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叙任式2



 騎士の叙任式に臨んだクレイとギデオン。

 そしてエステル。



 クレイはエステルがこの場にいる事に大いに驚くが、一方の彼女はと言えば。


「やほ〜、クレイ」


「やほ〜……じゃない。何やってんだ、お前?」


「何って……見学だよ〜」


「見学って……その格好は何だ?」


「えへへ〜、良いでしょ。どお?似合ってる?」


「あ、ああ…………まさか、お前がそんな格好に興味があったとはな」



 そんなふうに、最初はいつもと変わらないやり取りを始める二人だったが……エステルのドレス姿の話になると、クレイは再び先程の感覚が呼び起こされた。


 そしてエステルはそんなクレイの様子には気付かず、王の前でガチガチに緊張しているギデオンに声をかける。


「あ、大っきい人もよろしくね!えっと、ギ、ギ……ギルバートさんだっけ?」


「い、いや…………」


「『ギ』しか合ってねえよ。ギデオンだ」


 緊張のあまり声が出てこないギデオンに代わってクレイがツッコミを入れた。

 ひとまず、自分でも分からない感覚には蓋をすることにしたようだ。




「コホン……陛下の御前ですよ。略式とはいえ騎士の任命は大切な儀式。これから王と国に剣を捧げる身として自覚なさい」


「「すみません!」」


「ごめんなさい〜」



 会話の切れ間を見計らって彼らを嗜めたのは、アルド達の後ろに控えていた宰相フレイ。


 本来であれば騎士の叙任式は、武官の長である騎士団長が主催すべきところ、不在のため彼が代理で進行する事になっているのだ。


 もっと言えば……登用試験の合否から新たな騎士の任命まで、本来であれば国王の任命の前に騎士団長の承認が必要となるはずなのだが、それに関してもディセフが代理として権限委譲されているのだった。



「まあ、そう堅苦しいことを言うな」


 フレイの至極当然な言葉に、しかしアルドは苦笑しながらフォローした。

 そして、マリアベルもそれに追従する。


「そうよ。クレイくんと私達は知らない仲じゃないんだから」


「え……?」


 マリアベルの言葉に、クレイは疑問の声を漏らす。

 たかが平民が、国王と王妹に面識などあるはずが……と思いかけたところで彼は気が付いた。



「もしかして、あの時の兄妹……?」


「正解よ!」


「あの時は世話になったな。こうして、また会えて嬉しいぞ」


 エステル達が彼ら兄妹と別れるとき、アランは確かに『またな』と言っていた。

 あの時クレイは、その振る舞いからアラン達を貴族だと考えていたが、まさか王族だったどは思わなかった。



「その節は、とんだ御無礼を……」


「お前も堅苦しいな……俺はあまり礼儀などには拘らないから、まぁ気楽にしてくれ」


「私もよ。エステルちゃんとはお友達になったから、あなたもあんまり畏まらないでね」


「は、はぁ……」


 あまりにも気さくな王族二人の態度に戸惑い、クレイは生返事をしてしまうが……


(……まあ、あんなお忍びで街に出てくるくらいだからな)


 そんなふうに納得するのだった。








 そして、クレイとギデオンの叙任が厳かに行われる。


「我、エルネアの王たるアルドの名において、ここに汝……シモン村のクレイを騎士に任ずる。偉大なる女神エル・ノイアよ、この者に何事にも折れぬ強き心と、守護を授け給え……」


 跪いて頭を垂れるクレイの肩に儀礼用の剣を当てながら、アルドは聖句を唱えて騎士への叙任を宣言した。


 そして、それを受けたクレイも儀礼に則り宣誓の言葉を紡ぐ。


「偉大なる女神と王に感謝し、謹んで拝命いたします。我、クレイは我が剣を偉大なる女神と我が王に捧げ、身命を賭して民を護る事をここに誓います」



 そしてギデオンも同じように儀礼を行う。

 ……緊張のあまり噛み噛みだったのは仕方ないだろう。


 儀式は簡略ながら、これで二人は晴れて正騎士となった。



 その様子を間近で見ていたエステルは……


(うわ〜……いいなぁ〜、カッコいいなぁ……。早く私も騎士になりたいなぁ……)


 と、ますます騎士に対する憧れの気持ちを強めるのであった。



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