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朧火の意志  作者: 布都御魂
42/46

攻勢開始

遂に2000PV突破(*´▽`*)

皆様ありがとうごさいます✨️

どうぞこれからも、気長にお付き合い下さいませ。


異空間の海は比較的穏やかだ。


青く、それでいて何処か暗いこの海は、俺達の乗る船をさも見守るかのように穏やかなものだった。


その海を突っ切って向かう先は革命派の拠点から少し離れた沿岸部だ。搭載されたありったけのミサイルと今か今かと待ち続けている艦載機部隊を発艦させて、この大地を火の海に変えてやるのだ。


──祖国を、そして俺を迎えいれてくれた戦団の者達を守る為に。


「提督、まもなく目標地点です。」


「……そうかぁ、ほんじゃまぁ祭りの開始と行こうじゃねぇか。」


隣の艦長席に座る私の旧友『ケビン・アルフロン』に目配せをして、艦載機部隊の出撃を開始させる。コイツとはもう長い付き合いだ……目配せするだけで何を伝えたいか分かっちまう。


「艦長!艦載機部隊、出撃準備完了とのことです!」


「うむ……第一次攻撃隊、発艦!!」


ブザーが短く鳴り響き、艦橋の外が騒がしくなる。


窓の外へと目をやると、第一次攻撃隊である無人戦闘機『PWS-32-OTM』で構成された艦載機部隊が次々に発艦を始めているところだった。それに呼応するように他の艦からも艦載機が発艦し始めており、ついに戦争が始まったのだと嫌でも肌で感じ始めちまう。


……いや、戦団の奴等にとっては、ましてや祖国にとっては、戦争はもう始まってるもんなのか…。


「……諸君(オメェ等)、気ぃ引き締めていけよ。俺達も地上部隊も、誰ひとり欠けねぇ為に戦うんだ。」


戦争である以上、それは極めて難しい目標となるだろう。……だとしても、だ。


そんなもの、命を諦めて良い理由にはなんねぇ。


30で身を引く事になっちまった俺ではあるが……こうしてまたこの手で何かを守れるというのも…


「ハッ、悪かねぇ」




──さぁ行ってこい無人機(戦士)共、革命派(クズ)共を塵に変えてやれ!




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


海上豚が作戦領域に到達したとの報せを受け、俺達はアナライザーに搭乗して襲撃目標である革命派の大規模拠点付近に待機していた。


既に此方の準備は完了している…後は海上部隊の攻撃開始を待つのみだ。


『──アイギスよりレイピア隊、まもなく機動艦隊より発艦した艦載機部隊が攻撃を開始します。各自、ご準備を。』


「こちらレイピア1、既に準備は完了している。」


「何時でもオッケーだよー!」


『ふふっ、頼もしい限りです──航空隊、作戦領域に到達、攻撃を開始しました。現時刻から3分後に行動を開始して下さい。』


──いよいよか、腕がなる…!


「レイピア隊、了解……レイピア2、準備はいいか?」


「もっちろん!今回はメルトも一緒だしね!」


全く頼もしい限りだよ……それはそうとコールサインを使えよ…またヴィンセントに怒られるぞ?


遠くでは既に航空隊の爆撃による爆音が鳴り響いている。作戦開始まで残り……30秒。


……20……15……10……5、4、3、2、1…!


「レイピア隊、作戦開始!」


「りょーかいっ!」


アナライザーのブースターを最大限に噴射させ、一気に加速する。拠点の上空に思い切り姿を晒しつつ、AKMでの射撃を開始する。大口径の7.62mm弾が未だ混乱の最中にいる革命派連中を生々しい肉片に変貌させ、張られていた天幕に血の雨を降らせる。


隣ではアンジェがCBJ-MSで弾幕を張り、対抗しようと対空車両で向かって来た兵士達を車両諸共ズタズタに引き裂いていた。9mm弾は本来拳銃用の弾薬だが、アナライザーで使用するのはそのサイズアップ版である9✕9mm<B>弾だ。その為装甲の薄い対空車両程度であれば難なく貫通する事ができるのである。


少し奥へ目をやると、革命派が使用している旧式のアナライザー『アルゲマインA6』を緊急稼働させ、此方に向かってくる姿が目に入った。付近の掃討をアンジェに任せ、AKMの照準を合わせてコックピットのある胸部を3度狙い撃ちする。


これまでも散々使われてきた『アルゲマインA6』だが、黎明期に設計されたというのもあり装甲と発動機が貧弱なのが特徴で、ドイツ本国が運用していた際にも度々動作不良を起こして動かなくなっていたそうだ。


