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朧火の意志  作者: 布都御魂
11/46

デブリーフィング

更新がだいぶ遅くなってしまいました…。

すんません…。


レイダーの殲滅を終えた俺たちは、駐屯部隊の待つ商業区Bブロックの外に展開された防衛ラインに帰還した。


防衛ラインでは駐屯部隊の面々が待ち構えており、両手を振って俺たちの帰還を祝ってくれていた。


「英雄のご帰還だ!!」「よくやってくれたぞ!!!」「良いもん見れたぜ!ありがとな!!」


皆、口々に喜びの声を挙げて、俺達を歓迎してくれている。少々気恥ずかしいが、気分は悪くなかった。


──英雄、か…。


彼らの期待を裏切らないよう、精進しないとな。


駐屯部隊の少し手前で機体を静止させ、昇降ワイヤーで地上へと降り立つ。


降り立った先には、無精髭を生やした軍服に身を包む男が待ち構えており、その表情は随分と晴れやかなものだった。


「君たちがメイス隊だな!!素晴らしい活躍だった!!礼を言う!!」


声から察するに、先程無線で連絡を取り合っていた駐屯部隊所属のスパロー1のようだ。


「こちらこそ、間に合って良かった。」


ヴィンセントが返答と共にスパロー1と握手を交わす。


「救援が迅速だったお陰でこちらの損害は軽微なものだ。強いて言うなら弾薬費が痛手かな?」


「それは良い。弾薬費なんぞ、兵の命よりも安いのだからな。」


「違いない!」


ワッと空気感が笑いに包まれる。


確かに弾薬費と比べれば、兵の命──客観的な見方をするなら人的資源だ──は重たいし替えがきかないものだ。弾薬や兵器は資源を用いて再生産すればいいが、人間はそうもいかないのだ。


どれだけ優秀な兵器があろうと、それを扱う者がいなければ無用の長物と化す。だからこそ、兵士というのは高級品なのだ。


「さて、撤収作業はこちらで済ませておく。メイス隊は帰還して貰って大丈夫だ。」


「そうか、助かるよ。後始末、よろしく頼む。」


「任せてくれ。でないとこちらの仕事が無くなるからな。」


「では我々はこれにて。──メイス隊、撤収するぞ。」


「「了解」」


駐屯部隊の見送りを背中に受けつつ、昇降ワイヤーで機体へと戻る。


システムを立ち上げ、ブースターを点火する。姿勢を安定させつつ推進力を上げ、俺達は商業区を後にするのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


宿舎.リビングルーム


商業区を後にした俺達はガレージに機体を戻し、リビングルームでデブリーフィングと報告書の作成を行っていた。


書き方をヴァネッサに習いつつ、報告書を書き上げていく。難解ではないものの、書く項目は多かった。


「そうさね…最後にそこにサインして……うん、上出来さね!」


「手伝ってくれてありがとう、ヴァネッサ。」


「気にするこたぁないさね。今後キチンと継続してくれるってんなら、この程度安いもんさね。」


そう言いつつ、ヴァネッサは報告書を手に自室へと戻って行った。


ヴァネッサの自室は書斎を兼ねており、書き上がった報告書は、あそこでヴァネッサが保管している。弾薬費や修理費と言った諸経費を、自室に持ち帰ってやり繰りしてくれているのだ。


