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朧火の意志  作者: 布都御魂
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攻めの一手

だいぶ日が空いてしまいました…(´•ω•`)スマヌ


機甲傭兵戦団"フォートレス"による補給基地の襲撃作戦は成功に終わった。


補給基地の壊滅により革命派の戦力は大幅に低下し、更には前線のアナライザー部隊による徹底的な殲滅によって被害はより甚大なものとなった。


そしてフランスが英雄の中の英雄(エースオブエース)を派遣していた事が露呈し、アメリカ側はこれを糾弾、結果フランスは革命派側の勢力としてアメリカに宣戦布告を行った。


またドイツ国内での革命が、()()()()()()という形で終結した事で、これまではドイツ革命派という肩書だったのが、革命派の正式発表によりドイツ社会主義共和国へと名前を変えた。


よりにもよって社会主義へと傾倒し、搾取と粛清の思想国家が産声を上げてしまったというのは最悪という他ないだろう。


人々に平等を強要し、僅かな食料のみで質素に暮らす事を強い、それでいて指導者達は甘い蜜を啜り続ける。


平等という聞こえの良い謳い文句は、結局の処搾取の為の口実でしかないのだ。


同じく社会主義を掲げたソビエト連邦が、自国の衰退による緩やかな崩壊を遂げていったように、彼等もまた、同じ道を辿るのだろう。


独裁よりマシ、と考える者もいるだろうが、独裁はマトモな政治さえ行なわれれば基本的に問題無いのだ。


独裁者が民衆の声を聞き入れ、それでいて無茶苦茶な事をしない状況を維持し続ければ、むしろ物事をスムーズに進められる優れた政治体制になり得る。


まぁ現実はそう甘くないのだが、それでも多少なりとも希望はあった。結果的に国が豊かになるケースもあるのだから、選択肢の一つとしては決して悪いものではない。


だが、社会主義は違う。


搾取するだけ搾取して、歯向かえば粛清。


豊かになるのは国の上層部のみであり、民衆はその残りカスで必死に食い繋いで生きるしかない。


どれ程働こうと報酬は同じであり、かといって資金をためて安息を得ようとしていると『堕落している』というレッテルを貼られる。


国と民衆を殺す政治体制、それが社会主義なのだ。


そしてその前列があるにも関わらず、革命派の連中は社会主義国家を樹立した。人類史から何一つ学んじゃいない。


そして厄介な事に、奴らはそれを広めようとするのだ。クソみたいな思想を押し付け、更なる搾取をする事を良しとしているのだ。


だから潰す。次の世代を、このクソッタレな思想家共から守り抜く為に。


だから俺は引き金を引く。


たとえ血塗られた道であっても。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「──攻勢?」


俺達は今、国境線を守る砦、所謂前線基地に集まっていた。此処には簡易的なガレージがあり、応急的ではあるがアナライザーの修理が行えるようになっていた。


現在俺達は、砦の地下にある会議室にて今後に関しての作戦会議を行っていた。


「あぁ、今までは奴さんの迎撃にのみ徹していたが……ここらで一度攻勢に出て、奴さんの前線基地群を壊滅させてやろうという結論に至った。」


「攻勢にはアメリカ軍の新設部隊『異空間遠征軍』の第1から第8部隊が参加するそうだ。どの部隊も歩兵、戦車、装甲車両の全てを持ち、第7、8部隊に関しては戦車の代わりに航空隊を保有しているそうだ。基本的に、戦場は彼等に任せる事になる。」


なら、俺達の出番は無いんじゃないか…?


そう考えていると、ヘンリクは一息ついた後言葉を続けた。


「彼等が前線基地を潰している間、私達は敵の前線司令部……つまりは前線におけるトップを潰す。」


「……!」


前線司令部は周辺に展開する部隊や前線基地等に対して総合的な指示を出すいわば前線の頭脳と言っても差し支えない場所だ。


そこを襲撃し、前線の連中を烏合の衆へと変えてやるというのだ。


「司令部の連中ってのは総じて逃げ足が早い。だから逃げる時間を与えない為にも秘密裏に潜入し、抹殺を遂行する必要性がある。よって察知されやすいアナライザーの使用は不可だ。」


今度は生身での潜入作戦か……アナライザーでの作戦行動と違って力でゴリ押すのは難しくなるし、そもそも潜入作戦である以上、強行突破は可能な限り避けて通るべきである。


使用する装備品と、潜入するメンバーの練度が鍵になってくるな…。


「潜入するメンバーは……先の前線メンバーで行こうかね…そっちが本業なんだしいいだろう?『サイレントサイス』殿?」


そう言って、ヴィンセントの方を向くヴァネッサ。


え、待って……ヴィンセント…?


