3 メイド服、着てみる? 2
季節は春。桜が咲き誇り、生命力が満ち、一人の男がマイクロビキニを着ている。これからは春の季語にマイクロビキニが使えるようになることだろう。
秋月さんの提案で、俺達は秋月亭から武岡亭に移っていた。
俺は洗面台に映る自分の姿を改めて眺めた。見慣れた俺の肌にうっすいうっすい布が装着されている。乳首と股間を隠すオレンジ色の三角形。そしてそれらを繋ぐ紐。どっからどう見てもどう好意的な解釈をしてもこれを身に着けている俺は変態である。
「もう嫌だああああ!!」
俺は頭を抱えて突っ伏した。
「武岡くん、着替え終わった?」
突然、脱衣所の扉がシュパッと開いて秋月さんが現れた。
「うわあ! おもむろに開けないでよ!!」
「武岡くんこそ私に肛門を突きつけてどういうつもり?」
「銃口を突きつけるみたいに言うな! 秋月さんが急に開けるからそうなるんだよ」
何気なく秋月さんの方に振り返った瞬間、空いた口が塞がらなくなった。
頭には白いカチューシャ、体を覆うフリフリのエプロンドレス、そしてエプロン下の黒いワンピースの襟ぐりは大きく放物線を描いて抉れ、彼女の豊満な胸を遺憾なく露出させている。何ということでしょう。皆さん、ドスケベメイドの出来上がりです。
「あ、あ、え? メイド服、着たの?」
彼女のメイド姿に見とれていた俺が何とか振り絞った声はそれだった。
「うん。武岡くんにだけ恥ずかしい格好させたらフェアじゃないから」
「だとしたら依然としてアンフェアだよ?」
「とにかく着替えが終わったら居間に来てね」
秋月さんはそう言うとさっさと行ってしまった。
所変わって居間でございます。
「何で恥ずかしそうにしているの?」
俺が股間をおさえてモジモジしていると、秋月さんがジロジロ眺めてくる。
くっ! 殺せ!
「そんなのを選ぶのなんてとんだ変態さんだね」
「いや秋月さんが着ろって言ったんじゃないか!!!」
「さっきも言ったけど私は『どれが良い?』と聞いただけ。それとも、もしかして武岡くんは私にそれを着せようと思っていたの?」
「あ、いや」
「どっちにしろ変態だね」
ぐぬぬぬぬぬう!! どうも変態ですう!! この格好が説得力を120%ましておりますう!
「で、俺にこんな格好させてどうするつもりなの?」
「何そのエロ同人のヒロインが言いそうなセリフと格好」
「お黙り」
「別に、私は男子高校生のマイクロビキニ姿を眺めてみたかっただけ」
「興味本位で口にしていい言葉じゃねえぞそれは」
「でもいざ見ると性欲より面白さの方が勝ってどうでも良くなってしまった」
「お前しばくぞ」
「逆にさ」
秋月さんは前髪を撫でつけ、俺の目を見た。
「メイド服の私にして欲しいこと、ある?」
え? それって……?
「ご主人さま、何なりとお申し付け下さい」
秋月さんは両手を揃え、ペコリと頭を下げた。重力で真下に引っ張られた秋月さんの胸が、より一層大きく見えた。




