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朧火の意志  作者: 布都御魂
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掃討戦


機体の右腕を損失した俺は、一度拠点のガレージへと帰還した。整備スタッフに機体を任せて、俺は寮舎へと向かった。


寮舎に入り、オペレーションルームと書いてある部屋へノックしてから入室する。中に入ると、ヘッドセットを身に着け複数のモニターと機械を操作するトリシャの姿があった。


「メルトさん!おかえりなさい。」


此方に気付いたトリシャが笑顔で出迎えてくれる。


「ただいま、トリシャ。」


「帰って早々ですけれど、どうします?」


現状、俺の機体は使用不能だ。他の機体で出るという手もあるが、他の機体に乗る訓練を俺は終えていない。初めて乗る機体で戦場に出るのは、自殺行為と言えるだろう。


「そうだな……出撃したいのは山々だけど機体がな……」


「そうですね……まぁ、残るは掃討だけですから、待機しておくと言うのも手ですが……あ、無人機動かします?」


「無人機?」


「ええ、無人機は遠隔操作できますから。操作も簡単ですよ?」


「──よし、そうさせて貰おう。」


「では、隣のリモートルームへどうぞ。ポッドがありますので、それに搭乗して下さい。運用するのは──陸上兵器にしましょうか。」


「了解した。それじゃ、行ってくる。」


「はい!いってらっしゃい。」


オペレーションルームを出て、すぐ隣にあるリモートルームへと足を踏み入れる。


部屋の中には卵型の遠隔操作ポッドが複数並んでおり、各ポッドには番号が振られていた。


俺は一番手前にあるポッドのボタンを押してポッドの蓋を開く。中に設置されたシートに座り、電源を押してポッドを起動する。


【メインシステム─起動───接続開始────接続完了──ユーザー認証──スキャン──ユーザー名─メルト──認証完了──リモートシステム─オールグリーン】


システムが立ち上がり、画面にConnectionと表示される。その後、幾つかの無人機がリスト表示されるが、まだ全ての機体にアクセス出来る訳では無い為、使用可能な機体のみがピックアップして表示された。


リスト表示されたのは、2種類の無人陸上兵器だった。


1つ目の兵器はソ連製主力戦車の改造型『Ꭲ-62-a3』だ。ソ連が製造した今では旧式となった主力戦車を改造して無人化し、装甲厚の代わりに追加武装を搭載する事でより攻撃的な兵器へと変貌した無人機である。

追加武装は多岐に渡り、俺が今回運用出来るのは側面部にミサイルポッドを取り付けたミサイル型である。


2つ目の兵器はフランス製装甲車の改造型『CRE-90』だ。フランスで製造された画期的な装甲車で、中央の車輪を可動させる事で6✕6から4✕4の両方を扱えるという優秀な装甲車の一つである。また軽量な装甲車であるにも関わらず90mmカノン砲を搭載しており、無人化により弾薬搭載量を増加させた為継戦能力も向上している。


どちらも優秀な兵器であり、個人的な趣味で好きなソ連製の兵器を選びたい所だが、今回は早急に現場へと急行する必要がある為、使用するのはCRE-90に決定した。


端末を操作して車両庫のCRE-90にアクセスする。


【──リモートシステム──コネクション───接続完了──システム─オンライン──サポートシステム──起動─オールグリーン───全システム──起動完了】


起動完了と共に、モニターにカメラの映像が表示される。モニター上部のランプが青に点灯したのを確認して、俺はアクセルペダルを踏んでCRE-90を動かし始めた。


このポッドはアクセルとブレーキ、ハンドル操作のみがマニュアル操作であり、武装の使用はアナライザー同様、思考する事で操作する。運転がマニュアル操作なのは、車輪や履帯を使用する陸上兵器を想定されたポッドである為、より直感的な操作のしやすさを実現する為にあえて採用されたらしい。


