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『退魔鬼譚』 ~妖怪学校一の美少女と異世界帰りの勇者は怪異退治が任務である~  作者: 保志真佐
第四章 御剣仁と妖怪喫茶店

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039妖怪審判




 「何て…強さ」


 斗真の隣にいる楓は、今しがた繰り広げられた仁と鵺との戦いを見て、驚愕の表情を浮かべる。


 鵺は傍目から見ても、異世界にいたキメラに似ており、強さもキメラに相当するだろう。

 キメラは、単体なら、この前の土蜘蛛に勝るかもしれない。


 仁の勇者としてのスキル〈獣宿し(ビースト)〉も、斗真のスキルである〈万能眼(オール・アイ)〉と違って、目に見えた変化が第三者に分かり、戦闘が非常に見ごたえがあるのだ。


 スキル名からでも読み取れるが、仁の戦いは、如何にも獣の如し。


 どんな魔物や妖獣でも、仁の前では、猛獣に駆られる一匹の獲物となってしまう。


 「彼は妖怪じゃない。斗真と同じ妖人。しかも、斗真と似たような感じがする」


 何かを考え込む楓は、斗真に向き直る。


 「斗真……彼は、味方なんだよね?」

 「うん。味方だよ。彼の名前は、御剣仁。俺と同じ高校一年生。高校と言っても、京都にある高校だけど」


 それを聞いて、楓は首を傾げる。


 「京都にある高校?そんなに遠くの高校の人と、斗真は友達なの?」

 「う、うん…いろいろあって、仁とは戦友になったんだ。同じ戦場で戦って来たからね」


 楓に異世界のことを言う訳にもいかないだろうし、斗真は言葉を濁す。

 まぁ…仁は異世界から帰って早々、馬鹿正直に言ったみたいだが。


 「戦友…戦場…………あ!もしかして、前に斗真が言ってたよね。3年間ほど、戦闘技術を学んでたって。もしかして、それ関係の戦友とか?」

 「う~ん…そうだね。仁とは3年間一緒に戦ってたんだ」


 そう言えば、楓には、そう言ったんだった。


 あれは3年ぶりに異世界から帰った時、斗真は緑鬼と戦っている楓に応戦した。


 そして、自身が3年間、異世界で勇者としての技術を学んでいたことを言う代わりに、3年間で魔力を使った戦闘技術を学んでいたという出鱈目な理由を言って、茶を濁したんだった。


 「だから、仁は敵じゃない。心強い味方なんだ。………少し自分勝手に突っ走ることはあるけど、良い奴だよ」


 斗真は困り顔をしながら言う。

 異世界では、仁は良かれと思ったことは即行動に移すから大変だった。


 楓は表情を軽くさせる。


 「そうなんだ。斗真が言うなら、信じる。斗真の味方なら、確かに心強いね」


 自然な感じで楓が笑う。


 綺麗な紅色の髪と銀色の目。

 学校一の美少女と言われるだけあって、微笑みも大変、絵になる。


 見ている斗真も、ついドキッとしてしまう。


 「そ、そう言えば、楓は妖怪審判……って、知ってる?」

 「え?妖怪審判?」


 話題を逸らすために、斗真はさっきまで聞いていた仁の話で気になっていた妖怪審判について聞く。


 仁は異世界から元の世界に帰って、天狗と青鬼の戦いに参戦。

 青鬼を倒した後、天狗に仁の強さを聞かれた際、仁は馬鹿正直に、異世界で学んだと答えた。


 異常者だと、天狗は思ったのか、仁を妖怪審判に掛けると言い出したのだ。


 だけど、斗真は妖怪審判なんて今まで聞いたことが無い。

 当たり前だけど。


 楓は意外そうな顔をする。


 「よく斗真が、妖怪審判なんて知ってるね」

 「楓は知ってるの?」


 首を傾げる楓。


 「ん?斗真は知らないの?」

 「う、う~ん…名称だけは知ってるんだけど。それが何なのかは知らなくて」


 楓は益々、首を傾げる。


 「そうなの?妖怪審判って、私と斗真が所属する退魔士協会…それも本部で行われる…………ん~尋問…みたいなもの。何らかの疑いを掛けられた妖怪が受ける聞き取り調査ともいうのかな?私も妖怪審判については、琴葉さんに聞いただけだから詳しいことは知らない」


 琴葉とは、斗真が退魔士になった役所の裏の顔…退魔士協会・隗隗街支部の支部長である妖狐のことだ。


 そして、退魔士協会の本部は、京都。

 仁の話だと、清水寺ということらしい。


 そこで、開かれる尋問。

 余り良い言葉では無い。


 「待たせたな!」


 そうこうしている内に、仁が帰ってくる。


 「お疲れ。相変わらずの獣っぷりな戦いだな」

 「そうか?斗真も弓の腕は健在だな」


 斗真と仁は拳を合わせ合う。

 これは異世界で、戦闘終わりに良くやっていたことだ。


 お互い称え合う。

 斗真にとっても、仁にとっても、互いは背中を任せられる仲なのだ。


 「取り合えず、鵺は倒せたし、役所に報告だよな?」

 「うん、そうだね。今、連絡する」


 妖獣を倒した際は、必ず役所……ここでは、隗隗街支部の支部長の琴葉に連絡する決まりがある。


 楓がスマホを操作し、琴葉に電話を掛ける。

 それを見て、斗真は気づく。


 「そう言えば、仁とは連絡先を交換してなかったな」

 「あ!確かに、そうだな。交換しようぜ!」


 斗真と仁は互いのスマホを取り出す。

 そして、画面を操作して、互いの連絡先を交換する。


 斗真は早速、仁に『よろ』と送る。

 すぐに仁からも『よろしゅうな』とメッセージが送られてきた。


 「雫と優香の連絡先も交換したいな」


 仁が異世界で共に戦った斗真以外の二人の戦友の名を言う。


 斗真は電話をしている楓を見て、若干小さめの声で言う。


 「そうだな。俺も早く二人が無事に帰ったかどうか確認したいんだけど。手紙だと、時間が掛かるんだよな。本当は異世界にいる時に、電話番号を教え合って、直ぐに連絡し合うのが一番良いんだけど」

