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辿り着いた場所



 連絡員の男に案内されて歩き続けることしばし。

 先が見えず、ずっと同じ景色ばかりが続いた細い通路にもようやく変化が現れる。

 一本道と思われた通路だったが、十字路に差し掛かったのだ。



「分かれ道があるんだ……」


「ああ。ここから先は迷路のようになってる。途中ではぐれたりしたら迷って出られなくなるぞ。俺だって決まった道順から外れれば迷うんだからな……さあ、こっちだ」


 そう言って連絡員の男は十字路を右に曲がる。

 その先は、彼がいった通り幾つもの分かれ道が続いて複雑な迷路のようになっていた。



(……王都の地下にそんなものがあるとはな)


(アルド陛下は全然知らなかったんですか?)


 エステルは自身の状況を念話で逐一アルドに報告している。

 今も、彼女から地下の様子の報告を受けたアルドだったが、その予想以上の規模に驚いている様子だった。


 そして、この王都の主とも言えるアルドが、これだけの規模の地下施設の存在を知らなかった事について、エステルが疑問を持つのも当然だろう。



(この街の歴史は非常に古い。それこそ王国が成立する前から存在しているが……忘れ去られた古代の遺構なの一つなのかもしれん。実際、今でも時折その時代の遺跡が見つかることがあるんだ)


(へぇ〜、ロマンがありますねぇ〜)


(しかし、それほど大規模のものなら……もしかしたら君が言う通り王家には伝わっていたのかも知れない。だが、俺が王位を継いだ時期は少しゴタついてたからな。いや、しかし……仮にそうだとすると……)


 そこでアルドは口籠る。

 エステルは続く言葉を待っていたが、もうそれ以上は語られる事はなく、彼女も追求することはなかった。




 それから、また暫くは連絡員の男の案内で迷路のような地下通路を進んでいく。


 ……因みに、エステルは以前自分で豪語した通り、一度通った道は忘れることがない。

 今回も複雑な道順をバッチリ記憶している。

 更に、分かれ道の度にどちらに行くのかを都度報告しているので、地上側ではそれを元に宵闇亭からの道順を記した簡易的な地図も作られていた。

 更にそれに加えて、彼女は距離感や方向感覚も恐ろしいほど正確なので……王都の地図と照らし合わせて、おおよその現在位置も把握することが出来たのである。

 ここでも彼女はそのチートぶりを発揮するのだった。






 そして、もう小一時間ほどは歩いただろうか。

 エステルの前に、再び上へと昇る階段が現れた。



「着いたの?」


「ああ。大人しくしてろよ」


 どうやらようやく目的地に着いたようだ。


 しかし、エステルの報告からおおよその位置を割り出そうとしていたアルドたちは、彼女たちが向かった先が、地上側でどこに位置するのかを見て驚愕する。










「馬鹿な……これは本当か!?」


「う〜ん……陛下から聞いたエステル嬢の報告が確かなら……」


 アルドが驚愕の声を上げ、彼と一緒に地図を確認していたディセフも驚きの表情で唸る。



「あいつの感覚は動物並……いや、それ以上です。そんじょそこらの野良犬なんかよりよっぽど感覚が鋭いですよ」


「……比較対象が酷いが、まあ彼女の感覚が非常に優れてるのは分かった」


 アルドは、クレイがエステルを野良犬と比較することに若干引きながら言う。

 せめて野生の狼とか、他に言いようはなかったのだろうか……

 相変わらず幼馴染の扱いが酷いが、これでもクレイはこの中で一番エステルを信頼している……はずだ。




「しかし、そうするとこれは……一体どういう事でしょうか?」


「……さあな。だが、思ったよりも相当に厄介な相手なのは間違いないだろう」



 エステルが辿り着いた場所。

 それは彼らがよく知る場所だった。



「……何故こんな場所に」


「分からん。何れにしても、もう少し情報を集めなければ……それに、かなり慎重な対応が求められるだろう」



 もともと組織の裏には大きな力を持った何者か……貴族や大商人がいる事を、彼らは予想していた。


 しかし、それはある意味では正しかったが、彼らの想像を遥かに超えていた。




 エステルが連れて行かれた地下通路の先。


 それは、この王都で最も神聖であるはずの場所……エル・ノイア神殿であった。


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