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『退魔鬼譚』 ~妖怪学校一の美少女と異世界帰りの勇者は怪異退治が任務である~  作者: 保志真佐
第二章 口裂け女と猫又

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幕間 異世界に召喚されて③




 それは斗真が、異世界に召喚された時の話。


 召喚されてから二か月の期間、勇者として訓練を積んだ斗真、仁、雫、優香の四人が初めての実戦であるゴブリン討伐に出る際の出来事である。




 今、斗真たちがいるのは、オーロラ王国の王都から少し離れた森の中の洞窟内。

 そこは、主に最弱の魔物として知られるゴブリンが棲家としている場所。


 洞窟を入って、早々に斗真たちは複数体のゴブリンと接敵する。


 「はああ!!」


 先頭にいる赤髪のイケメンである御剣仁(みつるぎじん)が、剣を振り上げるゴブリンに斬りかかる。


 剣を騎士たちから学んで、まだ二か月しか経っていないが、その剣筋は目を見張るものであった。


 一撃でゴブリンは絶命する。


 「巻き起こる風よ、切り裂く鎌鼬となれ。〈風刃〉」


 仁の後ろにいる神宮雫(じんぐうしずく)が詠唱をして、風の魔法を発動する。


 半透明の風のカッターが勢いよく飛び、ゴブリンを切り裂く。

 〈風刃〉はしっかりとゴブリンの首の部分を狙っていた。


 首を掻き切られたゴブリンが、血を流し倒れる。


 王女であるティアナ曰く、魔法を全く訓練していない状態から二か月で、あそこまで魔法をコントロール出来るようになるのは、かなりの魔法の才らしい。


 「うっ?!」


 ここで、前衛をしていた仁がゴブリンが振るった棍棒で、腕を怪我をする。


 「癒しを必要とする汝、光の加護を持って、その傷を治せ。〈ヒール〉」


 空かさず四ノ宮優香(しのみやゆうか)が、回復魔法をかける。

 すぐに仁の傷が治る。


 これもティアナ曰く、異世界に来て二か月で、通常の魔法よりも習得難易度が高い回復魔法である〈ヒール〉を行使できるのは、相当な才能が無いと出来ないそうだ。


 前衛の攻撃役は仁、後衛の攻撃役に雫、回復役で優香。


 このように、仁と雫と優香には、しっかりと役割分担がある。

 今のところ、隙のない陣形である。


 ………一人を除いて。


 「うわっ?!」


 仁たちの後方…殿をしていた斗真に、棍棒を持ったゴブリンが殴りかかる。


 斗真は慌てながらも、何とか持っている剣でゴブリンの棍棒を受け取る。

 重みが剣越しに伝わってくる。


 斗真は腕に力を入れて、ゴブリンの棍棒を弾き返し、お返しと言わんばかりにゴブリンの胸を斬りつける。


 しかし、斬りつけが浅かった。

 怖気づいた斗真が無意識で、踏み込みを浅くしたのだ。


 いくらゴブリンが最弱の魔物とは言え、胸を少し斬りつけられた程度では、死なない。


 斬りつけられたゴブリンは反撃に、また棍棒を振るう。


 それから斗真は距離を取ったり、防御しつつも、何とかゴブリン一体を倒す。


 「ふぅ…」


 一体倒しただけなのに、疲労が込み上げてくる。


 斗真が膝に手を付いていると、


 「斗真様!」


 斗真の横から警告の声を聞こえる。


 警告の声と共に、繰り出される目に留まらぬ槍の刺突。


 その刺突は、膝をついて気を抜いていた斗真の後ろから襲い掛かろうとしていたゴブリンの胸を貫いた。


 「油断なさらぬように」

 「ご、ごめん!」


 槍を繰り出したのは、斗真たちを異世界に召喚したティアナであった。


 数日前に、模擬戦で仁を倒しただけに、見事な槍裁きである。

 見事な金色の髪を携えて戦う姿は、まさに戦場の乙女。


 斗真たちは先頭を仁において、魔法使いの雫、治癒士の優香、殿の斗真とティアナの順で列を組んでいる。


 ティアナも殿だが、ぶっちゃけ斗真の護衛である。


 騎士たちから、まだ実戦は早いと言われた斗真であったが、槍の名手であるティアナが斗真とバディを組むことで実戦の参加を認められた。


 今のところ、ティアナの守られてばかりである。


 斗真は奥歯を噛みしめる。

 いくらティアナは、自身よりも三つ年上とは言え、女性に守られることに悔しさが無い訳では無い。


 なんとか、斗真は息を切らしながら、剣を構える。


