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作戦会議



「…………という事があったんです~」


「まぁ、そんな事が……お怪我はございませんか?」


「だいじょ~ぶ!」


 後宮に戻ってきたエステルは、街で起きた事件の事をクレハに説明した。




 エステルが人攫いに正義の鉄槌を下したあと……ディセフの他にも複数の騎士や衛兵が現れ、人攫いの男達は全員捕縛され、そのまま騎士団詰所に連行された。

 そしてティーナも事情聴取と保護のため騎士団詰所に行くことになったのでエステルはそれを見送ったあと、後宮に戻ってきたのだが……



「それでね、これからディセフさんと極秘の作戦会議をすることになってるんです!」


 ディセフが別れ際に、『人身売買組織壊滅作戦について極秘に相談したいので、城で待っててくれ』と言ってきたのだ。


 ……放っておくのは不味いと考えた彼のファインプレーであろう。

 おそらく彼がそう言わなければ、今夜にでもエステルは連絡場所の酒場に単独で殴り込みをかけていたはずだから。


 しかし、彼女の『極秘』とはいったい……

 使用人であるクレハに話すのは良いのだろうか?



「ディセフ様……ですか」


「あ、知ってます?」


「ええ、もちろんです。あの方は、アルド陛下の懐刀とも言われる近衛騎士様です」


 何かとアルドに振り回されるディセフであるが、それは信頼をおいているからこそ……だろう。



「へぇ~、アルド陛下の…………確かに『そこそこ』強そうだったかも」


「そ、そこそこ……?」


 エステル評価指標において『そこそこ』は相当な猛者という事になるのだが、基準を知らないクレハはその言いように驚きを見せる。


 そしてディセフだが……エステルの本気の一撃から逃げおおせたという事実だけでも、彼が強者なのは間違いない。



「という事で、そのうち連絡が来ると思うので、取り次ぎお願いしますね~。それまで部屋でのんびりしてますから」


「はい、承知しました。では昼食はこちらにお持ちしますね」



 そうしてエステルは、ゆっくりと自室で寛ぎながら連絡を待つのであった。









 コンコン……


「エステル様、失礼します。ディセフ様からご連絡を頂きました」



 エステルが暫く居間で過ごしていると、クレハがその報せを持ってきた。



「あ、わかりました!どこへ行けば良いですか?」


「騎士団本部の会議室までお越しくださいとの事です。ご案内いたしますね」



 そして、エステルはクレハに案内され、王城内にある王国騎士団本部へと向かった。

 実は登用試験の時に近くまでいったものの、直ぐに後宮の方に移動したので、今回が初訪問となる。



(きっと……強い人がたくさんいるんだよね!)



 ……かなり騎士団のハードルが上がったようだ。

 エステルの目に叶うような者など、ごく限られるのだが……彼女はその事実をあまり理解していない。


 しかし、国王アルドの強さはエステルが期待した以上だったし、同じく強いと聞いた騎士団長も相当なものに違いない……と、エステルは考えていた。



 後宮を出て王城に入り、複雑に入り組んだ廊下を暫く進んでいくと目的の場所に到着する。


 騎士団の会議室の大きな両開きの扉の前にディセフが待ち構えており、エステルに声をかけてきた。



「エステル嬢、ご足労頂き感謝します」


「あ、ディセフさん、さっきぶりです!よろしくお願いしますね~」


「こちらこそ。さぁ、中へ……」


 ディセフが扉を開けてエステルを中に招き入れる。

 クレハは扉の外で待機するようだ。



 会議室の中に入ると……そこには国王アルドと騎士団幹部の者たちが数名、『ロ』の字型に配置された机に着席していた。


 彼らはエステルが中に入ってくると、一斉に彼女に視線を向ける。

 普通の令嬢であれば鍛え上げられた騎士たちの鋭い視線を向けられれば、恐ろしくなって萎縮しそうなものであるが、我らがエステルはそんなものは意にも介さない。

 騎士たちの視線が集まる中、彼女はいつも通りの笑顔を浮かべて……


「あ、みなさんこんにちは~!」


 なんて、挨拶する余裕さえあるのだ。




「エステル、よく来てくれた。こっちに来てくれ」


「あ、アルド陛下。わかりました!」


 アルドがエステルを呼んで自分の隣に座らせる。

 彼が座るのは当然ながら上座であり、その近くには誰もおらず、少し離れて幹部たちは座っていた。


 それを見た騎士団の幹部たちは一瞬だけ驚きをあらわにするが、直ぐに元の表情となる。

 エステルの存在を疑問に思っているが、王が直接指示したことに否やを唱える者はここにはいない。

 誰も彼も王に忠誠を誓う騎士なのだから。



 そしてディセフも着席し……『人身売買組織壊滅作戦』の会議が始まるのだった。



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