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朧火の意志  作者: 布都御魂
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初陣


『出撃準備急げ!!メイス1から射出するぞ!!』


ガレージが喧騒に包まれ、時折怒号が飛び交う。


今現在、メイス1であるヴィンセントの機体がカタパルトに接続され、出撃まで待機している状態である。


訓練場に行く場合はそのまま移動するが、出撃任務の場合はカタパルトで射出し、加速状態から出撃を開始するのだ。


ビーーーッとブザーが鳴り響き、ゲート上部のランプが緑色に点灯する。


『メイス1、出るぞ。』


カタパルトが起動し、メイス1の機体を前へ前へと押し出して行く。カタパルトから離脱すると同時にブースターを噴射し、上空へと飛び出して行った。


『よぉし、次だ!メイス2、行けるか!?』


『行けるよー!!バッチこーい!!』


テンションの高いアンジェの乗るSB-36がカタパルトに接続され、同様に射出されて行く。


次は俺の番だ。


『メイス3!準備はいいか!?』


「準備は出来てる。何時でも行けるぞ。」


ちゃんと機体には武装が施され、完全武装されている。あとは出撃するだけだ。


『よぉし、行ってこいっ!!!』


「メイス3、出撃する。」


カタパルトが起動し、機体を前へと押しやる。離脱直前にブースターを噴射、俺は上空へと躍り出た。


耐G緩衝装置により軽減されたGが俺に牙を剥く。軽減装置によって限りなく抑えられてはいるが、それでも長時間これを耐え続けるのはしんどいだろう。


そんな事を考えつつ飛行している内に、視界内にメイス1とメイス2の機体を捉えた。


『あ!メルトだー!やっほーーー!!』


アンジェが飛行しつつアナライザーの手を振っている。器用な事だが、およそ戦いの前とは思えない緊張感の無さだ。


『メイス2、落ち着け…。メイス3、調子はどうだ?』


「良好だよ、メイス1。」


『それは良かった。……おや、ヴァネッサからの通信だ。』


『──メイス隊、聞こえてるかい?アンタ達のIFF(敵味方識別装置)にアクセスして、友軍識別タグを更新しておいた。これで駐屯部隊を友軍として識別出来るはずさ。』


ディスプレイに表示されているレーダーに青色の点と赤色の点が表示されていた。青色が友軍で赤色が敵軍、つまりレイダーとなる。


『まもなく目的地上空だよ、気合い入れな!!』


そう言って、ヴァネッサの通信が切れる。


『聞いたな?メイス2、メイス3。これより目標地点に降下を開始する。準備はいいか?』


『モッチロン!!』


「勿論だ。」


覚悟はとうに済ませてある。


『よろしい……よし、目標地点に到達。降下開始。』


掛け声を聞いて、機体を降下させる。地面に降り立つ前にブースターを噴かせ、落下の勢いを減衰させる。


降下地点には友軍である駐屯部隊が戦線を維持しており、ターレットやミサイルを運用しつつ防衛ラインを維持していた。


『──ザザ──!─此方は商業区Bブロック駐屯部隊隊長、『スパロー1』ライナーだ。其方の所属を明らかにせよ!!』


『此方はエリア021防衛部隊の副隊長、『メイス1』ヴィンセントだ。加勢する。』


『─!防衛部隊か!ありがたい!!レイダー共を排除してくれ!!頼んだ!!』


『了解した──メイス2、メイス3、やるぞ。』


『「了解」』


防衛部隊を下がらせ、レイダー共の前に躍り出る。


俺はバリスティックシールドを構えつつAKMを構え、臨戦態勢に移行する。


両隣ではアンジェがポーランド製サブマシンガンである『PM-84』を2丁持ちで構え、ヴィンセントが俺と同じ様にバリスティックシールドを構えつつベルギー製アサルトライフルである『FAL』を構えた。


『3、2、1───Fire(撃て)


号令と共に、引き金を引いた。


マズルフラッシュが迸り、それぞれの銃に装填された銃弾が銃口から躍り出る。


フルオートで放たれた弾幕は機関銃の弾幕には見劣りするものの、レイダー共が前進する勢いを削ぐには十分であった。


勿論、長時間弾幕を張ることは出来ない為、継続的な弾幕を張ることは出来ないが、アサルトライフル2丁とサブマシンガン2丁による制圧射撃は、盾を持たないレイダー達にとって十分すぎる脅威であった。


