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『退魔鬼譚』 ~妖怪学校一の美少女と異世界帰りの勇者は怪異退治が任務である~  作者: 保志真佐
第三章 河童と土蜘蛛

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029大入道




 お面の男は、何と角があり、楓と同じく『鬼族』であったのだ。


 この事実に、斗真は衝撃を受けるが、楓はもっと衝撃を受けていた。


 「鬼族!私の他に!…………やっぱり、いたんだ!!」


 楓の顔は同族の鬼族に逢えた嬉しさなどは無く、苦虫を噛み潰したかのような顔をしていた。


 兎に角、お面の男の正体が鬼族と分かり、斗真と楓はすぐに動けずにいた


 「まったく!!お面を外しやがって!!」


 お面の男…鬼族の男は怒気を見せて、落ちたお面を瞬時に被り直す。


 「あの男の弓は異常だな………悔しいが、ここは撤退か」


 鬼族の男が突然、洞窟の入り口に走り出す。


 「待って!」

 「追うか!」


 惚けていた斗真と楓であったが、逃げ出した鬼族の男を追う。


 鬼族の男が洞窟から出て、斗真と楓も出た。


 「来るな!我を支える大地の元。〈土矢〉」


 鬼族の男は追ってくる二人に向かって、土の矢を放つ。


 「飛翔草履!」

 「しっ!」


 楓は履いている妖具『飛翔草履』を飛ばし、土の矢を払い落とし、斗真は素早く複数の矢を弓に番え、土の矢とぶつけて、相殺する。


 「くそ!”コイツ”を使うか!」


 勢いを落とさずに追ってくる斗真と楓に、焦りを覚えた鬼族の男は懐を漁る。

 取り出したのは、和紙で出来た円筒上の物…巻物であった。


 鬼族の男は、その巻物を端を引っ張り、広げる。


 そうして巻物に広げると、表紙にはお坊さんのような見た目の何かが書かれてあった。


 「〈解除〉」


 鬼族の男がそのように唱えると。


 ボン!

 巻物から大きな音が聞こえ、魔力が溢れるのを感じる。


 その際、ピン!

 柊の頭の上にある一本の緋色の髪が、アンテナのように立った。


 これは楓の能力の一つである〈妖怪センス〉。

 妖獣が近くにいると、反応する。


 斗真と楓が鬼族の男を追っていた足を止める。


 次の瞬間、鬼族の男が広げた巻物から大きな腕が出てくる。

 それは巨大な左腕であった、


 出てきた腕は左腕だけでなく、右腕も巻物から飛び出す。

 さらには、大きな右足に、左足、胴体と。


 見る見るうちに巻物から、見上げるほど大きなお坊さんのような怪物が現れたのだ。

 大きさは大体10メートルほど。

 頭部にある目は泥田坊のように一つ目であった。


 感じる魔力からして、恐らくは妖獣。


 「あれは大入道!!」


 楓は目の前の妖獣を大入道と言った。


 大入道…それは名称の通り大きな僧という意味である。

 大きな体をした僧であるイメージが強いが、日本の地域によっては、人間より少し大きい程度であったり、山よりも大きかったり、狐や狸が化けた物であるとも言われている。


 恐らく、鬼族の男が出した巻物は、妖獣を出すための何らかの道具であろう。


 ここで、斗真が思ったのは、


 「まるで……異世界のサイクロプスみたいだな」


 妖獣である大入道に関して、斗真は異世界で見覚えがあった。


 それはサイクロプスという魔物。

 一つ目の巨人のような化け物。


 物凄い怪力に、元初な体を持つ。

 斗真がいた異世界では、かなり強い部類の魔物である。


 「ウガアアアア!!!」


 大入道は雄たけびを上げながら、大きな腕を振り上げ、そして…斗真と楓がいる場所目掛けて振り下ろす。


 ドカーン!

 斗真と楓は瞬時に避けたが、大入道の腕が振り下ろされた場所は大きく陥没していた。


 あんなものを一発でも食らったら一溜りも無い。


 「今の内だな」


 大入道が斗真と楓を襲いだしたのを見た鬼族の男は、この隙に逃げる。


 「待て!」


 斗真が大入道を無理して、追おうとするが、


 「斗真!追わなくていいわ!今はこの大入道をどうにかしましょう!!」


 楓が静止の言葉を投げ、大入道を退治しようと言う。

 確かに、コイツを放って置いたら、大変そうだ。


 「分かった、コイツを退治しよう!」


 斗真は鬼族の男を追うのを止めて、矢を弓に番え、矢先を大入道に向ける。


 一方の楓は人差し指と中指を立て、印を結ぶ。


 「己こそ己の道なり。己の道を捨て、他者の道を進むか。自己を理解する己こそ、まこと得難き己である。己が悪の道の進めば…………」


 楓は〈結界〉を発動するための長い詠唱を言い始める。

 その間に楓は無謀なため、援護せねば。


 シュ!シュ!シュ!

