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4 近道、してみる? 1

 う〜! 遅刻遅刻ぅうううううう↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↓↓←→←→BA

 僕はこの青稜高に通うごく一般的な男子高校生! 名前は武岡星矢! しいて変わってるところを挙げるとすれば彼女が寝取られ好きの変態ってことと、先日マイクロビキニを着てクッキングしてたら警察のお世話になったことカナ?????


 いやふざけている場合ではない。今めちゃくちゃ学校に遅れそうなのだ。俺は父親とのある約束を果たすため、東京の有名私立大学に合格しなければならない。そのため先生の評価を一点たりとも落とすわけにはいかないのだ。

 くそっ! 昨日秋月さんにBL音声『お前の尻を叩いて年明け除夜の鐘』を遅くまで強制的に聞かされるという極めて非人道的な拷問さえ受けていなければ、俺は寝坊することなど無かったのに!

 半分睡眠状態の頭で俺は考えていた。音声の男が低い声で何か囁きながら、ケツをペチペチ叩く音が響く様はさながら坊主がお経を唱えながら木魚を叩くのとよく似ているのではないか。ともすれば俺は邪淫と解脱を同時に試みるという、仏教史上始めての試みを行っているのではないか、と。


 話を戻す。

 通常のやり方では間に合わないと判断した俺は学校のフェンスをよじ登り、裏手から部室棟へぶっ飛ばした。この学校の部室棟は少し特殊で、旧校舎の一階をそのまま部室や倉庫に使っている。

 俺がここを通ったのは、真っ直ぐ抜けていけば本校舎に直通しているからだ。

 廊下を走っていたその時、見慣れた背中が目に写った。

「秋月さん?」

 振り返った彼女は大きな瞳で俺を見返してくる。

「武岡くん」

「秋月さんも?」

「ええ、BLの匂いに誘われてきたんでしょ?」

「違うよ」


 秋月さんは、いつだってブレない。

「っていうか秋月さん、走らないと遅れるよ! 早く行こうよ!」

「私に構うな、先にいけ」

「何その死亡フラグビンビンの台詞」

「私は遅刻を気にしない。中学の頃から気にするような成績じゃ無かった」

「そんなに良かったんだ」

「逆。国語以外の点数は全て地の底を這っていた」

「じゃあ尚更急げよ!」


 不意に視線を感じた。その理由に気付いた瞬間、一気に空気が張り詰めた。

 右前の教室が煙草の煙で充満している。その中から柄の悪い生徒達……恐らくスポーツ推薦の生徒達がこちらを見ているのだ。

 少し補足すると、この学校にはスポーツ推薦があり、全国的にも有名な選手達が集まってきている。だが、スポーツ推薦にまつわる悪い噂は後をたたない。


 どうやらこの青稜高校は、多少素行に問題のある生徒でも、部活で優秀な成績を残していれば不問にする文化があるらしいのだ。だからこのように、どう考えても授業サボる気満々の喫煙者達が見逃されているというわけだ。

「行こう」


 俺は秋月さんの手を握り、一気に廊下を歩き去ろうとした、が、一歩遅かった。

 部室から出てきた男たちが俺達の前に立ち塞がった。


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