表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『退魔鬼譚』 ~妖怪学校一の美少女と異世界帰りの勇者は怪異退治が任務である~  作者: 保志真佐
第四章 御剣仁と妖怪遠足

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/50

036鵺




 楓からの電話によると、隗隗街の付近にある山の麓に、強い力を持った妖獣が出現したらしく、楓自身も現場に向かっている最中なので、斗真も応援として向かって欲しいとのこと。


 『分かった。俺もすぐに向かう』

 『ありがとう。じゃあ、現場に落ち合おう』


 楓はそう言って、電話を切った。

 斗真の方も、楓が向かっている場所に自分も向かうために、立ち上がる。


 そして、部屋の片隅に置いてある筒を持ち、肩に紐を通して背負う。

 この筒の中には、妖気を纏った武器である妖具『花咲の弓』と矢が入っている。


 元々、この妖具は商店街の外れにある駄菓子屋「ながつか」の女将である…ろくろ首の長子から借りたもの。

 と言っても、駄菓子屋と言うのは、表向きであり、本来は店の地下に様々な妖具を揃えた妖具店なのだ。


 「悪い、仁!楓からの連絡で、街の近くの山の麓に妖獣が出たらしい」

 「妖獣?この街にか?」

 「そうだ。俺は退魔士といして、そこに向かう。話の続きは、帰ったから聞くよ!」


 斗真は端的に説明する。


 退魔士の役割は、妖怪の取り締まりと妖獣の退治。

 特に、妖獣の退治は退魔士にしか出来ない。


 斗真は外に出ようとする。

 すると、仁も立ち上がっていた。


 「俺も行くぞ!」

 「え?」


 突然の仁の意気込みに、斗真は首を傾げる。


 俺も行くぞ…つまり、仁も妖獣の退治に参加するという事だろうか。


 確かに、仁がいてくれれば、心強い。

 仁の強さは誰よりも斗真が知っている。


 異世界では、前衛を任せていたのだ。

 仁の近接戦技術は、斗真の遥か上を行く。


 ならば、仁も連れて行くのが得策だろう。


 そう考えて、でも………と思う。


 「有難いけど、これは退魔士である俺の役目だからな」


 妖獣を退治するのは、退魔士の役目であり、使命である。

 何の関係も無い仁に手伝わせることに、若干の躊躇が斗真にはあった。


 すると、仁は少しばかり呆れた表情をする。


 「何だ、斗真。もう忘れたのか」

 「忘れた?」

 「俺も、斗真と同じ退魔士になったんだって」

 「あ!」


 そうだ、思い出した。


 仁に久しぶりに会った時に、仁自身が言っていた。

 自分も退魔士になったと。


 てか、さっきまで聞いていた仁の話は、そもそも退魔士になった経緯を説明するための話だった。


 「俺も退魔士だから、一緒に妖獣を退治するぞ!」


 仁は有無を言わせない決意で言う。

 斗真は心の中でため息をつくと同時に、仕様が無いなぁ…と思う。


 仁は、異世界で斗真たちと共にいる時はいつも、こうだ。


 思い立ったことは何が何でもやる。

 誰かの助けを見過ごさない。


 だからこその、斗真たち勇者チームのリーダーなのだ。


 「分かった。じゃあ、仁も手伝ってくれ」

 「おう!」


 こうして、斗真と仁は二人して、妖獣が現れた場所に向かうことになった。









 電話で楓から聞いた、その妖獣が出た場所と言うのは、以前…楓と共に泥田坊を退治した山の麓にある沼地から、もっと山よりの地点。


 そこへ斗真と仁はダッシュで向かっている。

 二人共に魔力を体に漲らせ、身体強化しているため、常人離れしたスピードである。


 車並みに走る二人は、普通の人が見れば、目を疑うほどの光景だろう。


