき、戯れつく五月を横目に、楓も楽しみなようだ。


 今回、喫茶店に向かう理由は、楓自身が喫茶店に行ったことが無く、行ってみたいという興味があったからだ。


 「でも、勉強はちょっとニャ」


 勉強は嫌だと、ショボくれる。


 勿論、喫茶店では、楓が俺の勉強をちょんと見てくれるようだ。

 そして、ついでに五月の勉強も。


 因みに、この前の小テストで楓が満点、斗真が平均点ほど、最も点数が低いのが、五月である。


 「私がしっかり教えるから頑張って。終わったら、甘いもの食べよう」

 「か、かえちん」


 頭を撫でてくれる楓に対し、五月は目を輝かせて見上げる。


 「それにしても、かえちんが向かう喫茶店…私が全然知らないところなんだよね。スマホのマップ見たけど、かなり入り組んだ場所にあるんだよね。普通、喫茶店は目立つ大通りにあるものだけど」


 斗真、楓、五月はスマホのマップ機能に従い、目的の喫茶店へ向かう。




 辿り着いた場所には、


 「ここだよね?」


 楓が確認する。

 斗真と五月も無言で目の前の建物を見上げる。


 その喫茶店「たぬき喫茶」は、ザ・老舗店。


 マップの写真で年季の入った建物であると分かっていたが、実際見て見ると、壁の木目の古さが際立つ。


 妖具店「ながつか」のように、明治時代に建てられていそうな雰囲気を持つ。


 「取り敢えず、入るか」


 先行で、斗真が入る。

 こう言うのは勢いが大事だ。


 斗真は古びた扉に手をかけ、開ける。


 チリンチリン。

 扉につけられた鈴が鳴る。


 店の中に入った瞬間、木の匂いが鼻腔に入り込む。


 それは決して嫌な匂いでは無い。

 むしろ、安心させる樹木の匂いだ。


 だけど、それよりも鼻をくすぐるのがコーヒー豆の匂い。


 苦味や酸味、コク…黒い豆から放たれる香りが空間に漂っているのだ。

 コーヒー好きな斗真には堪らない香りだ。


 「中は綺麗ニャ」


 五月の言う通り、店の中は、清掃が隅々まで行き届いた衛生面の非常に良い内装。


 テーブルや椅子、カウンターなど汚れ一つなく、床は埃が全く見当たらない。


 「いらっしゃい」


 カウンターの奥に、グラスを磨く1人の男性。

 40代ほどか、落ち着き気に挨拶する。


 きっちり着こなしたタキシード。

 蝶ネクタイが、よく似合う。


 うん、言われなくても分かる。

 あの人が店長だ。


 「空いてるな」


 店内は店長以外、誰もいなかった。

 まぁ…その方が返って静かで、勉強しやすいのだけど。


 斗真たちは、テーブルの一つに座る。

 そして、メニュー表を見る。


 そこには、勿論コーヒーの表示。

 ストレートだけでなく、ブランド。


 「あ!ケーキもある!」


 五月が嬉しそうにする。

 メニューには、甘い物もしっかり乗ってある。


 「五月、それは勉強の後ね」

 「う…べ、勉強ニャ」

 「取り敢えず、飲み物を頼みましょう」


 コト…。

 斗真たちが座るテーブルに、三人分の水が運ばれる。


 運んできたのは、


 「家内さん」

 「いらっしゃいませ」


 水を運んできたのがウェイターの格好をした家内だと気づく斗真に、家内は頭を下げる。


 「ふふ…本当に来てくれるなんて」

 「家内さん、その格好…似合ってるね」


 おかっぱ頭と大きな眼鏡には、ウェイターはミスマッチかと思いきや、意外と似合っていると、楓が褒める。


 「本当に、家内さんが働いているニャ」

 「猫宮さんも、いらっしゃいませ」


 水を運び終えた家内は紙を取り出す。

 注文を書くためだろう。


 「おススメは何だろう?」


 メニュー表にあるコーヒーの種類に、斗真が悩んでいると、


 「おススメは、これ」


 家内がスッと、メニュー表の一つを指差す。


 それは店長の気まぐれブレンドコーヒーだった。

 なるほど、気まぐれ系か。


 「じゃあ、俺はそれで」

 「うん、私も」

 「ウチも」

 「かしこまりました」


 斗真たちは、店長の気まぐれブレンドコーヒーを頼む。


 「店長、気まぐれ三人分」

 「はいよ」


 注文を受けた家内は早速、店長にコーヒーを入れて欲しいと頼む。

 店長は小さい声で了承する。


 店長は黙々と、コーヒー豆をコーヒーミルに入れ、ハンドルを回し始める。


 ガリガリ…と、音が聞こえる。

 コーヒー豆を粉状にしているのだ。


 コーヒーを待つ間に、持ってきた勉強道具をテーブルに広げる。


 「うう…勉強」


 勉強が苦手な五月は嫌そうな顔をする。

 それでも嫌々ながら、勉強を始める。




 勉強を始めて、10分ほど経つ。


 「静子…コーヒー3杯を、お客様に」

 「はい」


 店長に言われ、家内はコーヒー3人分を斗真たちの元に運ぶ。


 湯気の漂い黒い飲み物がテーブルに置かれる。

 一旦、勉強を中断。


 斗真はカップを持ち、顔に寄せて、匂いを嗅ぐ。

 良い匂い。


 ゴク…。

 一口飲む。


 「美味い」


 一言零す。

 本当に美味かった。


 やや苦味が舌に残るが、コクが後を引く。


 良いコーヒー豆を使っているのも去ることながら、作っている店長の腕も良いのだろう。


 「うん、美味しい」

 「よ、よく…斗真は砂糖なしで飲めるニャ?」


 一方で、楓はコーヒーに砂糖とミルクを入れつつ、美味しく飲んでいる。

 諸作も綺麗である。


 でも、五月は砂糖とミルクを入れても、苦かったようだ。

 というか、コーヒーが熱くて、飲みづらそうだ。


 「猫舌なんだな」

 「私は猫だニャ!」

 「そう言えば、そうだった」


 そう言えば、五月は猫又だった。


 斗真たちは思い思いにコーヒーを飲む。

 その様子を見ていた店長は、


 「静子…私は厨房に行く」

 「はい」


 店長が厨房に行く。

 残った家内はカウンターの上を黙々と拭き始める。


 斗真たちはコーヒーを飲みながら、また勉強を再開する。




 一方、奥の厨房では、


 「よし!よし!よし!今日は午前から3人も!」


 店長は大きくガッツポーズをして喜んでいた。

 とても、さっきまでの静かな様子の店長とは思えない。


 タキシードを着ながら、喜ぶ姿は、陽気な店長のイメージそのままである。


 「しかも、私のコーヒーを美味しいと!生きてて良かった!」


 斗真と楓が自身が作ったコーヒーを美味いといっていたことを、滅茶苦茶喜んでいた。




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