暗躍は暗い谷底に
少し遅いですが、あけましておめでとうごさいます。
今年も不定期更新ではありますが、朧火の意志を執筆していきたいと思っております(*´▽`*)
今後ともどうぞ、よろしくお願い致しますm(_ _)m
布都御魂
ミサイルランチャーはロマンである。
そう、どっかの偉い人も言っていた(誰かは知らん)。
だからこそ今回の作戦にピッタリなランチャーを、技術部に頼んで用意して貰っている。
今回の作戦は奇襲作戦。つまり、一撃目で如何に敵を混乱に陥れつつ被害を出させるかが鍵となる。そうなってくると一撃の火力が高いものかつ、被害が広範囲に広がるものが望ましい。
そんな俺の考えをそのままぶち込んだかのような兵器が、今俺のアナライザーに搭載されようとしているあのランチャーだ。
技術部……というよりはヴァネッサが趣味で独自開発したミサイルランチャーである無誘導型無反動爆撃ミサイル投射機『ハンドシェーク』である。
趣味で何を開発しているんだという感じではあるが、それ以上に広範囲殲滅兵器に平和的なネーミングを付けるのはどうにかならないもんなのか…。
『ハンドシェーク』って言ってるけど、その握手相手は腕どころか全身が木っ端微塵に粉砕されるだろうに…。ヴァネッサのネーミングセンスはよく分からん。
しかもこの兵器の良くない所は、反動の強さがRPG-7程度で済む癖に、その火力が要塞一つ消し飛ぶレベルであるという所だ。ヴァネッサによると、試し撃ちで革命派の放棄した要塞拠点に撃ち込んだ所、建造物ごとその周辺が更地どころかクレーターに変貌するレベルなんだとか。
正直、持つのが怖いレベルではあるのだが……まぁ、この作戦にはピッタリなので仕方ない。
ちなみに量産は難しいらしい。なんでも、コストが尋常じゃなく、これ1発で『SA-36』が数機買えるそうだ。………やっぱ恐ぇよ。
そんな広範囲殲滅兵器とAKM等のいつもの装備を搭載した俺の機体が最終チェックを終え、ガレージの外へと歩み出る。外には輸送機が待機しており、既に他の3人の機体が搭乗しているようだった。
機体を前進させ、輸送機である『WEC-1-B』へと乗り込む。機体を輸送機に固定し離陸を待っていると、次第にフワッと浮かぶ感覚が身を包んだ。
本作戦の流れは、輸送機から降下後に奇襲ポイントへと移動し、物資輸送群の通過と同時に奇襲を開始、そのまま輸送阻止に移行するというものだ。奇襲の初撃は勿論俺のミサイルランチャーだ。
……下手すりゃこの一撃で物資輸送群が吹き飛ぶ可能性も無くはないな。
そうなりゃ楽なんだがな、と考えつつサプライボックスから飴玉を取り出す。味は勿論小豆味だ。これを作ってる工場には足を向けて寝られない程、作戦前や休憩中にはコレを舐めている。好きなんだよね…小豆。
マップを見つつ、作戦領域を再確認する。奇襲予定ポイントは渓谷を跨がる大きな橋であり、ここを落とす事で物資輸送の要を陥落させつつ、革命派へ物資が渡るのを阻止するのが狙いとなる。
『ハンドシェーク』の一撃で脆くなった大橋を、ヴァネッサの爆破工作で完全に崩落させるというのが、本作戦の大筋だが……下手すりゃ『ハンドシェーク』の一撃で橋が崩落する可能性もあるトンデモ作戦である。
だがあの橋はドイツとポーランド間を長年跨がり続けた頑丈な大橋だ。だからこそ、念には念を入れてヴァネッサに爆破してもらうという手筈なのである。
まぁ念には念を入れて、俺も爆薬を持っている。ひとまず何がなんでも橋だけは絶対に落とす……輸送群はその後にでも殲滅すればいい。
そんな事を考えていると、輸送機が作戦領域上空へと到達したとの機内アナウンスが流れた。──さぁ、もう間もなくだ。
「各員、システムの最終確認を。」
『こちらハウンド2、システム異常なし。』
ハウンド2であるヴィンセントが真っ先に答えた。
『ハウンド3、問題なし!いつでも行けるさね!』
ヴァネッサも大丈夫そうだ。
『ハウンド4、異常なしだ!いつでもいけるぜぇ!!』
モーリスも問題なし、と。
よし、準備は整った。
「ハウンド1、異常なし──これより降下を開始する。」
輸送機の後部ハッチが開き、眼前に雲と青空が広がる。ここを飛び降りて、戦場へと降り立つのだ。
「降下開始!」
そう叫びつつ、機体を輸送機から飛び降りさせる。姿勢を維持しつつブースターを点火し、少しづつ減速して地上へと降り立つ。奇襲に必要なランチャーが破損していないかを確認しつつ、周囲を見渡す。今回の降下地点は奇襲予定ポイントから少し離れた広い荒野だ。橋のある渓谷からは切り立った山々によって死角となり、光学迷彩なしでも発見されるリスクが少ない場所となっている。
全員が着地したのを確認し、移動を開始する。輸送群の到着まで時間があるとはいえ、可能な限り砂煙を立てないように移動し、奇襲ポイントである橋の付近へと到達した。
「ハウンド3、ハウンド4、爆薬の設置を。ハウンド2は俺と来てくれ。」
『『『了解。』』』
