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朧火の意志  作者: 布都御魂
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仄かな日常

更新、お待たせしました。m(_ _)mスミマセン


『おはようごさいます、朝のニュースのお時間です。昨日、異空間におけるドイツ・ポーランド間を結ぶ大橋が崩落し、多数の死者と損失を出した事を踏まえ、ドイツ革命派とアメリカの間で電話会談が行われました。』


『ドイツ革命派はアメリカによる軍事侵攻を主張していますが、アメリカはこれに対し、「何の証拠も無いのに言い掛かりをつけるのはやめてもらおう。此方の軍が出撃したという事実は存在しない。」と反論しています。』


『証拠のない糾弾を試みたドイツ革命派に対し、我が国は遺憾の意を示すと共に、早期の戦争終結を求める姿勢を崩さない方針を──』


朝っぱらから戦争に関するニュースは気が滅入るものだが、今回ばかりはその内容が嘘塗れであると知っている為、ある種のコントのようにも見えてしまう。


別段、アメリカは嘘を言っている訳ではない。事実、()()()()()が動いたという事実は存在しないし、アメリカ側にその記録が無いのは確かである。動いたのはアメリカと同盟関係を結んだ戦団"フォートレス"であり、決してアメリカ軍所属の部隊ではない。


まぁ、アメリカ軍から独立した戦団なんだからアメリカ側の戦力じゃね?という意見もあるが、今の革命派が何を言った所で他国からの信用は無いに等しいのでそんな意見は聞き流してしまうのが吉である。


今のドイツ革命派の意見に耳を傾ける連中は、せいぜい数カ国が良いところだ。フランス、ポーランドの2ヶ国に加え、ヨーロッパ地域で結成された『革命義勇軍』や反アメリカを掲げる各地の武装組織が、ドイツ革命派側に付いているというのが今の状況である。


こういう時、反アメリカとして参入しそうな中国は参加しておらず、むしろ現在は親アメリカの立場を宣言している。これはアメリカのブラウン大統領の手腕によるものなのだが、冷戦期以降の中国を知る人が見れば、目を疑って眼球を乾布摩擦し始めるレベルの話である。


そんな中国の外相曰く、「もし我々がアメリカと敵対していたとしても、革命派に与するのだけはしないと言えるだろう。何故あんな勝算が見出だせない国を支持するのかが分からん。」との事で、端から勝算が無いと酷評される悲しい状況になってしまっている。


……まぁ、俺でも支持はしない。ドイツ本国は別段なんてこと無い普通の国だったのだから、そんな国に反旗を翻す連中を支持する方がどうかしてると思う。


朝食の食パンを齧りつつそんな事を考えていると、向かいの席で同じく朝食を食べてるアンジェと目が合う。


もの凄い寝ぼけ眼な上にふわもこパジャマ姿で食パンをモグモグしている姿は、普段の元気ハツラツな雰囲気とは全くの別物であるように思えるが、目が合うや否やふにゃっと笑顔になる辺りは、アンジェだなぁと感じてしまう。


……可愛いかよ。


物騒なニュースとほんわかアンジェで板挟みにされる何とも不思議な状況の中で朝食を終え、キッチンにいるジャックに「ごちそうさま」と声を掛ける。相変わらずグラスを磨き続けているが、最早見慣れたものである。……それはそうとして磨きすぎじゃね?とも思う。


「よぉメルト、今日はどーすんダ?」


グラスを磨きつつ、ジャックが尋ねてくる……磨くの止めろよ…。


「今日は休みだし……商業区にでも行こうかな。」


今日は戦団の仕事は休みであり、拠点内であれば自由行動が許可されている。戦時中であっても休みがあるのは人が運営する組織である以上当然の事であるが、流石に緊急事態に備えて拠点内のみとなっているのは、まぁ納得せざるを得ないと言えるだろう。


