12 プール掃除しよ? 4
「武岡くん、その調子」
建物の日陰で元気を取り戻した彼女は俺の手をがっしり掴み、目を輝かせている。
彼女が水着というのもあって非常にセンシティブな気分になってくる。決して「ぐへへ、俺の水着の中のモノも握って欲しいな」などとは考えていないが、こんな可愛くて胸が大きくて水着の女の子に手を引かれるなんて、言語化するだけで思春期真っ只中の俺の頭は沸騰しそうだった。
「次は話の流れで、さりげなく『お尻を見せて』と要求して欲しい」
「どういう流れなんだよ。それ秋月さんが住吉の尻を見たいだけじゃないか」
「そうだよ」
「そうだよね」
「話の流れは武岡くんが組み立てて欲しい。とにかく『じゃあ俺たち一緒に肛門日光浴するか!』となれば良いわけだから」
「なるわけねえだろ! どんなインシデントがあったら男二人で肛門を太陽に見せつけようと思うんだよ!」
俺が幾らつっこんでも秋月さんは引く様子が無い。常にその瞳を太陽のように爛々と輝かせている。
「肛門日光浴が駄目なら『実は俺、けつあな占いが得意なんだけど』と言えば良い」
「『言えば良い』じゃねえよ! まず俺どういう人生の出来事からその占いを習得しようと思ったんだよ! 俺のバックボーンがけつあなでしか見られなくなるだろ!」
「じゃあシンプルに住吉くんのお尻を見ないと死んでしまう病気だと言えば良い」
「いやバレるだろその嘘! 秋月さんどんだけ住吉のケツが見たいんだよ!」
秋月さんはため息を付く。
「はあ、このわからず屋」
「この変態! だいたい……」
次の瞬間、不平不満を言おうとしていた俺の口は開いたまま閉じることを忘れていた。口だけではない。目も、鼻の穴も恐らく大きくオープンしていた。
決してこの瞬間にらめっこをしたくなったからではない。
秋月さんが、自分の谷間に手を突っ込んだのだ。
彼女は自分の手をモゾモゾと動かす。その仕草で胸が不規則に揺れ、柔らかさと弾力をこれでもかと言うほど遺憾なく発揮している。
「あったあった」
俺が変顔して止まっている中、秋月さんが胸の谷間から何かを取り出した。
それは彼女の手には収まらないほどの棒状の物で、日光に反射してピンク色にテラテラ光っている。そう、皆様ご想像の通り、それは厚切りベーコンであった。いや待て、何でそんな物胸と胸の間に挟んでたんだよ。サンドイッチか。そうか、サンドイッチだな。
「厚切りベーコン」
某猫型ロボットのようなだみ声で言う秋月さん。全然似てないけど可愛い。
「て、手品かよ」
俺は自分の集中力を秋月さんの胸から離すのに苦労しながら、ようやくつっこんだ。
「ここにしか仕舞うスペースが無かったから」
谷間って収納スペースにもなるんだ。何て便利なんだ。俺も付けようかな。
秋月さんはねっとりした厚切りベーコンを俺に突き出し、言った。
「これを頭に乗せて欲しい」
「どういう要求なんだよ」
恐らく真顔で厚切りベーコンを頭に乗せろと言われたのは世界で俺だけなんじゃないだろうか。
「武岡くんがこれを頭に付けて住吉くんのところに戻ると、住吉くんはベーコンに気付くでしょ?」
「まあこんな明らかな異物が頭にくっついてたらそうだろうね」
「そしたら住吉くんが『おい武岡、頭にベーコン付いてるぞ☆』と言ってぱくぱく食べてくれるはず」
「何だそのイカれた少女漫画みたいな展開は!」
「そして住吉くんの舌は頭から武岡くんの身体を下に、そう、その舌はヘビが這いずるように身体を蹂躙する」
「こんな時に文章力発揮するのやめろ」
「そして住吉くんの舌は水着までたどり着き、水着をずり下ろすの」
「舌の力エグすぎるだろ」
「そして彼は言う。『おや、こんなところにもう一つ厚切りベーコンがあるぞ☆ 食べちゃお☆』と」
「何だその純度100%の下ネタは!! お前公衆の面前で俺と住吉に何させようとしてくれてるんだよ!」
「さあ早く行ってのび太くん」
「誰がのび太くんだ!」
「私の言うこと聞く約束はどうしたの?」
くっ!
そうだ、約束がある以上、俺は秋月さんには逆らえない。そもそもベーコンを頭に付けて行ったところで秋月さんの想像通りになる確率はほぼ0である。ここは従うしかないか。ただその前に……。
「あ、あのさ、秋月さん」
「何?」
「そのベーコン、今ちょっと食べて良い?」
「駄目」
くそっ!!!




