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朧火の意志  作者: 布都御魂
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そして繰り返す過ち

お蔭様で、この『朧火の意志』の累計PVが1000PVを突破しました-!(*´▽`*)!大感謝です(*ˊᗜˋ*)/

正直、思いの外読まれていてびっくりしておりますが、

どうぞこれからも長い目でお付き合い下さいませ。

布都御魂


人は過ちを繰り返す生き物だ。


平和を謳う者は、いつしか自らの欲望に飲まれる。


詐欺を辞め、誠実に生きようとする者もまたいつの日か同じ事を繰り返す。


勿論、必ずしもそうであるとは言わない。


だが、そう高らかに宣言できるほど、人間は完成された生物ではないのだ。


だからこそ争いは生まれ、そして同時に平和や安寧を求める声も生まれる。


いつの世も、そしてこれからも、この事実は変わらないだろう。


新資源であるアザーライトが発見され、各国が手を取り合って発展へと進むこの現代でも、それは変わらない。


アザーライトという物資がもたらした束の間の平穏。


今まさに、その安寧が崩れ去ろうとしていた。


世界に、安寧は似合わんと言わんばかりに───



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


2051年8月2日、エリア021広域ラジオ


『エリア021にお住いの皆さん!おはようございます!みんな大好き、ニーイチラジオのお時間です!』


『本日も明るくニュースや新情報を──と、いきたい所ですが、本日は皆さんに大切なお知らせがございます。』


『本日、情報部門からの緊急通達により、全ての番組の差し替えが行われました。』


『お伝えする内容は………世界情勢。それも、かなり深刻ものです。皆さん、心して聞いて下さい。』


『本日の早朝、ここエリア021を保有するアメリカ大使館へ、先日ドイツにて勃発した紛争の後発足した、ドイツ革命派から一通の書類が届きました。内容は………』


『アメリカに対する、宣戦布告です。』


『衝撃を受けた方も大いでしょう。何故、ドイツ革命派が、私達と大した関わりのない一派閥が、宣戦布告などという愚かな行為をしたのか…。ですが、ドイツ革命派の言い分を聞けば、納得はせずとも、宣戦布告の理由は理解出来るかと思います。』


『ここエリア021はアメリカが保有する異空間の中央に位置するエリアです。そして両隣のエリア020及び022、ここが、ドイツ保有のエリアとなっているのですが……先日の革命により、この2つのエリアの所有権は、ドイツ革命派によって占領されました。』


『そしてこのエリア間を行き来するには、ここエリア021を通過するか、一度異空間から出てそのエリア直通のゲートを通る必要があります。………もうお分かりでしょう?ハッキリ言って、彼らからすれば、このエリア021は邪魔でしかないのです。』


『この横暴な主張と宣戦布告に、アメリカ側も対抗する意思を示しており、軍備拡張及び戦闘体勢を整えています。』


『エリア021の皆さん、戦争です。皆さん、どうかご無事で。』



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「革命ねぇ……やるにしても、こっちを巻き込まんでほしいもんさね。」


ラジオを聞いていたヴァネッサが鬱陶しそうに呟く。


「まったくだな……にしても、なんで今革命を?」


ドイツは壁の崩壊後、あまり目立った衝突は起きていなかった筈なんだよなぁ……


「なんでも革命派の連中の中に、共産主義の人間が複数いるらしい……大方、そいつらが唆したんだろうよ。」


と、ヴィンセントがコーヒーを片手にそう言う。


共産主義……全ての人に平等を謳い、実際には上が搾取しまくって国が崩壊へと歩みを進める最悪の思想。平等という点は聞こえが良く、何も知らない市民には支持されやすい傾向にあるが、働く奴と働かない奴がどっちも同じ給料かつ低収入、そして極めつけはどうせ同じ給料ならと働かない人間が溢れかえる事による国の崩壊だ…。まぁ、ソ連が良い例かもしれない。