「書き上がったなら、メルト君にも意見を貰うとしようか。単刀直入に言う、試作機の具合はどうだ?」


ヴィンセントがタブレットで資料を精査しつつ、こちらに尋ねてくる。


「当然の話ではあるんだが…実戦運用において旧型機と比べると性能は段違いだ。手のマニピュレーターの反応も早いし、動作もスムーズだ。」


「ふむ……では、ブースターはどうだ?燃費だったり、その辺について聞きたい。」


「燃費は……出力を上げるとどうしても悪くなる、かな。通常の移動速度なら問題はないが、高出力で噴射すると燃料の減りが痛手になりそうだ。」


「まぁーそーだよねーー。ブースターの出力が上がるって事は、燃料もその分必要だもんねー。」


クッキーを口に咥えつつ、アンジェが同意する。


「ブースターには改良の余地が有り…か。なるほど、参考になったよメルト君。」


「なら良かった。」


「デブリーフィングは終わったかい?」


自室から戻ってきたヴァネッサが、タブレット片手に尋ねてくる。


「ああ、丁度今終えたところだ。」


「ならいいさね。……次の作成について、話しておこうじゃないか。」


「……大規模襲撃の件か。」


「話が早くて助かるよ。出撃前にも伝えた通り、さっきの戦闘は前哨戦に過ぎない。こちらの戦力を分析した上で、かなりの規模で仕掛けて来るだろうさ。」


1体1体の強さはそこ迄では無い。旧型機や地上兵器で侵攻を食い止められる程度には、個々の戦闘力は高くないと言えるだろう。


だが、それは数的有利が確立されているからこその話だ。大規模襲撃では、この何倍もの規模でこちらを潰しに掛かって来る筈だ。


「既に商業区の住民には地下シェルターへの避難勧告を防衛部隊権限で発令してある。戦力は不足気味だが…やるしかないさね。」


「もうすぐヘンリク達も戻ってくる。防衛部隊を総動員して、迎撃に当たる他あるまいよ。」


「数的な戦力差は自立兵器で埋めるしか無さそうだ。幸い、先行して本部から自立兵器を大量に輸送して貰ってる。…たまには上層部も約に立つもんさね。」


防衛部隊で用いる自立兵器は、俺が乗っていた旧型機であるQ-65をベースに設計された自立思考型のアナライザーだ。指揮官個体を中心として1+5機で編成され、統率のとれた戦闘が可能となっている。


当然、有人機と比べると個々の戦闘力はそこ迄高くないが、人的資源の消費を抑える上では有用な兵器となる。


型番は自立思考型戦術アナライザー『AQ-67』。Q-65の後期モデルを転用したものである為、Q-65よりは戦闘能力は高いが元が旧型というのもあって動きは鈍重なものとなっている。


しかし頭数を揃え数で相手を制圧するという戦術には、低コストかつ統率のきくこの兵器は非常に有用な兵器として各国で採用されている。


軍が必要とするのは強力かつ貴重な高級品でなく、安価で替えのきく汎用品なのだ。


「今回の作戦は敵さんの数が多い。よって作戦遂行時はツーマンセルで当たってもらうよ。」


「割り振りはどうする?」


「均等に割り振る必要があるからねぇ…メルト、アンタはジャックと組みな。アンタらの戦闘スタイルならお互いやりやすいだろうさ。」


やりやすい、とはどういう事なんだろうか…?


「そんじゃあヨロシクなメルト?後でミーティングでもしようぜ。」


相変わらずグラスを磨きながら言うジャック。今磨いているのはカクテルグラスか…いや、そんな事は今は置いておこう。


「分かった、よろしくなジャック。頼りにしてる。」


「あとはそうだねぇ……モーリス、アンタはアタシとだよ。異論は無いね?」


「うへぇ…マジで?」


げんなりした様子でモーリスが返答すると、ヴァネッサがギロッとモーリスを睨みながら、


「ア゛ぁ!?」


と凄む。


「ヒッ!?い、異論ありません!!」


すげぇなヴァネッサ。


「丁度いいさね、この際みっちり鍛えてやるよ。覚悟しな!!」


「へーい……」


……ヴァネッサに逆らうのはやめておくとしよう。


「それからアンジェ、アンタはヴィンセントと組みな。連携も楽だろうしね。」


「しょーじき助かるかな〜。ヴィンセント合わせてくれるしさ〜。」


クッキーをほっぺに入れたアンジェが呑気につぶやく。リスかお前は。


「はぁ……合わせるこっちの身にもなって欲しいけどな……。」


「苦労をかけるね、ヴィンセント。あとはヘンリクのアホだけどアイツはまあ、1人でいいか?」


「1人!?それは流石に無茶なんじゃ…」


流石のヘンリクでもキツイんじゃないだろうか…


「ん?あぁ、メルトは知らないんだったねぇ。ヘンリクは『閃撃』の二つ名を持つ凄腕のパイロットなのさ。むしろソロの方が気兼ねなく力を震えるんだよ。」


二つ名を付けられる場合は、大まかに分けて二つある。『畏怖』と『尊敬』だ。ヘンリクは恐らく後者だろうが、敵方からすれば畏怖の念を抱くだろうな…


「トリシャはいつも通りオペレーターについてもらうとして……噂をすればご本人達のご帰還さね。」


ヴァネッサのつぶやきと同時に部屋の扉が開き、ヘンリクとトリシャが入ってきた。


「ただいま戻りました。」「戻ったぞ。」


「二人ともお疲れさん。帰ってきて早々悪いが、作戦会議といこうじゃないか。」


「ふむ、私達がいない間にも襲撃があったようだしな……時間は残り少ないか。」


コートをハンガーに掛けつつ、ヘンリクがつぶやく。


「よく分かってるじゃないか。──それじゃあ、ブリーフィングを始めようかね。」


先の前哨戦とは規模の違う、緊張感の漂うブリーフィングが今、始まった。


大丈夫。


やるべき事をやるだけだ。








どうも、布都御魂です。

少々忙しい日々が続き、更新が途切れてしまいました。

今後とも不定期ですが、お読み頂ければ幸いです。

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