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人身売買組織壊滅作戦



 国王アルドと騎士団の幹部が居並ぶ会議室。

 そんな中に何故か平民の娘であるエステルが混じっているのは異様な光景とも言えた。


 アルドの隣に座った彼女に、今も騎士たちの視線が集まっているが……当の本人はまるで萎縮することなくニコニコとしている。

 よほど『極秘任務』の会議に参加できるのが嬉しいのだろう。




「よし、皆揃ったな。今回皆に集まってもらったのは他でもない。近ごろ、王都の民を脅かしている人身売買組織……『宵闇の翼』の壊滅に向けた作戦についての最終確認を行いたい」


 アルドが視線を巡らせて幹部騎士たちを見やりながら、会議の開始を告げた。



「既に各部隊には通知されていると思うが……これまで散々手を焼かされてきた闇の組織を、今度こそ確実に潰すための極秘作戦だ。心して遂行に当たるように。……ディセフ」


「はっ!作戦の詳細については私から説明させていただきます」


 アルドの言葉を引継いで、ディセフが說明を始めようとするが……


 年配の騎士が一人、手を上げて発言の許可を求める。



「申してみよ」


「ありがとうございます。作戦の詳細を詰める前に……そちらのお嬢様についてご説明頂いても?」


 アルドの許可を得た騎士が発言すると、再びその場の視線がエステルに集まった。



「ほぇ?私?え〜と……」


「彼女は今回の作戦の要となる娘で、エステルと言う。……今度、俺の後宮に入る予定の者だ」


 何と答えるべきかエステルが悩んでいると、アルドがそのように説明した。

 その言葉に、騎士たちの間に動揺が走る。



「へ、陛下、よろしいのですか?」


「騎士団には腕の立つ女性もおります。危険な任務にそのような方を参加させるなど、同意いたしかねますぞ」


 口々に反論する騎士たち。

 王の伴侶となるかもしれない女性を危険な目にあわせるわけにはいかない……口にする理由はそういったものだが、騎士団としてのメンツ、プライドというのも多分にあるのだろう。



「貴兄らの疑念はもっともだ。しかし、今回の作戦ではどうしても単独行動が求められる。何か不測の事態が起きた場合に、自力で切り抜けられるほどの実力がある女性騎士はいないだろう。それに加えて、容姿が優れている……という点も必要だ」


 ちら……とエステルを横目に見ながらアルドは言う。



「確かに、エステル嬢はお美しいですが……」


「えへへ〜」


 美しいと言われて照れるエステル。

 容姿を褒められて喜ぶところは、多少は女らしさがあるのかもしれない。


 しかし、その様子を見た騎士たちの疑念は更に増す。

 どう見ても強そうには見えないからだ。



「……陛下のお言葉とはいえ、彼女ならば危機に陥っても単独で切り抜けられる……とは、到底信じられないのですが」


 その言葉にディセフは苦笑する。

 しかし、彼はその身をもってエステルの実力を確認しているのだ。

 ……まさに命がけで。



「まあ、信じられないのは無理もないですけどね……ですが、少なくとも彼女は私よりも強いですよ」


「俺とはほぼ互角だったな」


「なっ!?ディセフはともかく……陛下とですか?」


「俺はともかくって……」


「とにかくだ、今回の作戦において彼女以上の適任者はいないと言う事だ(……本当は俺だって反対なんだがな)」


 内心ではエステルを作戦に参加させたくないと思いつつも、それはおくびにも出さずにアルドは断言する。

 問答はこれで終わり、とばかりに。


 騎士幹部たちは未だに信じられない気持ちはあるが……王がそこまで言ったからには、それ以上の否やを差し挟む事はできないだろう。



「さて……それでは作戦を説明させていただきます」


 そうしてようやく、ディセフは説明を開始することが出来るのだった。







 作戦の概略はそれほど難しい話ではない。


 ようするに、エステルを囮として組織の内部に潜入させて、その中枢に迫る……というものだ。


 正式な騎士の一員でもないエステルに、このような重大な役割を任せるのは誰もが(作戦を認めたアルドでさえも)複雑な思いを抱くのだが……



「わたし、頑張ります!!悪の組織を壊滅させます!!」


 当の本人はものすごくやる気に満ちている。

 騎士幹部たちの懐疑的な視線もなんのそのだ。



 もう既に彼女の頭の中では……


 地下組織に潜入して捕まった女性達を発見し、彼女たちを護りながら脱出を試み……

 大立ち回りを演じ、並み居る敵をバッタバッタとなぎ倒し、更には大ボスを死闘の果に打倒して……遂に組織は壊滅。

 救い出した女性たちから『聖女騎士さま〜!』と彼女を称える声が…………


 という場面が何度も繰り返されているのだった。



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