独裁路線に踏み切らないだけ良いのかもしれないが、独裁にもまた良い点は存在するし、悪い部分も勿論ある……正直、どっちもどっちだ。


「まったく、面倒な連中だねぇ……しかもアタシらを巻き込むなんてさ……」


俺達がこのエリア021にいる以上、俺達も駆り出される事になるだろう。レイダーとの戦闘で無く、人間同士の()()に。


「皆さん、お揃いですか?」


と、リビングの扉が開き、タブレットやら書類やらを持ったトリシャが入ってくる。


「来たようだな……では、作戦会議を始めようか。」


ヘンリクがそう言うのを聞いて、全員がテーブルへと着席する。皆が座ったのを確認すると、トリシャが端末を操作して中央のレンズでマップを映し出す。


「皆も理解していると思うが、今回の戦いは人と人の意志のぶつかり合い…戦争だ。ハッキリと言っておくが、君達の参戦は強制では無い。」


ひと呼吸置いてから、ヘンリクは発言を続ける。


「私達はレイダー討伐や治安維持が専門であり、戦争はハッキリ言って専門外だ。であるからこそ、君達に戦争への参加を強制する事は出来ない。」


「だからこそ…参加を辞退するという者は、正直に挙手して欲しい。私達がそれを責める事は絶対に無い。」


……………………。


まあ、分かってた事だけど、誰も手を挙げない。


勿論、俺もだ。


「……諸君らの献身と愛国心に感謝を。」


ヘンリクが立ち上がり敬礼を贈る。


「勇敢な諸君らに、作戦会議の前に一つだけ命令を下す。…………死ぬな、なんとしてでも生き残れ。」


滅多にしない、ヘンリクからの…隊長からの命令。


全員が立ち上がり、ヘンリクに対して敬礼を返す。


せっかく救われたこの命、失ってたまるものか。


「……ありがとう。トリシャ、作戦会議を続けよう。」


「はい!……それでは、此方をご覧下さい。」


マップに表示されたのは、エリ021の周辺地形、そして隣接するエリア020と022の国境線だ。


国境線付近には敵軍を示す赤い点が夥しい数配置されており、021側の国境線付近には味方戦力の砦と戦力が表示されている。


「現在、エリア020及び022両方向からの侵略が発生しており、国境線警備隊及び緊急出動(スクランブル)した第7、第8航空部隊が応戦してますが……状況はあまり良くありません。現在、本国にも応援を要請していますが、唐突な開戦という事もあり対応が遅れている状況です。本国の増援が到着する迄の間、戦線を維持する事が私達の任務となります。」


今回の作戦は遅滞戦闘か……。


「また、敵方の戦力にはアナライザーも含まれているようで……地上部隊や航空部隊のみでは、押し切られる可能性があります。よって本作戦会議の後、即座に出撃する事を念頭に入れておいて下さい。」


「奴さんの戦力は分かってるのかい?」


「正確な総数は把握できませんが……現在確認されているだけでも、各戦線にそれぞれ歩兵15000人前後、戦車400両前後、装甲車700両前後、アナライザー40機前後であると予想されます。」


「結構いるね〜?」


「そりゃ戦争だからナ…奴さんも本気なんだろ。」


「エリア020方面には、駐留している本国の第43、第44駐留軍が対応するそうです。先日、本国から戦力の補充として第126駐留軍が到着したのもあり、戦線維持には十分だとか。言伝として、此方は任せろとの事です。」


だとすれば、俺達は022方面か…。


「私達が参戦するエリア022方面ですが、此方には第126駐留軍と共に到着した第127駐留軍が味方として付く他、防衛部隊本部から第3即応軍が友軍として参戦するそうです。」


第3即応軍。防衛部隊本部に駐留し、今回のような緊急事態に備えて日々訓練を怠らないエリート集団の集まりだ。本部の目録にあったのは知ってたけど、まさか友軍になるとはな……。


各即応軍はそれぞれ違う強みを持っており、第3即応軍の強みは『速さ』。迅速に参戦し、迅速に敵戦力の撃滅に当たる、増援としてはこれ以上ない配置だ。


「今回の作戦ではツーマンセルでの行動を厳とし、決して戦線で孤立する事が無いようにして下さい。割り振りは先日の教団本部殲滅戦と同様となります。」


「そして……私達の担当する敵戦力は『敵方のアナライザー』、及び『付近に展開する兵器群』です。通常兵器で対応が困難なアナライザーを、私達で対処する手筈となります。細かな作戦は、タッグ同士で決めて頂いて結構です。」


そう言って、トリシャは椅子に腰を下ろす。


「アタシからも一つ、この作戦には無人機を大量投入する。そしてその費用がなんと……本部持ちなのさ。もう分かるだろう…?使い放題って事さ。」


使い放題か、そりゃあ良い。存分に活用させて貰おう。


「無人機が必要なら、オペレーターのトリシャに要請すれば、幾らでも回して貰えるよ。活用しな。」


「……話は纏まったな。本作戦は、敵方の戦力を殲滅する事が第一目標ではない。戦線を維持し、友軍の到着を待つ──これが目標となる。であるからこそ……」


「全員で、生きて帰るぞ。」


「「「「「「「了解!!!」」」」」」」


行こう、死線の向こう側へ。





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