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朧火の意志  作者: 布都御魂
24/46

意志

本日は2話更新です(*´▽`*)


「ランス2!?おいっ!!メルトっ!!!応答しロ!!!」


ジャックは焦っていた。それもその筈、巻き上げられた土埃で分かり難かったが、自分の目の前でメルトの乗るアナライザーが貫かれるのを目の当たりにしているからだ。


「クソッ!!」


機体を勢いよく前進させ、メルトの元へと駆け寄る。


土埃の晴れた先に居たのは、咄嗟に動かしたであろうシールドごと装甲を貫かれた、見るも無残なSB-1の姿だった。


「ウソ、だ、ろ……お、おい、メルトっ!!」


すぐ様突き刺さった円錐槍を引き抜こうとするが、すぐ近くには槍を手放し、サーベルの様な片刃剣を手に持った先程のアナライザーがいた。


此方を視認するや否や、手に持つサーベルを振りかぶり此方へと斬りかかって来たアナライザーの土手っ腹に、対物ライフルのマズルを押し付けつつ引き金を引く。


本来であれば銃に大きなダメージを与えるこの手法は、あまり推奨されるものでは無かった。現に、愛銃であるヴィーゲンリートはバレルに亀裂が入り、マズルは酷く歪んでしまっている。


だが、そんな事はどうでも良かった。


仲間を、それもタッグを組んで戦ってきた大切な戦友を傷つけたのだ。


「ぶっ殺す!!!!」


ヴィーゲンリートを投げ捨てた彼は、ケンタウロスの様なアナライザーの肩口を、格納されていたコンバットナイフで引き裂いた。軽量化の為か薄くなっていた関節部の装甲はあっさりと切り裂いた。


そのままもう一度ナイフを振りかぶり、今度は胴体側面部にナイフを突き刺す。狙うは──コックピットだ。


案の定側面部の装甲は薄く、コンバットナイフは装甲を貫通、コックピットを深々と貫いた。


繰り手を失ったアナライザーは機能停止し、その場に崩れ落ちた。だが、新型機を1機撃破した事で一瞬の隙が生まれてしまった。


崩れ落ちるアナライザーの陰から、別のアナライザーが姿を現したのだ。


「ヤベッ!?」


目の前で旧型アナライザーがライフルの引き金を引く。咄嗟に目の前で腕を交差するが、果たして防ぎきれるかどうかは定かではない。


死を悟ったジャックは、思わず目を瞑る。彼とて人だ、目の前に迫る銃弾は恐ろしい。


だが、何時まで経っても、銃弾がジャックを貫く事は無かった。


「なん、ダ…?」


目の前に見える、大きな影。



それは、先程円錐槍で穿たれ、地に倒れ附していたSB-1───メルトの機体だった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「はーっ、はーっ、ゴフッ……はぁ、はぁ……」


槍でシールドごと貫かれ、コックピットにまで槍が届いた事により、メルトは重症を負っていた。


間一髪身体を反らしたものの、左肩は槍の先端によって抉り取られ、夥しい量の血が溢れ出ていた。


飛び散った破片は腹部を貫き、少しばかり内臓を傷つけたのか、口からは血が溢れていた。


(痛ぇ………左手は……動かねぇか…。)


血まみれの左腕は痛みが酷く、動かすのは困難だった。若干ボヤケた視界が多少鮮明になり、目の前のモニターに目をやる。


機体の側にはジャックの機体がおり、俺を貫いたあのアナライザーと戦闘を繰り広げている。


しかし、ジャックは気付いてないようだった。


ジャックが撃破し、倒れ込むアナライザーのその陰から、別のアナライザーがジャックを狙っているという事を。


「痛っ……!」


咄嗟に機体を動かそうとしたが、痛みが酷く動けない。出血のせいか頭も痛む…。


痛い……苦しい………


……………………。



()()()()()()



痛むならば、その痛みをねじ伏せろ。


苦しいならば、その苦しみさえも糧にしろ。


動けない?いや、動かすんだ。


身体が拒否しようとも、確固たる()()を持って…!


さあ動け、たとえか細い風前の灯火でさえも、


遺志という薪をくべ、大火と成そう。


燃やせ。


()()()()()()()!!!


「ぁあああああっ!!!!!」


あらん限りの声を貼り、機体を起こして前へと立ち塞がる。


この機体は新型だ。


旧型のライフル弾如きで、貫けると思うなよ……!


機体の右腕を握り締め、肘部のブースターを展開する。バックブラストを吹き荒らし、その推進力で拳を突き出す。


ゴォンと鈍い音を立てて、旧型アナライザーの装甲を抉る。その衝撃で吹き飛んだアナライザーに、辛うじて生き残っていたミサイルポッドのミサイルを撃ち込む。


白い軌跡を描きつつ、ミサイルが着弾し、激しい爆発を起こす。至近距離で撃ったせいで爆風が空いた穴から吹き込んでくる。……熱いわ、うん、熱風だもの。


念の為付近を見回すも、他の敵は現状見えなかった。恐らく、他の仲間の所へと向かったのだろう。


『ザザ──い─おい──おいっ!メルト!!!』


「ジャック、か………無事か?」


『そりゃこっちのセリフだ!!!ったく心配かけされやがって!!!……動けるか?』


「なんとか、な。」


正直、ギリギリのラインではある。


円錐槍で貫かれたシールドは大破、同時に貫通されてしまった胸部装甲左側も大穴が空いており、コックピットが剥き出しになってしまっている。つーか外見える。


そして使っていたAKMは衝撃で歪んでしまっており、使用可能なのは格納されているコンバットナイフと、残弾が少ないミサイルポッド、そしてMP-443くらいだった。


『──アイギスよりランス2!聞こえますか!?』


オペレーターのトリシャの声だ。


「こちらランス2、無事──とは言い難いが、ひとまず生きてる。」


ボロボロだけどな。


『良かったぁ……では、そのまま聞いて下さい。メルト君が新型機の直撃を受けたという報告を聞き───サーベル1が……ヘンリク隊長が猛烈にブチ切れまして。』


「へ?」


『……あ~、まじか。』


……ジャック、なんだその諦めのトーンは?


『単騎で敵に突っ込んでいくや否や、新型機と斬り結び圧勝。付近の旧型機を巻き込んでそれはもう悲惨でしたよ……敵が可哀想な程に…。』


「…………まじ、かぁ…。」


『まじ、です…。まあ、おかげで戦線の巻き返しが出来ましたので、現在防衛ラインの再構築に移行しています。』


………やっぱおかしいよあの人……人だよな?


何?単騎で殲滅って……


『ひとまず、お疲れ様でした。一度帰投して、今後の作戦を練りましょう。』


『「了解」』


こうして、初となる戦争への介入は一度収束した。


だがこれは戦争だ……今後も出撃する事が増えるだろう。


痛む肩を抑えつつ、俺は迎えの輸送機を待つのだった。


ヘンリクという規格外に、若干頭を悩ませながら……。





戦闘シーンを書くと、大体2話くらいで終わってしまいます……今後は、伸ばせるようになるといいなぁ(遠い目)

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