幕間 異世界に召喚されて①
今日、明日は異世界の話です。
それは斗真が、異世界に召喚された時の話。
王女の召喚魔法で、斗真、仁、雫、優香の四人が元の世界から召喚された際の出来事である。
時間は夕暮れ時。
場所は何かと田舎扱いされる長野県。
それも辺りに山々が見える片田舎の街。
その街の山沿いの道を黒髪の平凡な見た目の男子生徒…星原斗真が歩いていた。
彼は街に一つだけある高校…隗隗高校からの帰り道を歩いていた。
高校に入学して一か月は経つが、今だに友達らしい友達は殆ど出来なかった。
持ち前の陰キャ属性でコミュ力は無く、放課後になっても友達と遊ぶことが無いため、一人で帰り道を歩いていたのだ。
今日も家に帰って、ゲームをして、漫画を読んで寝て、また登校する。
これが高校になってからの斗真の日常である。
何の起伏も無い退屈な日常。
そんな日常が突然壊される。
「え?!」
帰り道の最中、斗真は突如…謎の光に包み込まれたのだ。
斗真の驚きをよそに、光はどんどん強まり、次第に身も開けられない程になる。
そして、何らかの浮遊感に襲われた後、光は無くなる。
斗真は恐る恐る目を開ける。
「な、な、何だ?!」
目に移った光景を把握できず、斗真は混乱する。
当然である。
さっきまで高校からの帰り道を一人で歩いていたのに、謎の光に包まれたと思ったら、気づけば、全く知らない場所にいたのだから。
そこには、さっきまで見ていた片田舎の光景が無くなっており、代わりに…大きな空間に綺麗なじゅうたんや見事なシャンデリア、少し高い場所に大きくて豪華な椅子。
場所は何だか、テレビでよく目にする玉座の間に似ている。
斗真に近くには、斗真と同じく学生服を着た人が三人。
燃えるような赤い髪の高身長なイケメン。
高い知性を兼ね備えてそうな青い髪の美少女。
気だるげに顔だが、幼い可愛さを持ち合わせた緑髪の美少女。
三人共、斗真は知らないが、同じ学生と思われる。
「一体、何がどうなってる?!」
「ここは何処なのでしょう?」
「何かぁ……知らない場所にいる。眠い…………」
三人も混乱していた。
その周囲には、鎧を着た人たちやメイドみたいな人たち。
そして豪華な椅子に座った金色の冠を被り、同じ金髪をオールバックにした男……まるで王様。
「勇者様!よくぞ、おいでくださいました!」
最後に、斗真の最も近くにいる豪華なドレスに身を包んだ金色の髪をした美女。
斗真よりも少し歳が上そうな感じの彼女は、斗真を含めた学生四人に向かって、万遍の笑みを浮かべる。
大輪の花が咲いたと錯覚する笑顔。
それを見た斗真は内心、心臓が跳ね上がりそうな程、ドキドキした。
美女は説明をする。
「ここは「オーロラ王国」の玉座の間。皆さんは、オーロラ王国第一王女である私…ティアナが召喚しました。皆さんには、これから勇者となって、魔族たちを倒して欲しく…この世界に召喚しました」
美女……王女による説明で、混乱していた頭がさらに混乱する。
全く言っている意味が分からなかったからだ。
それから、斗真たちには長い時間を掛けて、詳細な説明が為された。
情報を簡単に整理すると、ここは斗真がいた現実の世界とは違う別の世界……所謂、異世界。
その異世界の国の一つであるオーロラ王国の王都の玉座の間。
斗真と、他の学生である御剣仁、神宮雫、四ノ宮優香は、召喚されたのだ。
召喚された斗真たちは、勇者の力を持っており、膨大な魔力とスキルを持ち合わせている。
まさに、ラノベの王道展開である異世界勇者召喚。
勇者として召喚した理由は、これもラノベの王道展開である『魔族』との戦いのため。
オーロラ王国の西の僻地には、魔族と言う強力な魔力を保有した敵対種族がいるらしい。
その魔族は人に攻撃的であり、人よりも遥かに強い。
だから、魔族たちを倒すために、強い力を持った勇者を召喚したのだ。
「よし!勇者か何か分からないが、やってやるぞ!」
「この国が私たちの助けを求めているのなら、それに応えるまで」
「う~~、めんどぅくさいけど、仕方がないから…………やる」
斗真以外の召喚された三人はやる気満々だった。
斗真はと言うと、
「……俺も…………やります」
三人に従うしかなかった。
別に、三人に同調圧力を掛けられた訳ではない。
後に分かるが、仁も、雫も、優香も、とても良い奴で、人格に優れていたのだ。
異世界から帰った際の斗真なら、胸を張って言える……彼ら三人は心からの友達だと。
ただ、召喚された当初の斗真は、絵に描いたような陰キャであり、どう見ても陽キャにしか見えない三人の意見に反対することは出来なかった。
かくして、斗真は異世界で勇者となって、魔族と戦うことになったのだ。
異世界召喚されてから、二ヶ月が経った。
カン!
