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『退魔鬼譚』 ~妖怪学校一の美少女と異世界帰りの勇者は怪異退治が任務である~  作者: 保志真佐
第三章 河童と土蜘蛛

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032統領




 河童によるキュウリ窃盗事件からの、土蜘蛛の退治と、楓以外の鬼族との遭遇した日の次の日。


 斗真と楓は他の鬼族の動向も注意しつつも、いつも通り学校に通っていた。


 「おはよ~!かえちん!」

 「ええ、おはよう」


 五月が元気いっぱいで、挨拶してきたので、楓も返す。


 けれど、五月は楓の体を見て、首を傾げる。


 「あれれ?どうしたの、かえちん?顔とか、腕に絆創膏がいっぱい張ってて、喧嘩好きのヤンキーみたい」


 これは昨日の大入道との戦いで、楓が負った傷によるものだ。

 斗真の「供魔息吹」である程度回復したとはいえ、まだ体の至る所には、多くの傷が残っている。


 言われた楓は体の絆創膏に触れる。


 「ああ、これね。ちょっと昨日、大物と戦ってね」

 「大物?ああ…かえちん、退魔士だもんね。もう…………斗真全然役に立ってないじゃない」


 五月は少し怒った様子で斗真を見る。


 「何故、俺に?」

 「だって~、かえちんがこんなに傷だらけなのに、斗真は見たところ傷何てないじゃん。かえちんの後ろで、戦いを見ていただけじゃないの?!」

 「い、いや!斗真は一緒に戦ったよ。ただ、私がドジちゃって。…………それに斗真がいたから、この程度の傷で済んだの!」


 楓は必死に弁明してくれる。


 しかし、それによって、また斗真との口付けを思い出したのか、顔が赤い。


 「かえちん、顔赤いけど。何かあったの?」

 「ううん!ほ、本当に何もない!」


 慌てて首を振る楓に、五月はキョトンとするばかりだった。









 一方、別の場所では、


 「それは真か、癪座?」

 「はい、統領。あの娘、俺達と同じく鬼族でした」


 そこは何処かにある広い屋敷の大きな部屋の中であった。

 城と見まがうほどの広い屋敷の中でも、特段広い部屋。


 その部屋の中には、「癪座」と呼ばれる人物がいた。

 その人物の頭には、鬼族特有の角があった。


 もし、彼を楓か斗真が彼を見たら、こう言っただろう。


 この前会った鬼族の男だと。


 そして、大きな部屋には、もう一つの人物がいた。

 鬼族の男を癪座と呼んだ人物。


 その人物は部屋の奥の壁に掛け軸が飾られている場所にいた。

 上座に当たる位置に、それはそれは大きな男が座っていた。


 それも、ただの男ではない。

 その男には頭に角があった。


 つまり、鬼族である。


 座っているが、立ち上がれば恐らく身長は三メートルを優に超えるであろう体格を持ち、身体からは常に圧倒的な魔力を開放している。

 その魔力の保有量は、楓と斗真が戦った癪座と呼ばれる鬼族よりも大きく、鬼族自身の楓よりも大きかった。


 楓の魔力量は通常の魔族並み。

 すなわち、巨大な鬼族の男は、通常の魔族以上の魔力を持ち合わせている。


 巨大な鬼族は特段怒ってはいないし、威嚇もしていない。

 だが、目の前に座っている癪座は終始緊張していた。


 怖いのだ。

 上座に座る鬼族の男は、その気が無くても自身など簡単に捻りつぶせると分かってからだ。


 巨大な鬼族の男の頭に生えている角は楓同様に、二本であるが、左右の角の大きさが大小と分かれており、歪な形をしており、異様な雰囲気を醸していた。


 男のそばには、これまた巨大な金棒が鎮座してあった。


 一目で業物と分かる。

 恐らく、上座にいる鬼族の獲物である。


 到底、人が使いことが出来ない鋭い棘が無数に生えた漆黒の金棒。


 しかも、金棒からも強力な魔力が発せられる。

 楓の『飛翔草履』や斗真の『花咲の弓』と同じ妖具である。


 鬼に金棒と言うが、この大きな鬼が大きな金棒を使ったら、一体強さは如何ほどになるのか。


 上座に座っている鬼族の男に対して、鬼族の男は姿勢を低くして、彼を「統領」と呼び、報告をしていた。


 「その鬼族は退魔士と言ったのだな?」

 「はい、そう…おっしゃっていました」

 「鬼族で退魔士など、何とまぁ…」


 統領と呼ばれた鬼族の男は、小さく笑う。


 鬼族は、かつて日本中を征服しようとした妖怪。

 その妖怪が、妖獣を退治する退魔士をやっているのだ。


 その事実が統領と呼ばれた鬼族の男にとっては、酷く滑稽で皮肉に感じたのだろう。


 「その鬼族は、お前一人では苦戦するほどの強さだったと?」


 それを聞いた鬼族の男は苦々しい顔を浮かべる。

 彼にとっては、自身より若い同族、しかも女に負けたことが屈辱的だったのか。


 「鬼族の小娘は大したことは無いです。ただ………一緒に居た弓使いの餓鬼が少々厄介なだけであり…………」


 癪座は、そう吐き捨てる。

 口が裂けても負けたとは言いたくないらしい。


 そんな癪座の負け惜しみを、統領と呼ばれた鬼族の男は見抜いていたが、特に指摘することは無かった。

 彼にとっては、その同族である鬼族の少女が気になるからだ。


 上座の鬼族は、腕を組んで考え込む。


 「我ら以外の鬼族。しかも、赤い髪」


 上座の鬼族は、癪座にギリギリ聞こえないぐらいの呟くをする。


 数分間、考え込んだ後、


 「報告は聞いた。下がって良い」

 「は!」


 退出を促され、癪座はお面を被り、そそくさと部屋から出る。


 後に残ったのは、統領のみ。


 「……………………赤い髪を持った鬼族。……………まさか、”あの一族”か?」


 統領の疑問に答える者は誰一人として、いなかった。









 その日の学校の授業が終わり、斗真は帰路に着いていた。


 斗真と楓は、また五月に遊びに誘われたが、楓の方は身体にはまだ大入道との傷が残っているので、今日は安静にしたいという事で断り、斗真も新しく手に入ったスキル〈未来眼〉を試したいので、放課後になったら、早めに帰った。


 そして、斗真が家に帰って、扉を鍵で開け、中に入ろうとした際、ふと…扉のそばにある郵便受けが目に入った。


 そうだ!

 すっかり忘れていた。


 もしかしたら、来ているかもしれない。


 ()()()()()()手紙が!


 ずっと前に異世界での記憶を頼りに、仁と雫と優香に向けて、手紙を出したのだ。


 異世界では、斗真は仁たちと元の世界に戻ったら、手紙を出し合って、無事に戻ってこれたかどうかを連絡すると決めていた。


 だから、斗真は手紙を仁たちに出した日から、頻繁に郵便受けに仁たちからの手紙が来ていないか確認していた。


 だけど、最近、退魔士になったことで妖獣や妖怪の件で、毎日の郵便受けチェックを怠っていた。


 斗真は郵便受けを覗く。


 中には、広告やチラシが入っていた。

 けれど、それに混じって、


 「手紙!」


 白い封筒が入っていた。


 斗真は急いで、取り出し、封筒の表面を読む。


 表面には、「斗真へ、仁より」と書いてあった。


 「仁!元の世界に帰ってこれたんだな!」


 仁からの手紙だった。

 斗真は大喜びをする。


 斗真が元の世界に帰ってから、おおよそ半月経って、仲間の無事を確認する。




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