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尋問


 何とかゴロツキのリーダー格の男を復活させ、人身売買組織の情報を聞き出そうとしたエステルだったが……



「何にも知らない……?そんなわけ無いでしょ」


「う、嘘じゃねぇ!俺等はただの末端なんだ!本当に、組織の事は殆ど知らねぇんだ……信じてくれ!」



 エステルから強烈な闘気をぶつけられ、カタカタと震えながらも男は人身売買組織の詳細は何も知らないという。

 その様子からすると、男が嘘をついているようには見えなかった。


 先程ティーナから聞いた話でも、捕まるのは末端ばかりで全容が掴めない……との事だったので、エステルは彼の口から組織の情報を入手するのは諦める。


 しかし。



「でも、私やティーナさんを売ろうとしたのなら……そいつらと接触する方法があるんでしょ?」


 今回ばかりはエステル・ブレーンのポンコツさは鳴りを潜め、まるで凄腕の女騎士のように男に問い質す。

 ……本当に彼女はエステルなのだろうか。



「そ、それは…………」


 エステルの質問に男は言い淀むが……



「ひぃっ!?」


 更に強くなった彼女の闘気が浴びせられると、男はへたり込んで恐怖で顔を歪める。


 腰を抜かして地面に座り込み、その体勢のまま後退るが……それに合わせてエステルも間を詰める。



「……教えなさい。すり潰すよ?」


 普段の快活で脳天気な彼女からは想像もつかない氷の表情。

 それとは逆に、絶大な『気』が陽炎のように空気を揺るがせる様は凄まじい熱量を感じさせるほど。

 普段から荒事を生業とする男であっても、鬼神の前ではただ震え上がる事しかできない。



「わ、分かった!!教える!!教えるから勘弁してくれ!!」


 ついに恐怖に屈した男は観念する。



「……よし。それじゃあ、教えてくれる?」


 それまでの恐ろしい雰囲気を一転させ、エステルは再び男に質問した。


 男は霧散した闘気にほっとした表情を浮かべ、少し躊躇ってから口を開いた。



「……決められた連絡場所があるんだ。一見普通の、なんてこたぁねぇ酒場なんだが……」


「ふむふむ。お店の名前は?」


「……『宵闇亭』だ。そこでマスターに……」



 そうしてエステルは男から店のある場所と、連絡員と接触するための情報を聞き出した。



「なるほど〜。それじゃあ早速そこに行ってみようかな」


「いや、店は夕方からしか開いてねぇぜ」


 エステルは迅速果断にそう言うが、男が待ったをかけた。

 酒場なのだからそれも当然だろう。




「そっか……なるべく早く妹さんを助けに行きたいけど……」


「エステル様…………ありがとうございます。でも、どうかご無理はなさらず……」


 ティーナの方こそ妹を早く助けたいと思っているはずだが、彼女はエステルが躊躇いなく裏組織と戦おうとしているのを見て、彼女の身も心配する。



「取り敢えず夜まで待って、その間作戦を考えるとして…………こいつらはどうしようかな」


「み、見逃してくれ…………」


「そんなわけないでしょ。これまでも女の人を攫ってたんだから、許すわけにはいかないよ。取り敢えず騎士団詰所に連れてって……」



 エステルがそう言いかけたとき、その場に新たな人物が現れる。




「エステル嬢、それには及ばない」


「へ?……あなたは……騎士?」



 現れたのは20代半ばくらいの男。

 細身だがよく鍛えられた身体に、見覚えのある軽鎧……王国騎士の装備だ。



「ああ。俺は王国騎士団のディセフと言う」


「ディセフさん?…………はて?どこかで会ったような……?」


「(ギクゥッ!?)……いや、初対面だが」



 かつて王の命令によりエステルの実力を測るため、後宮で彼女を襲撃したディセフ。

 エステルはどうやら彼の気配が記憶に引っかかったようだが、思い出すには至らない。


 ディセフは内心で焦りながらも、表向きは冷静に初対面だと説明する。

 ……彼の背中には冷たい汗が伝い落ちていた。



「そっか、気のせいか〜」


「そうそう、気のせいだ(ほっ……)」



 何とか誤魔化して、やはり内心で安堵の息をつく。



「じゃあ、こいつらは任せても?」


「ああ、もちろんだ。騎士団としても人身売買組織の情報は欲しいからな。……そちらのお嬢さんも、事情を聞かせてくれ」


「は、はい……!」


 ディセフはそう言うが……エステルはその言葉に違和感を覚えた。

 ……いつになく鋭い。



「……どこから話を聞いてたんですか?というか……何で私の名前を?」


 ある程度事情を押さえている事から察するに、彼はエステルとティーナ、ゴロツキのリーダーとのやり取りを聞いていたはずだ。

 それも、野生の勘を持つエステルに気取られる事なく。



「あ〜…………実は、アルド陛下の指令なんだ。……アンタが街で行動する際には、その動向は押さえておくように……ってな(途中見失ったんだが、取り敢えずセーフだ)」


「あ、なるほど〜。『極秘任務』ですね!!」


 事情を聞いたエステルは、目を輝かせて言った。


 どうも『極秘任務』という言葉が彼女のマイブームとなっているようだ。



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