オーロラ王国の王城の庭で響く軽い音。
御剣仁が騎士との模擬戦で、相手の木剣を弾いた音である。
「流石、仁様です!もう私など相手になりません!」
「いえ、皆さんの教えが良いからです。俺なんて、まだまだ」
「ご謙遜を」
感嘆する騎士に対し、赤髪のイケメンである仁が謙遜を言う。
まだまだ何て言うが、実際に仁の剣術の才能は目を見張るものである。
王都を守る騎士に剣で勝つほどなのだから。
一方、斗真は、
「斗真様、踏み込みが浅いです。剣は腕だけでなく、腰を使って振ります」
「は、はい!」
相対する騎士の指導に、斗真は何とか返事をする。
斗真は持っている木剣を騎士が持つ木剣に叩くが、剣に重みが全くなく、騎士は全く揺るぐ気配がない。
見ての通り、斗真に剣の才能はこれっぽちも無かった。
今、斗真がやっているのは、魔力によって肉体強化をせずに、純粋な剣術を身に着ける訓練。
斗真たち勇者は強力な魔力とスキルを持っているが、いきなり実戦に出す訳にもいかず、こうして訓練を受けて、しっかりとした技術をまず身に着けるのだ。
異世界に来て、斗真と仁は騎士たちから剣術の手解きを受けて、二か月しか経っていないが、もうすでに斗真と仁との間には、剣術に置いて大きな差があった。
斗真と仁は剣術の訓練を受けてるが、雫と優香は本人たちが持つスキルの関係上、魔法の訓練を受けているので、二人は別の場所にいる。
仁のスキルは前衛向きなので、剣術の訓練を受けているという訳だ。
しかし、それを考えたら、自分のスキルである〈万能眼〉であり、決して前衛向きとは言えない。
そう思いつつも、斗真は何とか腕を動かし、木剣を振るう。
暫く、騎士からの剣術の手解きを受け、休憩の時間となった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
斗真は地面に座り込み、大粒の汗をかく。
腕が痺れて、木剣が持てない。
今日もそこまで剣術に上達は見られなかった。
斗真は、元の世界では帰宅部。
碌に運動をしていなかったので、二か月…剣の手解きを受けただけでは、上手くならなかった。
体力も全然である。
「ふ!ふ!ふ!」
一方の仁は休憩の時間なのに、真面目に素振りをしていた。
優れた体力に、洗練された剣筋。
流石は、元の世界で小さい頃から剣道の道場で稽古しているだけはある。
しかも、その道場では大将を務めているそうだ。
高校では、勿論クラスの委員長。
非の打ち所がない陽キャ。
因みに、仁の元の世界での生まれも育ちも京都。
いつもは標準語で話してくれるが、偶に京都弁が出てくることがある。
これからは仁をリーダーとして、斗真たち勇者は動くことになるだろう。
せめて、みんなの足を引っ張らないように頑張らないと。
そう思ったのも束の間、斗真は少しばかり不安を感じる。
このまま自身は本当に強くなれるのか。
本当に魔族なんかと戦えるのか。
感じた不安から、斗真が眉根を寄せている時、
「斗真様」
「へ?」
突然、上から鈴の鳴るような声が掛けられる。
斗真が慌てて見ると、軽装をした長い金髪を持った美しい女性…王女がいた。




