表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『退魔鬼譚』 ~妖怪学校一の美少女と異世界帰りの勇者は怪異退治が任務である~  作者: 保志真佐
第四章 御剣仁と妖怪喫茶店

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/60

043図書室




 仁が京都に帰った、その日…斗真は高校への道を歩いていた。

 そこで、


 「斗真!」


 楓と偶然出くわす。


 「楓、おはよう」

 「うん、おはよう」


 斗真と楓は互いに隣同士で歩き合い、挨拶を交わす。


 「昨日は助かったよ」

 「助かった?」

 「鵺のこと。斗真と、斗真の友達の仁に助けられたね」

 「ああ、気にするな。俺たちは退魔士だし」


 二人共、何気ない会話をする。

 でも、会話は自然と異世界の話に移る。


 「斗真が話してくれた異世界の話、信じきれなくて…ごめんね」

 「良いよ。あんな話…普通は一瞬で信じる方がどうかしてる」


 歩きながら、楓は上を見る。


 「でも、根拠はないんだけど。何となく、斗真の話は本当の様な気がするんだ」

 「根拠は無く、何となく?」

 「そう……凄く偶に、本当に偶になんだけど、私…別の世界の夢を見るんだ」

 「別の世界の夢……」

 「夢だから、目が覚めると、徐々に記憶が薄れるんだけど。その夢の内容は、昨日…斗真から聞いた異世界の話に近いの。魔法や魔物がある世界。まるで、()()()()が異世界の住民だったみたいな。そんな夢」


 前世…斗真は楓を見るが、彼女は未だに上を見えいた。

 だが、楓はその後…可笑しそうに笑い、斗真を見る。


 「何てね。前世も、異世界と同じ突拍子も無い話だよね」




 そうして、楓と共に話している内に、高校の前に着いた。


 「ねぇ…ちょっと気になったんだけどさ」

 「ん?どうした、楓」

 「昨日の異世界の話で出てきた王女様のこと何だけど」

 「王女様……ああ、俺達を異世界に召喚した人か!その王女様がどうしたの?」


 楓は意を決したような顔で聞く。


 「斗真は、その王女様が好きなの?」

 「……………………へ?」


 斗真は素っ頓狂な顔をする。

 何をどう返して良いか、瞬時に分からなかった。


 楓は無表情で尋ねる。


 「何か……昨日の異世界の話で、斗真が王女様について話すときだけ…………なんかさぁ、言葉とか…表情とか…が柔らかいと言うか。異世界では、斗真と王女様は親しい関係なんじゃないかなぁ…て」


 楓の口調と言葉、そして、まるで犯人を問い詰めるかのような顔。


 斗真は頬を掻き、明後日の方向を見る。

 楓から見ると、斗真の頬は少し染まっていたことが見て取れただろう。


 「す、好きと言うか………し、親しくは……あ、あったかな。そ、その…俺って、異世界だと、仁とかに俺…比べて弱かったから。王女様のサポートが必要だったんだ」

 「?……斗真は強いと思うけど」

 「異世界に召喚された時は、剣とか駄目駄目で。弓の才能が俺に、あるんじゃないかと言ったのが、王女様なんだ」


 王女様であるティアナのことを言っている内に、斗真も無意識に言葉が出てくる。

 それぐらい、斗真とティアナとの間には、異世界では絆があったのだ。


 「へぇ………」


 でも、楓の目が鋭くなるのを感じる。

 顔全体も、何か険しい。


 一体どうしたのか?




