8 編集さん、来るらしいよ? 3
「うん、これなら行ける気がする」
「秋月先生なら直木賞も夢じゃありませんよ!」
「ちょっと待て」
俺は盛り上がっている二人の間に割って入った。
「どうしたの、武岡くん。USB挿されたいの?」
「違うわ。いや、どう考えてもそのまま書いたら大変なことになる気がして」
秋月さんと林さんは顔を見合わせている。
「それは、どういうことですか?」
林さんがいぶかしげに聞いてきた。お前よくUSBケツにぶっ刺すような発想しといて人にそんな顔向けられるな。
俺は先程まで話されていた内容のおかしな点を一つ一つ指摘していった。尻が光ること、ゲーミングア○ル、主人公がUSB端子、そのUSBをケツに挿すバカ、あと何よりクリロナがマズすぎる等など。
その上で主人公がウケの子を見つける現実的な方法を幾つか思いついたので提案してみた。
その一つは、主人公は完璧超人だが唯一成績で勝てない相手がおり、それがウケの少年。主人公は何かとその少年に勝負を挑むようになるが、やがて別の勘定が芽生え始め……。
「それで行きましょう!」
林さんが食い気味に言った。
「すみません、私、BLにになるといつも興奮して作家さんを変な方向に導いてしまって、その度に編集長から怒られるんですよね。今回もそうなりそうだったので、武岡きゅんのお陰で助かりました!」
毎回こうなのかよ。よくクビにならないなこの人。あと武岡きゅんて。
「流石私が目をつけただけはある。どうも武岡くんはBLの才能がある気がする」」
秋月さんは何故か得意げであるが、そんな不本意な才能要らん。
「そうだ、これから秋月先生と会議するときは武岡きゅんも入れて三人で行うってのはどうですか?」
え?
「そうね、武岡くんも仲間になりたそうにこちらを見ていることだし」
「見てない見てない!」
「いや、USBを挿して欲しそうな顔ですよこれは!」
「お前はまだ己の過ちに気付いていないのか?」
こうして俺は、この時から何故か秋月さんの小説制作に携わることになったのである。
次の話からやっとストーリーが動く予定です(まだ書いてない)