そんな貧弱なアナライザーに大口径弾薬を3発も撃ち込んだりすればどうなるかは、最早だれにでも想像がつくはずだ。案の定装甲をブチ抜かれたアナライザーが火柱を上げ、コックピットのハッチから火達磨になったパイロットが飛び降りていた。


その様子を尻目に再び射撃を再開、近づいてくる『アルゲマインA6』達を物言わぬスクラップへと変えてやる。途中反撃してくる奴もいたが、使用している拳銃弾程度では新型機に傷一つ付けられておらず、他の機体と同様無残なスクラップへと変わっていった。


しかしまぁ……数が多い。


撃っても撃っても次のアナライザーがやって来る。なんなら『アルゲマインA6』だけでなくフランスが供与した『ノワールM』や、一度俺に風穴を開けやがったケンタウロス型の新型機──『ケルビー』というらしい──も現れ始めていた。


流石に俺達だけじゃ対処しきれんが……もうすぐ本隊も到着する、時間さえ稼げればこっちのもんだ…!


「レイピア2!行けるか!?」


『──!うんっ!何時でも行けるよぉ!!!』


「よし──突撃ぃ!!!!」


思い切り大地を蹴り、おびただしい群れとなったアナライザー達の元へと駆け出す。この作戦は待機していた時にアンジェと決めていた事で、前衛よりの俺達の戦闘スタイルを最大限に活かせるのは突撃からの乱戦であると、俺達の中で結論づけていたのだ。だからこそこうして、迫り来るアナライザーの群れに突っ込んでいるという訳だ。


一度AKMをウェポンラックに預け、代わりに専用大剣の『エターナル』を引き抜く。両手でグリップを握り、突撃の推進力と後ろから振り抜く遠心力を最大限利用して思い切り大剣を横に薙ぐ。


つんざくような風切り音と共に大剣が振るわれ、正面にいた『ノワールM』を3機まとめてぶった斬る。そのまま重心を落としつつ機体を回転させ、遠心力を上乗せした状態でもう一度大剣を横薙ぎにする。振るわれるごとに増す遠心力がその威力を増大させ、眼前に立ち塞がるアナライザー達を鉄屑へと変えていく。


この調子でと思ったその時、右肩に思い切り衝撃が走り、機体の重心がブレる。損害状況をモニターに映る全身図を見て確認すると、どうやら右肩のフレームに銃弾が着弾し、装甲をヘコませたようだ。衝撃からして大口径弾薬とみて間違いは無いだろう。そう考えて視線を奥へとやると、やたらデカイライフルを構える『ノワールM』の姿をカメラが捉えた。


そのライフルは長大で、第一次世界大戦期に世界で始めて運用されたドイツ製対戦車ライフル『マウザーM1918』に酷似している。2発撃てば使用者の肩がぶっ壊れるというなんとも終わってる反動を持つ対戦車ライフルだが、当時は歩兵達が恐れた戦車を撃破する画期的な手段として多くの兵士達に運用されたそうだ。


まぁ流石に反動はどうにかしているだろうから、アナライザーが使い物にならなくなるのを待つという選択肢は無い。というか待つ気が無い。


思い切って跳躍し、大剣を振りかぶりつつライフルを持つ『ノワールM』の前に躍り出る。迎撃しようとしている『ノワールM』だったが、対戦車ライフル……いや対アナライザーライフルを運用するには距離が余りにも近すぎた。


ライフルを構える前に大剣が『ノワールM』の頭部を捉え、そのまま一気にぶった斬る。真っ二つとなったアナライザーが左右に別れ、地に伏したのを横目で見つつ戦闘を再開する。有効な対抗手段を失った事で混乱が見られるが、戦場で混乱して良い時間など存在しない……敵が目の前にいるなら尚更だ。


なんとか正気を取り戻しつつ此方へと銃弾を放ってくる『アルゲマインA6』を薙ぎ払い、サーベルを振りかざす『ノワールM』に蹴りをかます。しかし勢い余って大剣が地面に突き刺さり抜けなくなってしまった為、それを好機とみた革命派連中が一気に此方へと押し寄せて来る。


抜け、ないっ…!