……というか戦時中に他国に旅行に行くというのも、それはそれでどうかと思う。


「そーか、気をつけて行けヨ。」


「メルト商業区に行くの?」


テーブルで朝食を食べていたアンジェが、口の中の物を飲み込んだ後に問い掛けてくる。


「行くけど…どうかした?」


「私も行っていーい?」


珍しく、アンジェが付いて来たがっている。普段は一人で商業区に顔を出しては、菓子やぬいぐるみを買って来ているアンジェにしては、とても珍しい問い掛けだった。


「あ、あぁ良いぞ。」


断る理由もないしな。


「ほんと!?オッケー準備してくるー!」


そう言って、アンジェは自室へと駆けていった。やたらテンションが高いが、どうしたのやら…。


「……まぁなんダ、頑張れヨ。」


「?」


よく分からないが、俺も準備しに自室へと向かうのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


準備を終えたアンジェと共に、商業区の中を並んで歩く。今日はオフなので俺もアンジェも私服である。


まぁ最低限、俺はマカロフを腰の後ろに差してあるが、おそらく出番はないだろう……つーかあってたまるか。


「今日はどこ行くの?」


「ん?あぁ、行きつけの武器屋だよ。頼んでた物が出来たらしいから、取りにきたのさ。」


「えーなになに気になる!何作ったの?」


目を輝かせて此方をみるアンジェ。そんな興味を引くレベルの物ではないのだが、本人が楽しそうなので良しとしよう。


「んー、着いてからのお楽しみかな?」


「えー!?余計気になるじゃん!?」


「まぁまぁ、ほら、行くぞ。」


教えろとせがむアンジェの手をとって、行きつけの武器屋まで歩みを進める。もちろん、速すぎないペースでだ。


「………ずるいなぁ。」


賑わう大通りでかき消されてしまい、何て言っているのか良く聞こえなかった。


「ん?何か言ったか?」


「え!?い、いや、なんでもないよっ!は、早く行こっ!!」


やたら焦っているアンジェと共に、馴染みの武器屋へと足を踏み入れる。奥のカウンターでは店主がサーベルの手入れをしており、此方の存在に気づくとサッとサーベルを鞘へと仕舞った。


「おうメルト!頼まれてたモンはできてるぜ!今取って来て……珍しいな、連れがいるのか?」


「あぁ……彼女はアンジェ、戦団に所属する隊員の一人で、俺の先輩だ。」


紹介されたアンジェが手を振りつつ店主に挨拶する。


「そうかい!ま、ゆっくり見てけよ!!」


「はーい!」


店主のいるカウンターに向かい、頼んでいたものを用意して貰う。一度奥の作業場に戻った店主が、小振りな包みを一つ抱えて戻って来る。


「ほらよ、コイツが注文の品だぜ。」


隣で目をキラキラさせるアンジェを尻目に、包みを開いて中を確認する。中から出てきたのは一振りのナイフ、それも戦闘に用いる事を想定されたコンバットナイフであった。


「わぁ!それが頼んでた物?」


「あぁ、そろそろ自前のナイフを使ってみたくてな。」


今までは戦団の備品を使っていたんだが、どうせ使うなら手に馴染む物を使いたいという事で1から作って貰ったのだ。近接武器は攻撃手段であると同時に、武装面における自衛の最終手段だからな…こういう所は妥協したくない。


手にとったナイフは初めて持つ筈にも関わらず手に馴染み、許可を取って少し振ってみると、ナイフそのものの重心が非常に心地良く感じられた。


「……いいナイフだ、ありがとう。」


「おうよ、料金は前払いで貰ってっから、そのまま持ってきな!そんでもって……嬢ちゃんは何見てんだ?」


店主の言葉を聞いてアンジェの方へ振り返ると、アンジェは短剣がずらっと置いてあるコーナーをじーっと眺めていた。


「何か欲しい物でもあったのか?」


「ん?あーいや、私もナイフ新調しよっかなーって思ってたんだけど………お金が…ね?」


お金……とは言ってるが、戦団の給料では足りない金額だったのだろうか?と、アンジェが見ているナイフの金額を見てみると、確かに高いものの給料で買えない程の金額ではない代物であった。


「今月、新作のスイーツと自前の武器の改造にお金使い過ぎちゃってさ……店長さん、これって取り置きできる?」


「そいつは構わねぇが……随分と珍しいナイフを欲しがるもんだなぁ…。」


アンジェが手に持っているナイフは形状がククリナイフに近い物で、先端に向かうに連れて刀身が幅広くなっている特徴的なナイフであり、小振りな物とはいえ分類としてはマチェットに近い物だ。ナイフとして使うには少々癖がある代物だが……アンジェの様子からして、割と気に入った代物だったのだろう。


現にアンジェは何度もナイフの握り心地を確かめながら、財布のお金とにらめっこを続けている。であるならば……


「店主、あのナイフを売ってくれ。」


「ん?お、おうよ、アレは4000(ズール)だな。出せるか?」


俺は財布から4000Ꮓ──金貨4枚分だな──を取り出し、念の為数えてから店主に手渡す。


「ちょ、ちょ、メルト?」


「うし、きっちり4000Ꮓだな。毎度あり!!」


カウンターに持って来ていたククリ状のナイフを鞘に収め、アンジェに手渡す。


「ほら、コレでいいか?」


「………良いの?」


目をまんまるにして此方を見つめるアンジェ。良いも何も、貰ってくれないと困る。


「アンジェの為に買ったんだから、当然だろ?」


「…!ええへ……ありがと!!!」


アンジェが満面の笑みで感謝を伝えてくる。少々気恥ずかしいが、日頃お世話になっている恩を返す良い機会だろう。


「そんじゃまたな、店主。」


「おう、また来いよ!」


そう言って、俺達は店を後にし、その後も露店で買い食いをしつつ、宿舎までの帰路を楽しんだ。露店にやたら蛍光色のドリンクが売ってあって、それを飲む羽目になった時は流石に肝が冷えたが……まぁ美味しかったけど。


たまにはこうして、誰かと露店を巡るというのも悪くないと、なんでも無い日常を過ごすのも良いものだと、身に染みて感じてしまう。





でも、それが…。







……その感情が、戦場に身を置くことに慣れてきた反動である事に、この時の俺は気付く事は出来なかった。
















お読み頂き、ありがとうございます。m(_ _)m

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