041異世界②
異世界が、昔話?どう言うことだ?
斗真と仁は驚愕の顔をしていた。
楓の口調的に、異世界が本当に存在する事実が、元の世界でも伝わっていることになる。
「どういうこと、楓?異世界のことは、この世界でも伝わっているの?」
斗真は楓に聞く。
楓はゆっくり頷く。
「うん。…………と言っても、都市伝説みたいなものだよ。一部の妖怪界隈に蔓延ってる話だけど」
「……妖怪界隈」
「この世界の裏側には、別の世界があって、二つの世界には一つの世界のように密接に結びついている。裏の世界では妖怪や妖獣とは、また違った魔物や異種族がいて、稀に…こっちの世界の人が向こうの世界へ行くことがある…そんな感じの都市伝説」
それを聞いて、斗真は仁と小さい声で話し合う。
「まんま…俺たちがいた異世界の話みたいだ」
「そうだな。俺のいた京都では、まったく異世界のことは知られていなかったけど」
楓が語る都市伝説を聞くに、斗真が住んでいる世界と、勇者として召喚された異世界はコインの表と裏のような関係になっている。
元の世界に帰ってからの違和感。
それは、この世界の妖怪と異種族。
琴葉の妖狐と、異世界の狐の獣人。
鬼族と、異世界の魔族
さらに、妖獣と魔物。
泥田坊と、異世界のマッドゴーレム。
土蜘蛛と、異世界のマーダースパイダー。
これらは、見た目や能力など、大変酷似している。
本当に、親戚みたいな感じで。
こっちの世界の人が向こうの世界へ行くことがある…勇者召喚に、そっくりだ。
もっと言えば、この世界で妖気と呼ばれるものは異世界での魔力。
妖術なら、魔法。
恐らく妖気や妖術は名称が異なるだけで、性質は同じだと思う。
原理は分からないが、この世界と異世界は、何かしらの因果関係がある。
そう考えれば、しっくり来ることが多いのだ。
「実は、それ………あながち都市伝説でも無さそうなのよね」
ここで、琴葉が顎に手を当て、考え込む様子を見せる。
斗真、仁、楓が一斉に琴葉を見る。
「みんなは、『呪呪呪の鬼次郎』ってアニメ知ってる?」
「『呪呪呪の鬼次郎』……知ってます。小学生の時に嵌ってた妖怪アニメ。あのアニメがどうかしたんですか?」
斗真が知っていると答える。
『呪呪呪の鬼次郎』とは、数年前まで大人気だった妖怪を中心としたアニメのことだ。
主人公の水樹茂雄は、十六歳の若さで戦争に駆り出され、四苦八苦しながら、太平洋戦争で左腕を失いつつも、何とか生還。
けれど、日本に生還したのも束の間、水樹は戦争での後遺症が原因なのか、妖怪が見えるようになった。
そこから、水樹は様々な妖怪と出会っていき、妖怪が引き起こす事件を解決していく。
これが『呪呪呪の鬼次郎』の主な内容。
少し前に、斗真がサブスクで久々に視聴したが、なかなか面白かった。
「あのアニメに出てくる…水樹茂雄は実在した人物で、アニメに登場した妖怪もストーリーも、概ね真実なのよ」
「「「ええ?!」」」
今度は、斗真、仁、楓が異口同音に驚く。
まさかの、ノンフィクション?!
「あ、あれ…本当の話だったんですか?私も見たことがありますけど。確かに、ストーリー自体は妙なリアルさはありましたが」
妖怪であり、鬼族でもある楓も、アニメの話自体はフィクションだと思っていたようだ。
「と言っても、アニメの冒頭のあらすじは、真実とは大きく違うわ。水樹茂雄と言う人は、戦争が終わって早々、異世界に行ったのよ。そして、異世界から元の世界に帰ってきた水樹茂雄は、何故かそれまで普通の人だったのに、妖気が使え、妖術とは、また違う不可思議な力を持っていたそうなの」
既視感のあり過ぎる内容。
それは、斗真や仁が体験した異世界召喚そのものだ。
斗真も仁も、異世界に勇者として召喚される前は、妖気…もとい魔力なんて持っていなかった。
だけど、異世界で魔族たちと戦い、元の世界に帰ってみると、異世界と同じように魔力が使え、勇者固有の能力スキルも使えていた。
多分、琴葉が言った水樹の妖術とは、また違う不可思議な力といのは、スキルのことだ。
思い出すのは、異世界での王女であるティアナの会話。
ティアナとは、斗真たちを異世界に召喚したオーロラ王国の王女。
その王女曰く、オーロラ王国では二,三百年の間隔で、魔族たちと戦うために勇者を召喚させているそうだ。
魔族たちは勇者によって倒されても、生き残った魔族が潜伏し、いつかは数を増やして、復活する。
その都度、オーロラ王国の王族から魔力量が多く、魔法適正の高い王族が生まれ、また勇者を召喚するのだ。
勇者召喚と魔族撲滅からの、魔族復活。
そして、再び勇者召喚。
このサイクルが正しければ、水樹茂雄と言う人がオーロラ王国で勇者として召喚され、元の世界に帰った時に、斗真みたいに魔力とスキルが使えても可笑しくない。
そこまで思考した時、斗真たちの前に勇者召喚されたのが、二,三百年前だと時系列が合わないと考える。
水樹が70年ほど前の太平洋戦争の時に、勇者として召喚されたのなら、異世界でも、斗真たちの前の召喚は70年前になる。
だが、そこで気づく。
そう言えば、異世界で過ごした時間は、3年間と言う長い期間なのに、ここに帰った時は1日も経っていなかった。
つまり、ここの世界と異世界とでは、時間の流れが違う。
水樹が勇者としても、収監されたとしても、時系列的には食い違いは起こらないのではないだろうか。
「それにしても、どうして琴葉さんは、あのアニメの内容が本当だって、知っているんですか?」
楓は若干猜疑心を匂わせながら聞く。
彼女からしても、あのアニメの内容が、実は殆ど真実でしたなんて話は信じづらいだろう。
「ああ、簡単よ。水樹を知っている人から直接聞いたのよ」
「水樹を知っている人?」
「私の母のこと。ほら…あのアニメに出てくるでしょ?物語中盤で、水樹に協力的な妖狐」
確かに、出てくる。
物語が進むと、嫌に世話好きで、親切そうな妖狐が登場するのだ。
「あれが私の母」
「あの妖狐、琴葉さんのお母さんなんですか?!」
「そうなのよ。私の母曰く、水樹は突然、自分が異世界に召喚されたと言う話を、出会った妖怪たちに話していたそうなの。でも、私の母も含めて、どの妖怪も水樹の嘘話としか捉えなかった。恐らく、水樹が語った異世界の話が、一部の妖怪界隈に蔓延る都市伝説として形を変えたんでしょうね」
なるほど…だから、琴葉は水樹が実在し、あのアニメの話が本当だと言う事を知っており、異世界の話が都市伝説として残ったのか。
流石に、異世界の話は突拍子も無いから、アニメの中では無かったことにされたのだろう。
「私だって、異世界なんてものは、ただのファンタジーにしか思ってなかった。でも………………」
そこで、琴葉は斗真と仁に目を向ける。
「仁、ぞして…斗真」
琴葉は仁と斗真を交互に見てから、
「貴方たち二人は、異世界に行ったことがあるの?」
そう切り出す。