「………その名で呼ぶのは勘弁してくれ……メルト君もそんな目で見ないで欲しい…。」


「いや見るでしょ……サイレントサイスって何?」


何その二つ名……。


「ヴィンセントが教えないならアタシが教えてやるよ!コイツは元々歩兵戦を主軸とする兵士でね、愛用の手鎌で幾人もの敵を狩ってきた戦場の暗殺者なのさ。そんで恐れた敵側が呼び始めたのがさっきも言ったサイレントサイス(静かなる鎌)って言う訳さ。」


「……若気の至りだ。」


なんそれカッケェ……んでもって怖ぇ……。


「是非とも、力を奮ってくれ給え。サイレントサイス殿?」


「ヘンリク、お前もか…。」


呆れるヴィンセントには申し訳ないが、存分に頼りにさせてもらう事になるだろう。二つ名で呼ばれた程の腕なのだ…今回の作戦でも、その力を存分に奮ってくれる事だろう。


「ともかく…ヴィンセント、ジャック、メルトの3人は装備を整えた後、輸送機に搭乗し作戦領域上空まで急行、到着後はパラシュートにて降下し、速やかに作戦を遂行するんだ。いいね?」


「「「了解」」」


「それと、今回の作戦では万が一の為に航空支援が展開出来るようにしてある。作戦完了後、脱出が困難と判断した場合は迷わず要請しな。必要なら空挺部隊も急行させる。」


支援は助かるが、その支援も作戦完了後だ…。気を引き締めなければ。


「オペレーションはアタシがやる。ヘンリク、残ったメンバーで次の戦線に関する準備を進めな!時間は余り無いよ!」


「承った。」




「よし……この作戦が、もしかするとこの戦線を収束させる一手になるかもしれない…。──気合い入れていくよっ!!」




さぁ行こう。




──狙うは敵の司令部だ。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ガレージに隣接する武器庫にて、装備を整える。此処には色々な武器が揃っており、自動小銃や狙撃銃、ロケットランチャーから迫撃砲まで、何でもござれだ。


戦団になった事で正式採用の銃火器は決まっているものの、実際のところ使用する銃は自由だ。ウチではアメリカ製アサルトライフルの『AR-10』と同じくアメリカ製自動拳銃の『スプリングフィールドXD』が正式採用されているものの、ウチのメンバーでコレを使ってる奴は一人もいない。


そして俺も使ってない……俺はAK派なんだ。


ということで団員個人用ガンラックから、作戦や訓練で俺が愛用している1丁の小銃を取り出す。


勿論AKだが、使用しているのはロシアの最新式アサルトライフルである『AK-15』だ。『AK-12』の派生型の一つで、5.45✕39mm弾でなく7.62✕39mm弾を使用する大口径のアサルトライフルとなっている。


アナライザーでは構造のシンプルさとサイズ拡大による信頼性の低下を防ぐ狙いから敢えてAKMを使用していたが、歩兵戦においては最新式を使用するようにしている。こっちならアタッチメント付け放題だしな。


フォアグリップとサプレッサーを装着し、ハンドガード左には増設したピカティニーレールにフラッシュライトを取り付けておく。レシーバー上には俺が好んで使用しているACOGを取り付けてある。人によってはACOGをAKに付けると違和感を抱くらしいけど、俺はコレが使いやすいし馴染んでいるからそれでいい。


──俺が使うんだ、俺の好きにすればいいのさ。


それからAKとは別に、ガンラックからショットガンを取り出す。アメリカ製ショットガンの『モスバーグᎷ500』、その改造版だ。ストックを取り外してピストルグリップを装着し、外したストックの代わりにM3サブマシンガンのようなワイヤー状のストックを取り付け、更に銃身を少しばかり切り詰めたカービン仕様となっている。


普段はそのまま使っているが、今回は潜入作戦だ。この前モーリスに貰った改造アタッチメントを付けて、サプレッサーを取り付けておくとしよう。


サプレッサーを付けたとはいえ、ショットガンは銃声がデカい……極力使わない事を願うばかりだ。


あとは……サイドアームと近接武器か。サイドアームは防衛部隊の頃に商業区で購入した『マカロフPM』を消音仕様に変更した『マカロフPB』を使用する。あの頃からずっと使っているのもあり、割と愛着が湧いている。


近接武器には、これまた愛用品である『Ka-Bar』を持っていくとしよう。頑丈で、切れ味の良いナイフだから重宝している。


黒いタクティカルスーツの上からボディアーマーを着込み、マガジンポーチ等の各種アタッチメントを取り付けておく。ボディアーマーの左肩部にナイフを装着し、腰にサプレッサーを装着したまま入れる事のできるホルスターを取り付け、『マカロフPB』を放り込む。


マガジンポーチに『AK-15』のマガジンを入れ、サイドポーチに『マカロフPB』のマガジンを入れておく。バラクラバ帽を着た後ヘルメットを被り、色々な物が入った小型のウェストポーチを装備した後、最後に『AK-15』を肩に担いで武器庫を後にする。


ガレージを経由して外に出ると、同じく黒いタクティカルスーツとボディアーマーに身を包んだヴィンセントとジャックが待っていた。ジャックはオーストリア製アサルトライフルの『ステアーAUG』と同じくオーストリア製の狙撃銃である『ステアー・スカウト』を装備しているのに対し、ヴィンセントはまさかのソ連製半自動小銃である『SKSカービン』と、安心安全の信頼性を誇るドイツ製サブマシンガンの『MP5』を装備していた。