ならばっ……、


「おりゃぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」


ブースターを点火し、大剣を突き刺さっている()()()()振りぬいてアナライザー達をぶった斬る。


突き刺さった事でかえって抵抗となり、耐え切れなくなった地面がストッパーの役割を失って大剣を解放し、えげつない音と共に大剣をアナライザー達に振り抜かせる。余りの急加速にソニックブームが発生する程で、周囲のアナライザーが一瞬よろめいていたのが確認できた。


ちなみに『エターナル』は無傷だ。頑丈にも程があるだろコレ……まぁタザナイトも入ってるから傷ついたその場で修復されるんだけどさ。


大剣をぶん回しつつアンジェの方へと目をやる。アンジェは両手に持つ魔改造CBJ-MSを連射しまくり、迫り来るアナライザーを蜂の巣にしているようだった。


軽快に飛び回り、的確かつ迅速に殲滅していく様は見ていて気持ちが良かった。


『アハハハッ!!楽しーね!メルト!!』


「そうだな、悪くない気分だっ!」


少々不謹慎ではあるが、狂った世界では狂っている方が正しいので別段問題は無い。それにこうして笑えるだけの余裕があると、敵に見せつけられるのも戦意を削ぐ一つの手だ。まぁ分隊のチャンネルで話してるから連中には聞こえて無いが。


大剣を振り回しつつ片手でMP-443を連射し、着実に数を減らしていく。アンジェも途中からサーベルに持ち替えて近接戦に切り替えて戦っている。こうして互いに敵陣で背中を預けて切り結ぶというのも、悪くないな。


『──アイギスよりレイピア隊、まもなく本隊が到着します……余りご無理はなさらぬよう。』


「レイピア1、了解。──アンデルセン提督、聞こえますか?こちらレイピア1。」


トリシャとの連絡を終え、海上部隊を指揮するアンデルセン提督にチャンネルを繋げる。


『こちらアンデルセン、おうよ!どうした?』


「支援を頼みたい。先程と同じ座標に一撃ぶっ込んで欲しい。」


『座標は同じだな?……よし、たった今第二次攻撃隊を発艦させた、かっ飛ばしてるからすぐにでも到着すんだろうよ。』


なんとも迅速な支援だ……こういう時、指揮系統が簡潔だと助かるものだ。戦場では1分1秒が命取りだからな……悠長に待っている暇はないのだ。


「レイピア2、次の攻撃の後一度後退するぞ。攻撃隊が爆撃に来る。」


『オーケー!それじゃ、いっくよーー!!!』


そう言ってアンジェはCBJ-MSを引き抜き、フルオートでマガジン内の弾薬を盛大にばら撒き始める。俺も大剣を構え、重心移動と共に勢い良くその刃を振り抜く。撃破された機体が他の機体の動きを阻害し、結果的に足止めに成功したようだったので、隙をついて後退する事にした。


ブースターでバックステップしつつ距離を取り、AKMを再び取り出してセミオートで射撃する。そうこうしている内に上空からジェット音が鳴り響き、襲撃者達の到来をこの場の全員に告げ始める。


彼らがそれを認識し、対応に移すまでの時間的余裕は残されていなかった。俺達が既に退避した敵陣中央にGEB-50無誘導爆弾が幾つも落下し、着弾と共に猛烈な爆風が牙を剥く。破片と爆風、そして衝撃波が彼らを襲い、彼らを守る筈のアナライザーの装甲諸共その命を刈り取った。


爆弾を投下し終えた『PWS-32-OTM』の編隊は一度高度を上げ、再び急降下して遥か上空から空対地ミサイルを発射した後、くるりと反転して母艦の元へと帰っていった。


爆撃の跡には鉄屑となったアナライザーや戦車の残骸が転がり、なんとか生き残った連中もフレームの破損や熱風によるシステムのダウンなど、何かしらの被害を受けていた。そんな被害を受けた機体と入れ替わるように後方の機体が前に出て来たその時、唐突に前に出てきた『ノワールM』が真っ二つに切り裂かれた。


その()()の軌跡は立ち塞がる者達を容赦なく斬り伏せ、一瞬にしてスクラップへと変えていった。


──遂に来たか!


『──サーベル1、現着した。これより作戦行動を開始する──よく保たせてくれた。』


白銀の愛機『アロンダイト』を駆り敵を駆逐する戦団最強のパイロット、ヘンリクがそこにいた。


『既に本隊も到着している……君達も一度下がっていたまえ、ここは私が引き受けよう。』


「了解した…御武運を。」


『ふっ……ありがとう。』


ヘンリクに戦線を任せ、去り際に端の方にいた革命派のアナライザーをAKMで狙撃しつつアンジェと共に後退する。彼は単騎戦において最も力を発揮するタイプだ、俺達がいたら巻き込まれてしまう。


後退した先には、各自のアナライザーに搭乗したヴィンセント達本隊のメンバーや無数の樹脂人形(ドール)が駆るアナライザー部隊が待機していた。



さて、ここからは彼を見守るとしよう。





誰よりも強く、





誰よりも美しい剣線を描く、





我が戦団の勇姿を、その目に焼き付けるとしよう。








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