案の定、レイダー達が足を止めるが、弾幕を張り続けていた俺達の銃はほぼ同タイミングで沈黙する事となった。


『リロード!』


アンジェがマガジンを交換している間、俺とヴィンセントはサブウェポンでの制圧射撃を敢行する。


俺はハンドガンであるMP-443を引き抜き発砲する。弾幕は薄いが、牽制程度にはなる。


ヴィンセントもサブウェポンであるサブマシンガンのステアーTMP──オーストリア製のサブマシンガン──を引き抜き、弾幕を張っている。


『メイス3、よく聞け。メイス2のリロードが終了した後……打って出るぞ。』


「了解した。」


俺達は正規軍でなく、防衛部隊だ。整然とした戦闘でなく各自の判断での自由戦闘が許可されている。


勿論上官の指示を聞く必要はあるが、極端に戦術を縛る事は滅多に無い。


……というかそもそもだが、俺は傭兵としてゴルドー達の所で雇われる筈だったんだが……余りにもトントン拍子に話が進みすぎて、いつの間にか傭兵雇用で無く入隊という形になってしまっている。


──まあ今の環境も素晴らしいので、特に文句は無いのだが。


そんな事を考えつつ牽制射撃をしているうちに、アンジェのリロードが完了する。


『メイス2、メイス3、散開!Go!Go!』


合図と共にレイダーに向かって駆け出しつつリロードを開始する。


マガジンを引っこ抜き腰のラックへと空のマガジンを放り込む。そして新しいマガジンを取り出して銃に差し込んだ。


左手でコッキングし、薬室に銃弾を装填する。これで何時でもレイダーに銃弾をぶっ放せる。


AKMを構え、コックピット内でスコープを覗き込む。


覗き込むと言っても、最近行われた更新によってヘルメットにヘッドマウントディスプレイのように表示される様になった為、衝撃で目の上を打撲する事は無くなった。実に素晴らしい仕様である。


照準を合わせ、引き金を引く。


銃口からフルオートで放たれた7.62mm弾が一番手前にいるレイダーの機体をズタズタにする。


銃弾をモロに受けたレイダーは機能を停止し、そのまま崩れ落ちていった。


本来ならば此処で戦果を喜びたいものだが、此処は戦場だ。そんな事をしている暇はない。


仲間を撃破された事により俺を脅威と認識したのか、レイダー2機が此方に銃口を向ける。


アメリカ製のM3サブマシンガンのような銃を此方へと向け、フルオートで銃弾をばら撒いてくる。


だが防衛部隊で正規採用されているバリスティックシールドの装甲を、その程度の威力で貫ける筈も無かった。


表面に小さな傷を刻みつつ、跳弾していく銃弾。


防御はシールドに任せて、AKMをセミオートに切り替えて射撃する。


的確にレイダーのうち1機の頭部を撃ち抜き、機能を停止させる。


7.62mm弾によって荒々しく穿たれた銃痕は、ストッピングパワーの高さを物語っていた。


そのままもう一機もと思ったが、レイダーは弾切れになったサブマシンガンを投げ捨て、腰のサーベルを引き抜き此方に斬り掛かって来る。判断の早さは評価に値するが──剣で銃に勝てると思うなよ。


サイドステップで斬撃を掻い潜り、左脚でサーベルを踏みつける。体制が崩れたまま固定されたレイダーの頭部に、AKMを突き付け引き金を引く。


荒々しい銃声と共に銃口からマズルフラッシュが迸り、レイダーに致命的な大穴を穿つ。


ガクッと力が抜け、レイダーが機能を停止する。


周囲を見回しても、増援はいない。


任務、完了だ。


『──此方メイス1。メイス2、メイス3、状況を報告せよ。』


「メイス3よりメイス1、周囲のレイダーを殲滅した。」


『こちらアンジェ!同じく殲滅完了だよー!』


『……コールサインを使え、メイス2。まあいい、此方も殲滅を完了した。任務完了だ。』


どうやら上手くいった様だ。


『──こちらスパロー1、メイス隊、状況を報告せよ。』


『此方メイス1、レイダーの殲滅を完了。これより其方に帰投する。撃つなよ。』


どうやら銃声が止んだ事で察して連絡してきた様だ。


『おぉ!やってくれたか!!──了解した、部下にも伝えておこう。待ってるからな!!』


『よし──メイス2、メイス3、駐屯部隊の元へ移動するぞ。』


『はーーい』


「了解だ。」


こうして俺達は、駐屯部隊の待つ防衛ラインへと帰投すべく、ブースターを噴かすのだった。




お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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