 ティアナが言った通り、ゴブリンを一体倒したとはいえ、まだ洞窟内にはゴブリンが何体もいる。

 洞窟内は狭くて暗く、松明の明かりが無いと数メートル先も碌に見えない。


 油断して、背後や側面から攻撃を受けたら大変だ。


 因みに、この時の斗真はまだ〈万能眼〉の〈魔力眼〉を使いこなせていなく、洞窟にいるゴブリンの正確な位置が分からなかった。


 せめて、みんなの足を引っ張らないようにしないと。


 「心配すんな、斗真!俺が付いてる!」

 「そうね。私たちで切り抜けましょう」

 「うう…眠いけど、回復は任せて」


 仁と雫と優香は、斗真に気を使ってか、自分たちがいるから心配するなと言う。


 「あ、ありがとう。みんな…………」


 彼らは、とても優しかった。

 未だに目立った成長を見せていない斗真を気遣うほど。


 斗真は、これ以上に自身を気遣ってくれる者は元の世界で果たしていたのか疑問である。


 恐らく、これが友達とも違う”仲間”という物なのだろう。


 そう考えたら、仲間のためにも頑張らないと。

 斗真は人知れず、剣を握る手に力を込める。




 結論を言えば、その後は何かトラブルが起こることもなく、洞窟内のゴブリンを倒すことが出来た。

 斗真も何とか、あれから二体のゴブリンを倒した。


 初の実戦経験としては、上出来な方であろう。


 洞窟内のゴブリンを掃討した訳だが、洞窟の奥に思わぬものを発見する。


 「物がたくさんあるな」


 仁が言う通り、洞窟の奥の地面には、多くの物が乱雑して落ちていた。


 剣や斧、人が着る服や靴、縄や鍵と言った小道具など、人が使う物がたくさん。


 「これはゴブリンが集めた物ですね。ゴブリンは村を襲う時に、食料略奪すると同時に、人が使っている物を持ち帰る習性があります。それは、こうした洞窟の奥に貯めておくのです。ゴブリンにとって、人が使う物は珍しいのか」


 ティアナが補足する。

 どうやら、これらはゴブリンが人の村から持ち帰った物らしい。


 ティアナも集められた物をよく見ようと、前に進む。


 その時、


 「きゃ?!」


 ティアナは地面に落ちていた大きめの石に足を躓かせる。

 その拍子に地面に倒れそうになる。


 斗真は急いで、ティアナの体を支える。


 だが、ティアナの体を支えたことで斗真の体制も崩れ、結局斗真も倒れることになる。


 バン!

 斗真がティアナの体を支えようとしたためか、斗真を下敷きにして、二人共倒れる形になった。


 気づけば、目と鼻の先にティアナの美しい顔があった。


 とても綺麗だ。

 しかも、良い香りが斗真の鼻腔に侵入してくる。


 途端に、斗真の鼓動が早くなる。


 「す、すみません!!」

 「い、いえ!お気になさらず!」


 斗真とティアナは急いで立ち上がり、離れる。


 カラン。

 その際に、斗真の足に何かが当たる。


 斗真は足に当たったものを見て、拾い上げる。


 「…………これは弓?」


 仁が拾ったものは、弓であった。

 弓があった地面には、弓と合わせて数本の矢もあった。


 これもゴブリンが村から奪った物なのか。


 弓自体は、竹のような柔軟性のある木材を使い、丈夫な糸で張ってある。


 しかし、お世辞にも良い出来とは言えない。

 村人が狩りで使う簡易的な弓だ。


 普通は、ここに置き去りのするのだが、何故か斗真には、手に持った弓を捨てる気になれなかった。


 斗真は剣を腰に刺して、左手で弓を持ち、右手で弦を引っ張ってみる。


 ビュン。

 弦がしなる音が洞窟内に響く。


 何か…………良い感じ。


 「斗真様、その弓が気になりますか?」

 「え?そう……ですね」


 斗真の横からティアナも、弓を見ていた。


 「気になるのでしたら、そのまま持ち帰りますか?」

 「良いのですか?」

 「はい。魔物討伐を生業にしている冒険者では、魔物が集めた物は基本的に魔物を倒した者が好きして良い決まりです。斗真様には、持ち帰る資格があります」

 「そ、それじゃあ…貰おうかな」


 こうして、斗真はゴブリンの住処で拾った弓を持ち帰ることになった。









 これが後に、斗真が「オーロラ王国最高の弓士」と呼ばれる始まりであったとは、本人も知らなかった。




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