まあこのポッドは量産式だし、アナライザーに乗らない人も扱うのだ。可能な限り通常の車両に近い方が運用しやすいのは確かだ。


ハンドルを握って砂に覆われた大地を疾走する。道を走ってもいいが、万が一他の車両や避難が遅れた民間人がいては轢いてしまう可能性もあった為砂漠を突っ切る方を選んだ。


一応、民間人の避難は済んでいるが、念の為だ、念の為。


少し走らせると、アナライザーと戦闘するレイダーの姿が確認できるようになり、俺はそのエリアから少し離れたレイダーの残党がいる場所へと移動した。


岩陰に車両を止め、照準器を覗きこんでレイダーに照準を合わせる。誤差を修正した後、砲撃を開始した。


Fire(撃て)


90mmライフル砲から対戦車砲弾が放たれ、狙い通りとはいかずともレイダーの左肩を抉り取る。アナライザーで使用する大型弾は元の弾薬を大型化しただけあって、7.62mmなら76.2mmといった具合である──実際には異なる場合もあるらしいが、防衛部隊で扱う弾薬はきっちり規格化されている──が、この対戦車砲弾は90mmだ。俺の機体でAKMを撃つよりも強力な砲撃は、レイダーの肩を抉り取るには十分すぎる威力だった。


「もう一発、Fire(撃て)


砲撃をした事によりレイダーが此方に気付くが、すぐ様2発目の砲撃をレイダーの頭部にぶち込む事で事無きを得た。


味方の一人がやられた事に気付いた付近のレイダーが攻撃元を索敵するが、索敵し終わる前に砲撃を敢行し、各個撃破して行く事で順調に個体数を減らして行った。


時折接近して来る個体も見られたが、此方へと辿り着く前に砲撃し、迎撃する事が出来ている為、俺は無傷のままである。


その後も砲撃を続け、順調にレイダーの数を減らして行く。付近では防衛部隊が展開したと思しき旧型の無人アナライザーが、手に持つライフルでレイダー達を屠っているのが確認できた。例え旧型であっても、ある程度数が揃えばその弾幕は強固なものとなる。


現に無人アナライザーの損害は軽微な様で、レイダーの攻撃に被弾した機体も他の機体にカバーされながら戦線を維持し続けている。優秀なプログラムでなによりだ。


ふとモニターの左上のマップ表示に目をやると、IFF(敵味方識別装置)によって識別されたレイダー達の数がほぼ消滅しているのが確認できた。それと同時に、このCRE-90に搭載された弾薬が底をついたのが、残弾数のカウントが0になっている事で確認できた。───頃合いだな。


「メルトよりアイギス。弾薬が尽きた、帰還するよ。」


オペレーターにのみ繋がる専用のチャンネルで通信を開き、帰還を告げておく。本来ならばコールサインがあるが、ランス2としての任務は一度終えた形だ、致し方無い。


『こちらアイギス、了解です。無事に戻って来て下さいね?』


「了解した。安心してくれ、さっきよりも機体は軽くなってる。」


『ふふっ、そうですね。』


通信を切り、CRE-90を走らせる。人が乗っていないとは言え、破壊されれば戦力の損失には違いないのだ。それに、破壊されるのをカメラ越しとは言え間近で見るのはあまり気分の良いものじゃない。


念のため後方を確認しつつ砂漠を突っ切る。拠点はそう遠く無いのもあってか、到着までにそう時間は掛からなかった。


道中、上を見上げると一機のアナライザーが拠点へと帰還して行くのが見えた。白銀のフレームに角張った装甲、腰に差された2本の(つるぎ)


恐らく、サーベル1。


ヘンリクの機体だろう。


先程トリシャに各エリアの戦況を聞いておいたが、俺達が指揮官個体を撃破するよりも早く、自らが受け持つ戦場のレイダーを殲滅して終えていたそうだ。


遥かな高み。


そう形容するのが一番しっくりと来る、圧倒的な戦闘力。


いつか、あの高みに追い付ける日が来るのだろうか…


そう考えながら、俺は拠点へと辿り着くのだった。







お読み頂き、ありがとうございます((*_ _))ペコリ

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