7 幽霊、出るらしいよ?
俺の隣には同級生の女子が住んでいる。しかもその女子こと秋月さんは、俺が背伸びしても届かないような美少女であり、俺も彼女も一人暮らしという豪華特典付きである。
こんなエロゲー展開待ったなしの美少女付きドスケベ賃貸物件に住んでいるちんちん付きの我だが、秋月さんには出て行って頂きたいと思っている。ついでにセミの抜け殻みたいな「付き合ってる」状態も解消したい。
こんな男なら誰もが憧れるような優良物件を、何故手放そうとしているかというと、まあ理由は色々ある。
だが一番は以前も述べたとおり学業の妨げになるからだ。
俺にはどうしても東京の大学に受からねばならない理由がある。そこに受かるためには、高校一年生の今の時期から狂ったように勉強していないと無理なのだ。
で、それがどう秋月さんと絡んでくるのかと言うと、彼女は引っ越してきてからというもの、頻繁に俺の衣食住をクロールでドチャクソかき乱し始めたのだ。
先ず「食」について。
秋月さんがこっちに来てからというもの、毎日夕食をウーバーイーツで俺の部屋宛に頼み始めた。
まあ十歩譲ってそれは良い。彼女も一人暮らしで不安な面もあるだろうから俺は文句言わず受け取っていた。しかし、届けられる食べ物が尽く油でギトギトか栄養スカスカか砂糖モリモリの反復横跳びみたいな三択しかなく、俺は段々心配になってきた。
いくら彼女がまだ若いとは言え、こんな食生活をしていたら体を壊すに決まっている。
だからつい「今日カレー作りすぎちゃったから、秋月さんも一緒に食べない?」と誘ったのだ。今思えばこれが間違いだった。何故野良猫に餌をやってはならないか、俺は思い知ることになる。
目を輝かせてカレーを食べていた秋月さんは次の日も、その次の日も夕食時になると1000円札を握りしめて俺の家のチャイムを鳴らすようになった。どうやら彼女は俺の家を飯屋か何かだと思っているらしい。
まあ百歩譲ってそれは良い。二人分作るのも後片付けも面倒だが、ちゃんと食費を払ってくれるし、あのまま秋月さんがウーバーライフを満喫してウーハーみたいな体型になっていくことを考えたらこっちの方がマシだ。
だがどういうつもりなのか知らないが、秋月さんは毎日俺の家に来る時とんでもない薄着で来る。真水を出汁にスープを取ったしたラーメンみたいな薄さだ。
上はキャミソールに下はパンツが見えそうな程短いショートパンツ。
一応、カーディガンのような上着を一枚羽織っているのだが、前は留めてないので全く意味がない。
ブラジャーの紐は見え放題だし、太ももはむっちり仕放題だし、胸の谷間は、親鳥から餌をねだる雛鳥ばりに主張が激しい。
ちなみに下に履いているズボンが「ショートパンツ」という名称なのはスマホで調べて分かったことだ。調べたのは単純に知的好奇心からで、決して秋月さんに新たな性癖の扉を開かれたからではないし、通販サイトで眺めていたら間違って注文ボタンを押したりしたりしていないし、届いたものを「勿体ないから」と自分で履いていないし、決して記念に写真を撮ったりなんかしていないし、その様子を秋月さんに見られたりしてはいない。
それだけではない。(それだけではないというのは俺の愚行のことではない)
俺は一週間前から彼女の洗濯物も代行するようになっていた。ここまで来るともはや家政婦といっても過言ではないだろう。女子高生の衣服を洗濯するなんて、金を払ってでもやりたいという男もいるだろうが、残念ながら俺にそんな趣味は一切無い。匂いフェチでもないし女子高生が着たものであっても汚いものは汚いし臭いものは臭いと思ってしまうのだ。
「秋月さんは俺に洗濯されて恥ずかしくないの?」と聞いたことがあるのだが、「一人でショートパンツ履いて自撮りしているところを人に見られるよりは恥ずかしくないよ」だそうだ。恥ずかしくないらしい。
「武岡くんの家の水道代は私が払うから」と申し出る彼女だが、そういう問題ではないのだ。幾ら俺にそういう趣味が無いとはいえ、彼女の甘い香りがふんだんに染み込んだ衣服を手に取ると変な気を起こしそうになる。
だが決して俺は秋月さんのブラジャーとパンツを装着したりしていないし、それを持ってして自撮りなんてしていないし、その写真を誤って妹に送ったりもしていないし、妹から注射を打たれる犬みたいなパニクった声で電話が来たりしていない。そしておっちょこちょいの妹が誤って俺の自撮り写真をクラスのグループラインに送ったりしていないし、その画像が海外のポルノサイトに漂ったりいたりしていない。
まあそんなことはどうでも良い。
問題は、どうして俺が秋月さんの衣服を洗濯しなければならないのかということだ。
一度、強く彼女に抗議したことがある。すると彼女は
「私だって、こんなこと誰にでも頼むわけじゃない。武岡くんを信頼しているから頼むの」と俺の手を取り言うものだから、俺の攻撃力は0になってターンエンド、ついでにゲームセット。我ながらチョロい奴だという自覚はある。
まあ1000歩ずってそこまでは良い。食事の準備だろうと洗濯だろうと俺に任せれば良いさ。だが一昨日から、あろうことか秋月さんは俺の家の風呂に入り始めた。つまり俺の家で裸になっているのだ。
「ガス代も払うから」という彼女だが今回ばかりはそうはいかない。
俺は高校一年生絶賛思春期真っ盛りの男子。思春期の男というのは九割九分モンキーなのである。
猿と女子が同じ部屋に二人切りでいること自体危険なことなのに、あまつさえ彼女はすっぽんぽんになっているのだ。秋月さんは俺を信頼しているのかもしれないが、猿は猿である。
彼女のすっぽんぽんが脳裏にちらつき勉強どころではない。国語の課題で「この登場人物の心情を推測しなさい」みたいな問題が出てもすっぽんぽんの秋月さんの乳首の色を推測すっぽんぽんなことに脳の容量大半を使ってしまっている。
しかもうちのマンションは一人用で部屋数も少ないため、秋月さんが風呂から上がると音で分かるし、シャンプーの良い匂いが俺の鼻を刺激する。
もう頭も股間もオーバーヒートしそうだ。
俺の集中力は日に日に削がれる一方だ。彼女がうちに来るようになってからというもの、全く勉強が勉強になっていない。このままだと大学に落ちるだけではなく、理性さえ失い、彼女に手を出してしまうだろう。
だからこそ、俺は秋月さんを追い出すためのある計画を立てた。