 「優香は携帯電話持ってないんだよな」


 仁が苦笑いして答える。

 斗真も苦笑いする。


 優香は、何と高校生でありながら、携帯電話…スマホを持っていなく、当然自前の電話番号も持っていない。

 なので、元の世界に帰った際の、互いの安否確認などは手紙となったのだ。


 けれど、直ぐに表情を真剣なものにする。


 「でも、優香は兎も角。真面目な雫が、俺よりも手紙を出すのが遅いなんて。何かあったのか」


 確かに…と、斗真も考える。


 斗真は元の世界に帰ってきてから、すぐに手紙を出そうとした。

 けれど、妖怪や退魔士関連で、数日遅れてしまった。


 そして、仁からの手紙が来たのは、斗真が手紙を出してから半月後。


 異世界では、互いの住所に手紙を出すと決めていた。

 なので…はっきり言えば、三人の性格を考慮して、雫、仁、優香の順に手紙が来るかと思った。


 仁は、元の世界に帰って即座に、妖怪審判というものに掛けられたらしいので、手紙が遅く送られてきた理由は分かる。


 けど、あの几帳面で、頭の良い雫が、今日まで手紙を出すのを忘れているとは思えない。

 仁の言う通り、何かあったのかもしれない。


 恐らく、雫が帰ったであろう北海道で。


 「優香は………昼寝でもしてるのかな?」

 「…………そうだろうな。多分、手紙を出すことなんて、しっかり忘れているだろうな」


 斗真の懸念に、仁が肯定し、互いに仕様が無いなぁと言う笑みを浮かべる。


 異世界でも、優香は超が付くのんびり屋だった。

 きっと今頃、お昼寝でもしているのではないだろうか。


 「雫に関しては、出来れば、俺が北海道に直接行って、雫の安否を確かめたいんだけど。ちょっと俺は…いろいろと野暮用があって」

 「野暮用?」


 聞き返す斗真に対し、仁は少し言い辛そうな顔になる。

 珍しい。即答で、はっきり物を言う仁が少し言い辛そうにするなんて。


 何か後ろめたいことがあるのか。


 「実は、まだ言っていないんだけど、俺は本当は、まだここに来てはいけない身で」

 「ここに来てはいけない?どういうこと…………」

 「え?それ本当ですか、琴葉さん?」


 ここで、電話をしていた楓が驚きの声を出す。

 どうしたのかと、斗真が耳を傾けると、


 「要監視中の退魔士が行方知らず?」


 監視中…なんだか、物騒な単語が出てきた。


 楓は、その後…電話の中で何かを話してから、電話を切る。

 電話を切った楓は、顔を真剣なものにして、斗真に向き直る。


 「斗真、大変!」

 「どうかしたのか?」

 「うん、今…琴葉さんから連絡が来たんだけど…現在…退魔士協会本部で、監視対象中の退魔士が無許可で、京都の町を離れたそうなの」

 「退魔士協会本部で、監視対象中の退魔士?」


 楓の話の内容を聞いて、斗真は無意識に仁に顔を向ける。


 退魔士協会本部は、さっき楓が説明した妖怪審判が行われる場所。

 そして、仁が先程何か言いかけていたが、仁は本来なら、ここに来てはいけないそうだ。


 「うん。しかも、京都から長野県に来ているという報告も上がってる。その退魔士は、赤い髪を持った高身長の男性の妖人。年齢は丁度、私や斗真ぐらい」


 続々出てくる情報には、斗真にとっては身に覚えがあり過ぎた情報だった。

 具体的に言うと、斗真に、その情報に全て該当する人物がいるのだ。


 「………………ん?赤い髪を持った高身長の男性の妖人?そして、年齢は丁度、私や斗真ぐらい」


 そこで、何かに気づいた楓が…ゆっくりと仁を見る。

 仁の髪は、燃えるような赤い髪である。


 年齢も、ぱっと見…斗真や楓と同じぐらい。


 「…………まさか」


 楓は斗真の隣にいる仁を、非常に怪し気に見る。


 「もしかして…貴方が…………」

 「ああ、うん。それは俺だな」


 仁は呆気なく、認める。

 斗真は、どうするべきか分からなかった。


 何せ、さっきの楓の話が本当なら、仁は監視対象でありながら、無断で京都から長野県に来たことになる。


 そんな話…斗真自身、仁の口から聞いていない。

 きっと…仁は後先考えずに、自分の家に来たのだろう。


 異世界で、仁の性格や行動理念を知っている斗真は、そう結論付けた。


 仁の素直な言葉を受けて、楓は目を閉じて、深呼吸をする。

 そして、楓自身の銀色の目がまっすぐ仁に注がれ、仁の肩に手を置く。


 「確保」


 それは、さながらドラマで警察官が犯人を捕まえた際の、シーンに似ていた。




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