040異世界①
「まさか、本部からの連絡にあった要監視対象である妖人と、斗真が知り合いなんて」
琴葉が興味深そうに、斗真と仁を見る。
この場には、斗真、楓、仁、琴葉の4人がいる。
ここは、退魔士協会・隗隗街支部の部屋。
周囲には、たくさんの蝋燭が灯されており、壁のあちこちに何かの文字が書かれたお札が張っているので、いつ見ても不気味さが際立つ。
この部屋は、斗真が退魔士になるときに通された隠し通路を通った先にある部屋。
斗真や楓が住んでいる隗隗街の役所…その役所の何の変哲も無い個室にある神棚に魔力を通すと、壁が変化して、この部屋に繋がる隠し通路が現れるのだ。
元の世界に帰って初めて、斗真と仁が再開した日に、鵺の報告を聞いて、仁と共に無事に倒した。
けれど、その後の連絡で、何と仁は現在、退魔士協会本部の要監視対象でありながら、無断で京都から長野県にある斗真の実家に訪れたことが発覚する。
楓は、事情は支部で聞くと言い、取り敢えず、この部屋に連れてきたのだ。
「もう一度確認だけど、この赤髪の坊やは、斗真の友人なのよね?」
支部長であり、妖怪の妖狐である琴葉が尋ねる。
赤髪の坊やと言うのは、仁のことだ。
琴葉的には、本部から連絡に入った監視対象が、斗真の友人と言う事実に驚きである様だ。
「ええ、仁は俺の友達です。でも、まさか仁が監視対象中なんて知りませんでした」
斗真や仁、楓が部屋に来た時に、琴葉がどうして仁が監視対象であるかの経緯を説明した。
琴葉の説明によると…どうやら、仁は元の世界に帰って早々、天狗によって本当に妖怪審判というものを掛けられたようだ。
妖怪審判は、複数の退魔士協会本部の関係者である妖怪によって、開かれる尋問みたいなものらしい。
ここら辺は、楓に聞いた通りだ。
補足情報を加えるなら、この妖怪審判では特殊な妖具を使用して、行われるため、嘘などが付けないそうだ。
「この赤髪の坊やが言うには…………戦闘力が高い理由は、異世界に転移されたからと。そして、勇者になって、3年間…その異世界で戦っていたから。だから、強いと…妖怪審判では言ったそうなのよ」
「………………………は?イセカイ?」
楓が素っ頓狂な声を出し、目を点にさせる。
まぁ…そんな顔になるよね。
ここで、肝心なのは、仁は虚偽の申告が出来ない妖怪審判の場においても、異世界の事を馬鹿正直に答えたのだ。
異世界に転移されたなんて話…ラノベ以外聞かないだろうし。
傍から聞けば、耳を疑うし、正気の失っていると捉えかねない。
しかも、妖怪審判では、嘘を付けない。
仁は本当のことを言っていることになる。
当然…妖怪審判で仁を尋問した妖怪たちは、仁の異世界の説明に、大混乱したみたいだ。
なので仁は、戦闘力が高いが、頭の可笑しい奴と言う認識になるつつあった。
危険なので、妖怪専用の牢屋に入れるかと言う話にもなった。
「でも、一葉先輩の助力もあって、監視対象に納まったんだよな」
仁は、自身の頭を撫でながら、説明する。
一葉先輩と言うのは、仁が元の世界で普段から通っている剣道道場の先輩の人。
その一葉と言う人が、妖怪審判の場で、仁は決して危険な人では無いと言ったそうだ。
そのお陰もあってか、牢屋行きは免れた。
そして、結果的に…仁は要監視対象になった。
同時に斗真と同じ退魔士となったのだ。
それは仁は妖人でありながら、非常に高い戦闘力を持っている。
しかし、その戦闘力の素性が異世界と言う謎の理由。
退魔士は人手不足。
それは本部でも同じらしい。
取り敢えず、退魔士として、戦力を確保しつつ、監視しようと言う結論になった。
仁は退魔士になったが、監視中なので、勝手に京都の町から出ては行けなくなった。
「はぁ…それなのに、仁は俺の家に来たんだな」
「わりぃ。どうしても、斗真に会いたくてな」
仁がワイルドそうに笑い、謝る。
仕方が無いなぁ…と言う感じの目を仁に向けつつ、斗真は内心悩み込む。
楓には、異世界の事を知られてしまった。
別に特段、絶対に秘密にする事とは思えないが、普通は自ら話すものではない。
楓に、どう説明しようか。
そう思っていた最中、楓が衝撃的な事を言いだす。
「もしかして、あの昔話に出てくる異世界のこと?本当に、そんな世界があるの?」
「「は?」」
斗真と仁は異口同音に、首を傾げる。




