010-2手紙
少し短いです。
『仁へ
拝啓
異世界から帰ってきてから、いかがお過ごしでしょうか。
そちらは無事に元の世界へ帰ってこれましたか。
こちらは何の問題もなく帰ってこれました。
あれ?
やっぱり、この最初の挨拶可笑しいよね?
一通り、時候の挨拶を調べたけど、異世界から帰った人向けの物が見つからなかったよ。
当たり前か。
それはそうと、俺は元の世界である長野県に帰ってこれたよ。
王女様の言っていた通り、こっちに帰っても時間は経っていないし、俺の体も異世界に来る時の姿のままだった。
そうだ。王女様と言えば、元の世界に帰る前に、俺たち勇者の力が元の世界でも使えると言っていたけど、本当に使えたよ。
魔力も使えるし、スキルも支障なく使える。
こんなの元の世界で使ったら、オリンピック金メダル採れちゃうな。
いっそ、これからはオリンピック選手を目指して……………いや、それは流石に駄目か。
こういう大事な事はもっと早くいって欲しかった。
そうそう、何の問題もなく帰ってこれた行ったけど、少し語弊がある。
俺は妖怪に会ったんだ。
そう…あの妖怪。
元の世界には、妖怪がいるんだよ。
冗談を言っているみたいに聞こえるけど、本当に妖怪がいるんだよ。
後、異世界の魔物みたいな妖獣って奴もいて、戦ったよ。
こっちの世界でも戦うことになるとは。
俺たちみたいな魔力を持った人とかじゃないと、妖怪や妖獣は基本的に見えないらしいけど。
しかも、俺の通っている高校って、普通の高校ではなくて、妖怪が集まる妖怪学校だった。
異世界に来る前の俺は周りに妖怪がいるのも知らずに、高校に通っていたことになる。
しかも、俺が最初に会った妖怪が、妖怪学校一の美少女だったんだよな。
しかも、鬼だった。
雫と優香にも、手紙を出すけど、いずれ四人でまた集まりたい。
それまで健康でいてくれ。
斗真より』
「ふぅ……」
朝のホームルームの時間前に、手紙を書き終えた斗真は一息つく。
これと似た内容の手紙を、雫と優香の分も書いて、家までの帰りでポストに入れねば。
手紙を出すのは、異世界にいる時に、仁たちと取り決めたことだ。
お互い、異世界に無事に帰ることが出来たのかを確認するためだ。
異世界では、当然ながら電波などないので、スマホでの連絡交換が出来ない。
仁たち三人の住所は、異世界にいる時に何度も聞いた。
記憶した住所が間違っていないのなら、手紙は仁の家に届くはず。
仁たちも元の世界に帰ってこれたのなら、いずれ向こうから手紙が来る。
さて…次は、雫への手紙も書かないと。
斗真は新しい便箋を取り出し、雫当てに手紙を書こうとした時、
「何書いているの?」
「わ?!」
唐突な声掛けに、斗真は驚きの声を上げる。
斗真が声を掛けた方を見ると、緋色の髪が目に入る。
さっき手紙で書いた妖怪学校の美少女である柊楓がいた。
「手紙……書いてるの?」
「あ……そ、そうだな。遠くにいる友達当てにな」
「?………スマホの連絡じゃなくて、手紙なんだ。珍しいね」
ここまで言って、楓はハッとした表情になる。
「そう言えば、私たち連絡交換してなかったね」
「そう言えば、確かに…そうだな」
楓はスマホを取り出す。
「私たちはバディだし、いつでも連絡を取れるようにした方が良いよね」
そうして、楓はスマホの連絡先であるQRコードを見せる。
斗真も自身のスマホを取り出し、QRコードを読み取る。
これで、斗真のスマホに楓の連絡先が追加された。
高校に入ってから、初めての連絡先の交換だ。
しかも、女子の。
それも、妖怪学校一の美少女の。
ピロン。
早速、楓から『よろしく』というメッセージが送られる。
斗真も習って、『よろしく』と送る。
ガラガラガラ。
「よーし。朝のホームルームはじまるぞ」
教室の扉を空けて、先生が入ってきた。
楓は自分の席に戻る。
斗真は一旦、便箋を仕舞う。
雫と優香への手紙は昼休みに書くとするか。
そう思ったが、最後に仁宛の手紙の最後に書き足す。
『追伸
俺は、さっき手紙で書いた妖怪学校一の美少女と友達になったんだ。
しかも、一緒に妖獣や妖怪といった怪異に対処するための、退魔士になることになったんだ』