 斗真と仁は妖怪では無く、人であるため、一般人にも見られる。


 と言っても、斗真の住む隗隗街の山付近には、人は全く住んでいなく、精々が高齢者の人。

 今が夕暮れ時なのも相まって、誰かに見られる心配は余り無いだろう。


 斗真と仁の視線の先には、険しい山々があった。


 「本当に自然が多いんだな」

 「見渡す限り、山しかないだろ」


 走りながら、目に見える山々を眺める仁に、斗真は苦笑いをする。




 暫く二人して走っていき、妖獣が出たと聞いた場所に徐々に近づく。


 そこに、


 「カー!カー!トウマ!トウマ!」


 突然、斗真の名前を叫ぶ声が空から聞こえる。


 斗真が上を見ると、そこには一羽の烏がいた。

 足が三本ある烏。


 見覚えがある。


 「墨岡さん!」


 斗真が三本足の烏に向かって、声を掛ける。


 あの三本足の烏は、八咫烏と言う妖怪。

 名前は墨岡烏。


 普段は「姿化かし」で眼鏡をかけたスーツの男になって、役場…もとい退魔士・隗隗街支部の副支部長を務めている妖怪だ。


 妖獣の出現されると、こうして妖怪の姿となって、正確な場所を教えてくれる。

 楓と泥田坊を退治しに行く時にも、こうして方向を教えて貰った。


 「トウマ!ヨウジュウハ、キタニイル!カエデハモウムカッタ!」

 「北ですね。分かりました!」


 斗真はお礼を言う。


 ここで、墨岡は斗真の隣にいる仁に気づく。


 「トウマ、ソノアカイカミノオトコハダレダ?」

 「俺の友達の仁です。彼も退魔士です」


 斗真はそう言って、仁を紹介する。


 「あ……仁です。よろしくお願いします」


 仁も挨拶をする。

 思えば、初めて斗真が墨岡に会った時も、楓が自身の事を紹介していた。


 「ソウカ。フタリトモ、キヲツケロ」


 墨岡は特に人を不審がる事なく、飛び去っていく。


 斗真と仁は、墨岡に言われた通り北に向かった。









 「ん?……なぁ…仁」

 「ああ、俺も感じる」

 「近くにいるな」


 北へ走っていると、斗真も仁も強力な魔力を感じていた。

 この先に妖獣がいる。


 「でも、この感じ。二つの魔力が………楓と妖獣が戦っているのか!」


 勇者パーティの中でも、魔力感知に優れた斗真が、妖獣と同じく楓の魔力を感じ取る。

 既に戦いは始まっていた。


 斗真と仁は急いで現場に向かう。


 カン!ガキン!ドン!

 すると、段々と大きい音が聞こえる。


 「はあ!」


 続いて、楓の気合いの籠った声も聞こえる。


 ようやく楓と、妖獣の姿が確認できた。


 楓は制服に、妖具である『飛翔草履』を履き、紅葉のような緋色の髪より作られた〈緋槍〉を持って応戦していた。


 相手の妖獣は、


 「グルアァ!!!」


 低い雄叫びを上げ、楓に鋭い爪を振るっていた。

 それを槍で受けた楓は、一旦距離を取る。


 しかし、直ぐに踏み込んだ後、左手に持った緋色の針を投げながら、右手に持った槍を突く。

 妖獣は、それを巧みな身のこなしで躱す。


 続いて、妖獣の尾が噛みつこうとする。

 それを楓は草履で蹴り飛ばす。


 見たところ、一進一退の戦いだ。


 「あの妖獣は……」


 斗真は妖獣の姿を見て、自身の中にある妖怪知識を引っ張り出す。


 その妖獣は、猿の顔を持っており、胴体は狸。

 さらに、四肢は虎であり、尾は蛇となっている。


 四つの動物を掛け合わせたアンバランスな見た目の妖獣。


 これと同じ姿が言及されている妖怪を知っている。


 「鵺か」


 そう、今回現れた妖獣は、鵺であった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