 その後、斗真と楓は教室に行く。


 「あれ?かえちん、何か不機嫌じゃないニャア?」

 「気のせいよ」

 「そうかなぁ」


 少し前にあった口裂け女の事件の関係で、楓と友達になった猫又の五月が楓を見て、首を傾げる。


 確かに、今日の楓は何故か不機嫌であった。









 その日の放課後。

 斗真は高校の図書室にいた。


 中に入ると、本特有の髪の匂いがした。


 図書室の大きさは、普通の教室を3個分繋げたぐらいの広めの大きさ。

 所狭しに、本が詰め込まれた本棚が置いてある。


 斗真が、この図書室に来るのは、高校に入学して、オリエンテーションを除けば初めてである。


 斗真には、特に本を読むと言う趣味が無かったので、本を借りようとしなかっただけだ。


 さて…斗真がこうして図書室に来た理由は、妖怪に関しての資料調べである。


 退魔士となって、斗真はそれなりに妖獣と妖怪に出会った。

 斗真自身、小学生の時に見た『呪呪呪(じゅじゅじゅ)鬼次郎(きじろう)』から、妖怪の知識は人よりも豊富であると自負している。


 しかし、うろ覚えの知識も多く、一旦知識を見直してみた方が良いと判断した。

 そこでの図書室である。


 斗真はカテゴリー別を見ながら、妖怪の本を探していく。


 数分で幾つか目ぼしい本は見つかった。

 早速それらを図書室内のテーブルに乗せ、読み始める。


 斗真が本棚から出した本は、多くが妖怪に関する簡単な図鑑のようなものだった。

 それぞれの妖怪について、絵が付いており、非常に分かりやすい解説で乗っている。


 斗真は久々に集中して本を読み始める。




 キーンコーンカーンコーン。

 本を読み始めて、2時間ほどか、チャイムが鳴る。


 放課後終了の音であり、図書室利用の時間が終わった音でもある。


 まだ読み足りないところがある。

 なので、残りの本は借りることにした。


 斗真は本を持って受付に行く。


 そこには、一人の女子生徒がいた。

 図書委員の人である。


 女子と言うことを考慮しても小柄であり、その子は黙々と本を読んでいた。


 失礼ながら、本を読んでいたとはいえ、今まで存在を気づかない程、存在感の薄い子だった。


 「……あの」


 斗真は小さく声を掛ける。


 すると、女子生徒は、持っている本を下ろし、斗真に顔を向ける。


 「……はい」


 小さく返事をする。


 その子は、大きな丸眼鏡を掛けた子だった。

 おかっぱ頭をしており、人形みたいである。


 斗真を無表情で見ている。


 その子を斗真は知っていた。


 「あれ?家内(いえうち)さん?」


 その子の名は、家内静子(いえうちしずこ)

 斗真と同じ一年生で、同じ教室の女子生徒である。


 いつもは、教室の隅で本を読んでいるので、余り斗真や楓とも交流の無い子だ。


 ぶっちゃけ話したことが無い。


 「君は……星原君かな。同じクラスの」


 家内は、斗真が図書室にいるのが珍しいと言わんばかりの口調であった。


 斗真は静かに、本を受け付けに置く。


 「これ…借りたんだけど」


 そう言うと、家内は本を見て、無言のまま淡々と判子を押していき、手続きをする。

 そこに、会話は存在しない。


 斗真も何を話して良いのか分からず、無言だ。


 「……どうぞ」


 ものの10数秒で、全ての本を借りる手続きが済んだ。


 「ありがとう」


 斗真も淡々と本を受け取り、図書室から出ようとする。

 斗真が家内に背を向けた時、


 「…………星原君は、妖怪が好きなの?」

 「え?」


 まさか、話しかけられるとは思わず、斗真は驚きの表情で振り向く。


 受付には、変わらず無表情の家内がいた。

 家内は無言で、斗真が持つ本に指を差す。


 「その本たち、全部…妖怪関係の本だよね?星原君は妖怪に興味あるのかな…と、思って」

 「ああ…」


 なるほど、借りる本が全部妖怪関連の本なら、妖怪に興味があるのかと思うのは当然か。

 退魔士だから、妖怪の情報が必要と言うことは無いので、


 「最近、興味を持ってね。いろいろ妖怪の知識を集めてるんだ」

 「そうなの」


 家内の返事は簡素なものであった。


 そうして、斗真は本を持って、図書室を出るのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