033御剣仁
御剣仁。
それは異世界に召喚された斗真を含めた四人の勇者の内の一人。
京都出身であり、爽やかなイケメン。
容姿は燃えるような赤い髪。
楓の髪色も赤に近いが、楓の方は紅葉と同じ緋色であり、その緋色よりも赤い。
180センチの高身長に、運動神経も抜群であり、元の世界ではクラスの委員長。
小さい頃から剣道の道場に通っており、大将をやるほどリーダーシップとカリスマ性に優れている。
なので、勿論勇者の中では、仁がリーダーであった。
仁は要領が良く器用であり、何でも熟せた。
性格自体は、物語に出てくる英雄のように、いつも堂々としている。
自信に満ち溢れた雰囲気は、見る者に安心感を与えてくれる。
仁は誰にでも丁寧に、優しく接してくれる。
元の世界では、陰キャであり、これと言った取り柄も無く、良くみんなの足を引っ張りがちであった斗真にも。
ラノベだと、こういう異世界転移で勇者として召喚された者の中で、リーダー気質な奴は実は悪い奴だったみたいな展開がありがちではあるが、仁は本当に良い奴なのだ。
だから、斗真は仁の事が一人の人間として好きだし、尊敬をしている。
斗真にとって、仁は親友でもあり、共に魔族と戦った戦友でもある。
仁の異世界での戦闘スタイルは、主に剣での前衛。
騎士が使っているロングソードを使っても近接戦で戦っていた。
これは仁自身が、元の世界で剣道をしていたこともあるが、仁の持つスキルが近接戦で活かせるからだ。
斗真の場合、あらゆる物を見ることが出来る〈万能眼〉のスキルがあるため、弓などの遠距離攻撃と相性が良く、チームでは後方支援に徹していた。
因みに、四ノ宮優香は回復役。
仁の場合、スキルを使っていない時でさえ、何物も恐れぬ勇者であるが、スキルを使用した際の仁は、まさに勇猛果敢。
仁…それと、魔法使いとして後衛をしていた神宮雫が、斗真たち勇者チームの火力を担っていた。
説明が少し長くなったが、斗真にとって、仁は最も親交の深い仲なのだ。
そんな仁と斗真が、異世界から元の世界に帰ってきて、久々に再開した。
時間的には、そこまで開いてはいないはずだが、何故だか数年ぶりの再会のような気がした。
「元気にしてたか?斗真!」
「ああ、見ての通り元気だよ!」
斗真と仁は、お互い駆け出し、抱きしめ合う。
二人共、再開できて嬉しいのだ。
それぐらい、二人に間には、他の者に無い絆と友情があった。
暫くして、抱き合うのを止め、互いに笑い合う。
そして、示し合わせたかのようにハイタッチをする。
「良く来てくれた」
「ああ…いても経ってもいられず、来ちまったよ」
「良いタイミングで来たな。俺は、さっき学校から帰ってきたところだ」
「そうか。俺は学校を昼から抜け出して、午後はズル休みだ」
仁は悪戯が成功したみたいなズル賢い笑みを浮かべる。
斗真は苦笑いする。
「仁らしいな」
流石の行動力である。
異世界では、仁は常に考えたことは速攻で行動に移すタイプだった。
考える余裕があるなら、手を動かせが、仁の口癖出る。
深く思考してから、行動に移す雫とは正反対。
その行動力で、他のメンバーである斗真や雫、優香が振り回されることが何度かあった。
それでも、斗真たちは仁に着いていく。
不思議と、仁に着いていけば、何かが起こりそうな気がするからだ。
「斗真とは、たくさん話したいことがあるからな。だから、ここに来た」
「ああ、手紙に書いてあった。まさか、本当に手紙が着くころに、ここに来るとは。まぁ…ここじゃあ、あれだし…家に入れ」
「おう!」
斗真は懐から取り出した鍵で、玄関を開ける。
仁は近くに置いてあった荷物を持つ。
大きめのリュックサックであり、見たところ大荷物みたいだ。
何が入っているのだろう?