 斗真は三連射の矢を放つ。


 矢は狙い違わず、大入道の胸、右腕、左腕に命中する。


 けれど、


 「グアア!」


 大入道は怯みつつ後退するが、それだけであった。

 目に見えるダメージは見受けられない。


 土蜘蛛の時は矢が刺さったのだが、大入道の場合は矢が弾かれた。

 体が土蜘蛛よりも頑丈である。


 ここは、鬼族の男の〈結界〉を破った威力と貫通力を高めた「魔剛射」を使うべきか。


 そう思って、斗真は新しい矢を番え、魔力を弓と矢、腕に集中させる。


 だが、


 「ウガアアア!!」


 そうはさせんと言わんばかりに、大入道は大きな右足を上げ、上げた足を斗真の上に持って行く。

 斗真の体に影が差す。


 この次の行動など決まっている。


 ドスン!

 右足が斗真がいた場所を踏み潰す。


 「斗真!!」


 楓が心配して、大声を掛ける。

 楓の眼には、斗真が踏み潰されたように見えた。


 大入道が右足で斗真がいた場所を踏み潰したのと同時に、〈結界〉の構築が終了した。


 大入道を取り囲むように、大きな魔力の半球状の壁が作られる。

 これで大入道は〈結界〉を破壊しない限り、外には出られない。


 「〈緋槍〉」


 楓は髪の毛から〈緋槍〉を取り出し、大入道の右足に駆け込む。


 「はっ!」


 右足に向かって、〈緋槍〉を突く。


 けれど、


 「硬い!」


 〈緋槍〉は大入道の頑丈さに弾かれる。


 「〈緋針〉」


 ならばと、複数の〈緋針〉を大入道の一つ目に投げるが、


 「アガアア?!」


 泥田坊のように一つ目が弱点かと思いきや、大入道は怯みつつも大したダメージには、ならなかった。

 大入道は瞬きを何度もしながらも、目下にいる楓を睨む。


 両腕を頭上まで振り上げ、


 「ウガガガ!!」


 両腕を振り下ろす。

 楓はすぐさま大きく後ろに飛ぶ。


 数瞬後、楓が元々いた場所に大入道の両腕の振り下ろし攻撃が繰り出される。

 それで終わりではなく、何度も大入道は楓目掛けて、両腕を上げては振り下ろしていた。


 楓は回避に全集中を使い、何とか攻撃を避け続けるが、次第に体力が消耗されていく。


 「はぁ…はぁ…」


 額に大粒の汗が滴る。


 明らかに体力の消耗で回避に鋭さが無くなりつつあった。

 このままでは、いずれ体力が無くなり、やられてしまう。


 楓がこの後の流れを予想する。


 その予想は思ったほど、早く訪れた。


 「ウガアアア!!」


 一際大きな振り下ろしが、楓がいる場所に振り下ろされる。


 楓は残った体力を振り絞って、何とか回避に成功する。


 だが、


 「うう?!」


 大入道の振り下ろしによって、地面の土が飛び散る。

 その飛び散った土の一部が楓の目の中に入る。


 楓は目を閉じ、目に入った土を取ろうとする。


 慌てて、土を取ろうとしたせいか、覚束なく足を後ろに下げてしまい、


 「っ?!」


 躓いてしまい、地面へ背中を打つ形で転んでしまう。


 楓はどうにか、目に入った土を取り除く。

 楓の視界がクリアになる。


 しかし、


 「あ」


 楓の目に入ったのは、大入道が転んだ楓目掛けて、振り下ろした両腕の光景であった。


 ドガン!

 とうとう、大入道の振り下ろしが楓に命中する。


 「がは?!」


 楓はとんでもない衝撃と痛みを全身に感じる。


 たった一回の振り下ろしなのに、気絶しそうなほどの打撃を食らわせられたのだ。

 楓は瞬時に起き上がることも出来なかった。


 それからというもの、大入道は好機を捉えたのか、動けない楓に何度も拳の振り下ろしを食らわす。

 振り下ろされるたびに、楓は声にならない悲鳴を上げる。


 連続の振り下ろしで、舞い上がる土煙。


 計10回以上の振り下ろしが楓に降りかかった。


 「うう…………」


 大入道の攻撃が一旦止んだ後には、地面に横たわり、口から血を流した楓が倒れていた。


 服も体全体もボロボロになり、死んだカエルのように体をピクピクと痙攣させていた。


 痛みで起き上がるどころか、指を動かすこともままならかった。

 まさに絶対絶命である。




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