ジャックはともかく、ヴィンセントは旧いのか新しいのかよく分からんな……俺もか。


「来たな、メルト君。準備は良いかい?」


手に持った手鎌をクルッと回しながらヴィンセントが尋ねてくる。黒く塗装されたこの手鎌は、農作業で使われる手鎌というよりは敵の首を刈り取り続けた死神の鎌のようにも見える。というか、実際そうなのだろう。


「あぁ、準備万端だ。」


「良し……では行こう。」


俺達の前には、今回搭乗する輸送機が鎮座していた。


ステルス性と独自の消音機構を搭載した隠密行動向けの画期的な輸送ヘリ、技術部謹製ステルスヘリの『HH-7』である。ステルスヘリという事もあり、武装は機関砲のみとなっているが、一定以上の高度では地上からの音による知覚が不可能な上、通常のヘリよりも高速で飛行できるその性能によって、防衛部隊時代から様々な作戦に投入されてきた傑作機である。


開かれたスライドドアから乗り込み、兵員室の簡易的な椅子に座る。ステルスヘリとはいえ、少人数であれば広々と座れるスペースが確保されているようで、中は割と快適だ。


暫くしてヘリのローターが回転を始め、なんともいえない浮遊感を感じ取り始めたと同時に、ヘリは基地の上空へと飛びたっていた。


本来ならば爆音が鳴り続ける筈の機内には想像以上に小さな騒音しか響いておらず、隣でヴィンセントと話すジャックの声が鮮明に聞こえる程度には静かな空間が保たれている。


「さて2人共……私達はこれより敵前線司令部へと潜入し、可能な限り迅速に将校共を抹殺する事が任務となる。標的への接近までは極力戦闘を控えるか目撃者となり得る者を秘密裏に排除する必要がある。」


「そーだナ。」


「正直な話、このメンバーであればそう難しい作戦ではないと私は考えている。だが油断は禁物だ……常に警戒を怠らず、思考を巡らせ続けるんだ。」


「了解だ、隊長。」


「油断して戦死しました」なんざ恥ずかしいにも程がある。


「理解しているなら良い。……それと、今回のコールサインは『ゴースト』だ。精々、司令部の奴らを呪い殺してやろうじゃないか。」


そいつは良いな。ま、彼等の命を奪うのは呪いでは無く銃弾なのだが……まぁいいさ。


『マモナク、作戦領域上空ニ到達シマス。』


「……時間だな。」


背おったパラシュートを再点検し、スリングでぶら下げているAK-15セイフティを念の為確認しておく。降下中に暴発するなんざ、目も当てられんからな…。


『作戦領域上空ニ到達──Good Luck。』


「機械音声のGood Luckなんざ、中々聞けねぇな」


「ククッ、それもそうだナ。」


「フ………良し、行くぞ──降下開始。」


まずヴィンセントがヘリから飛び降り、その次にジャック、そして俺が飛び降りる。猛烈な風が吹き付ける中降下し、ある程度の高度まで一気に降下する。


『ゴースト1より各位、パラシュート展開。』


ゴースト1──ヴィンセントの指示通りパラシュートの紐を引き、パラシュートを展開する。黒塗りで塗装されたパラシュートが開かれたと同時に、耳に付けたヘッドセットへアナウンスが響く。


『パラシュートノ展開ヲ確認──"インビシブル"機動。』


その直後、パラシュートがスゥーとその姿を消していったと同時に、俺の姿も透明に変わっていく。


技術部が潜入作戦用に開発した新型ステルス迷彩"インビシブル"は起点となる装置に触れている全てをステルス化するという最早どうやっているのか全く分からない新技術の結晶である。装置自体はパラシュートに取り付けられており、()()()()()()()()()()()()()()もパラシュートの『一部』であると認識する事でこの迷彩を実現しているのだそうだ。


その為パラシュートから手を離せば、その効力はパラシュートにのみ適用され、俺は堂々と姿を晒した状態になってしまうのである。まぁ上空でパラシュートから手を離す時なんざ早々無いので、デメリットはほぼ無いと言えるだろう。


……つーか離したら死ぬし。


尚、同じステルス迷彩を使用している者同士では姿が見える仕組みとなっている為、仲間を見失って衝突という間抜けな事にはならない様になっている。


ヴィンセント達の着地した付近に俺も着地し、周辺を警戒しつつパラシュートリュックのピンを引き抜いた後ボタンを押す。するとパラシュートがどんどん巻き取られ、パラシュートリュックの中へと収納されていった。


まぁこのパラシュートは最新技術の塊みたいな物だ……おいそれと敵陣に放置して、鹵獲されるのは不味いのだ。


ヴィンセント達と合流し、目の前の建物を睨み付ける。この砦風な建物が、敵の前線司令部だ。


「……ゴースト1よりカタール、降下地点へ到達した───これより潜入を開始する。」


カタールは戦団本部にいるヴァネッサのコールサインだ。……何故インドの短剣なのかは知らん。


『──こちらカタール、了解。幸運を祈るよ』


「……行くぞ。」


ヴィンセントに続いて前線基地へと潜入を開始する。





……待ってろよ、間抜け共。








AK-15(カラシニコフ)の餌食にしてやる。









お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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