ヴァネッサ、モーリスと別れて橋の中央まで移動し、気温変動による橋の崩落を防ぐ為に組み込まれた金属製の隙間に爆薬を敷き詰め、視認性悪化のコーティング剤を塗布しておく。このコーティング剤は、素材となったタザナイトの再生作用を利用し、周囲の色素と同じ状態に戻そうとする事で視認性を悪化させる便利なコーティング剤だ。アナライザーを利用すれば意図も簡単に広範囲を偽装できる為、開発されてからは世界中で使われ続けている。
「よし、こんなもんか。」
同じく爆薬の偽装を終えたヴィンセントと共に奇襲ポイントまで退却し、物資輸送群を待つ。モーリスとヴァネッサも設置を終えたらしく、多少身軽になった機体を走らせて奇襲ポイントへと帰ってきた。
「ハウンド3、爆破のタイミングは任せる。」
『任せな、全員あの世に送ってやるよ。』
……怖っ。
アナライザー越しに感じるヴァネッサの眼光から目を反らしつつ、手元のランチャーを点検しておく。なまじ無反動ランチャーなだけにバックブラストが発生する為、他の隊員からは少し離れた位置に待機する事にするとしよう。
今回持ってきた弾頭は1発のみであり、それに伴ってチャンスも1回きりとなる……目標はデカイから外す事はないが、やるならばより効果的な着弾地点に、だ。
そして待機を初めておよそ10分程で、輸送群をレーダーが捉える。すぐさまランチャーを構え、照準器覗き込みレティクルを先頭車両に合わせつつ機会を待つ。
目標との距離は……3000。
まだ、撃つには少し早い。橋に輸送群の大半が侵入したタイミングが、射撃開始の合図となる。
2000……1000……900……800……。
着々と輸送群が迫ってくるのを感じつつ、引き金に指を掛ける。──500に差し掛かった瞬間、この指を引く事にしている。
さぁ来い……その鼻っ面に一発お見舞いしてやる…!
700……600……590、80、70、60、50、40、30…
狙うは、先頭の大型装甲輸送車…!
──今だっ!!
「Fire!!!」
引き金を引くと同時に、猛烈なバックブラストと共に弾頭が発射される。誘導性能を持たないが故に目標への高速接近能力を得たミサイルは真っ直ぐに装甲輸送車へと吸い込まれていき──爆炎の惨劇を生み出した。
目を焼くような強烈な閃光と共に爆風が吹き荒れ、渓谷を跨がる大橋ごと物資輸送群を灰燼へと変える。次々と亀裂が刻まれ、今にも落ちる寸前の橋から離脱しようと後続の輸送車両が後退を始めた中、それを嘲笑うかのようにヴァネッサの仕掛けた爆薬が目を覚ます。
──再び、爆音が辺りを埋め尽くす。
橋の下と橋脚に取り付けられた爆薬は付近の構造物を巻き込みつつ爆風を吹き荒れさせ、強固な橋脚を木っ端微塵に粉砕する。
広範囲殲滅兵器である『ハンドシェーク』の強烈な一撃を受けた大橋に、更なる爆破を耐える力は残されていなかった。
ガラガラと音を立てて橋が崩れ落ち、橋上にいた装甲輸送車や護衛の装甲車を崩落へと巻き込んでゆく。車というのは唐突に止まれず、そして後退しようものなら更に時間を要するものである。そんな彼等を載せた大橋は、彼等の退避を許さんばかりに根本から崩れ落ちていった。
そんな中、運良く後退に成功した最後尾の車両と護衛のアナライザーは、すぐさま進路を反転させようと行動を開始した。……だが、そうは問屋が卸さない。
既に輸送群へと浸透していたヴィンセントが手に持ったライフルで輸送車両を破壊し、付近のアナライザーを有無を言わさず葬り去っていく。時にナイフを用いてアナライザー版の鎧通しを、時にライフルによる弾幕射撃をと、完全にヴィンセントのペースに呑まれてしまっているせいか、護衛である筈の彼等が手に持った銃で反撃をする事は、ほぼ不可能に等しかった。
こうして後続の輸送群も、サイレントサイスの名に恥じない、迅速かつ淡々とした殲滅によって消されていった。
『ハウンド2よりハウンド1、後続の装甲輸送車両及び護衛部隊の殲滅を完了した…これより其方に戻る。』
「ハウンド1、了解。ハウンド1より各位、退避するハウンド2への誤射に注意せよ。」
AKMをセミオートでぶっ放し、なんとか這い上がろうとする敵のアナライザー達を崩れ落ちていく鉄屑へと変えていく。ハウンド2の合流を支援しつつ、レーダーと目視で残敵の索敵を行う。この作戦が行われたという証拠を残さない為に、生存者の排除を徹底的に掃討を行った。
生存者がいなければ、俺達の作戦行動を糾弾する事も出来ず、真相は深い渓谷の底へ消えて行くという訳だ……なんとも真っ黒な暗躍である。
まぁこういった裏工作は過去の戦争でも度々行われているものであり、各国もおいそれと糾弾できるものではないのだ。
『……ハウンド1より各位、任務完了──帰投しよう。』
ま、革命派連中に対する世論なんぞ、俺達には関係ないがね。
───せいぜい物資輸送の絶たれた革命派連中がどうなるか、ポップコーンでも食いながら見させて貰うとしよう。