「何か、重そうだな」
「これか?そうだな……寝間着に寝袋、お菓子や飲み物とか、いろいろ入ってるな」
斗真は首を傾げる。
「寝間着や寝袋?」
それは寝る際に、必要な物。
と言うことは、
「今日は斗真の家に泊まる予定だぞ」
どうやら、今日は一晩中、仁と話が出来そうだ。
寝ちまったら、勿体ない。
今夜はオールナイトだ。
斗真は仁を家の居間に招き入れる。
「ここに荷物を置いてくれ」
「分かった」
仁は荷物を置く。
一旦、斗真と仁はテーブルの向かい同士で座る。
取り敢えず、会話の始めは、斗真の街についてだ。
「斗真が住む街……京都と違うな」
「はは…そりゃあ、ド田舎なだもんな」
斗真が住むは長野県は、仁の住む京都に比べれば、遥かに田舎であろう。
なんたって、高い建造物は無く、すぐ目の前に山々の光景が広がっているのだから。
「いやいや、俺の住む京都も田舎だぞ。自然がたくさんあるからな。まぁ…大きな違いと言ったら、寺の数がこっちの方が多い点かな」
それはそうだ。
古い町並みが世界遺産として登録されている京都様だもんな。
長野県民には申し訳ないが、長野県と京都府を比べたら、それこそ月とスッポンだ。
余談だが、仁の実家がある場所は、京都の中でも歴史的建造物は集結する京都市である。
「京都か………俺も、いずれ行きたいな」
斗真は京都に今まで行った事が一度も無い。
本来は旅行を楽しみ性格では無いのだ。
だけど、今はテレビでしか見たことが無い京都特有の町並みを見たい気持ちは、人一倍ある。
見た事も無い物を見たい。
これは異世界で、斗真自身が心身ともに成長したからだと言える。
京都へ思いを馳せると、仁が豪快に斗真の肩を叩く。
「今度来いよ!!俺が案内してやるからさ。八つ橋でも食べようぜ!」
「いいね、それ。余裕があったら、お邪魔しようかな」
余裕があればな。
仁は首を傾げる。
「余裕が無いのか?」
「そうだな、手紙でも書いたが、今は俺…退魔士やっているからさ。迂闊に県外に出れないと言うか。俺と同じ退魔士のバディ…………柊楓って言うんだけど」
「柊楓………………ああ!斗真の手紙にあった学校一の美少女か。確か、その子は鬼の妖怪だったか」
「うん。その楓は、まだちょっと戦闘経験が浅くて。そもそも、楓から自分のサポート役を頼まれて、俺も退魔士になったんだ。楓を一人残して遠出は難しいかな」
楓と共にやっている退魔士は、主に仕事が妖獣の退治と妖怪の取り締まりであり、異世界に帰ってきてから退魔士になり、今までいくつかの仕事をやってきた。
戦って来た妖獣は、強さはピンキリであり、玉石混交ではある。
だが、妖獣によっては異世界での魔物と比べて、遜色の無い強さを有している。
特に、この前戦った土蜘蛛や大入道などは、楓一人で倒すのは難しかった。
斗真が京都に行っている間に、あれと同じレベルの妖獣が出没しないとは限らない。
もし、現れれば、今の楓では厳しい。
「バディに、サポートか。何かそれ、異世界の斗真とティアナの関係に似ているな」
「………………そうだな」
不意に、ティアナの事を思い出される。
斗真は、仁にバレないように顔を若干俯かせる。
寂しいからだ。
ティアナの事は大切な人であると、今でも持っている。
だけど、異世界にいるティアナには、もう…会えないんだ。
「ああ、そうだ!退魔士と言えば、手紙には書いていなかったな!」
仁が、気が付いたように手を叩く。
「ん?何を?」
斗真は撃つ向きがちの顔を上げ、仁を見る。
仁は勢いよく言い出す。
「俺も退魔士になったたんだ!」
「………………へ?」
斗真は目を見開く。
それは初耳であった。
「どういう事だ?手紙には、退魔士に会ったと書いてあったけど。まさか、俺と同じく退魔士自体になってたなんて」
「ああ、俺が退魔士になった経緯だけど………………」
そこで、仁は異世界から帰ってきてから、この半月の間の出来事を話し出す。




