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寛ぎの空間


 騎士の登用試験を受けに来たはずが、何故か後宮に泊まることになったエステル。

 平民がそんなところに泊まることになれば気後れしそうなものであるが……我らがエステルは全く気にしない。

 エステル・ハートは鋼で出来ているのだ。




「こちらがエステル様のお部屋になります。ごゆっくりお寛ぎ頂ければと思います」


「ふわぁ……凄く広い……」


 クレハに案内されて宿泊する部屋へやって来たエステル。


 そこは彼女が今まで泊まっていた宿などとは比較にならない豪華な部屋だ。


 扉を開けて中に入ると、先ずは広々とした玄関が迎える。

 ここだけでクレイと一緒に泊まっていた宿の二人部屋と良い勝負である。

 更に玄関奥の扉を開くと、三人が並んで歩けるくらいに広々とした廊下が伸びる。

 廊下の突き当りに大きな扉があり、左右にも幾つかの扉が並ぶ。



「突き当りの部屋が居間、続きに寝室や浴室などが御座います。左右にあるのは使用人の控え部屋やキッチンなど……私達がエステル様のお世話をするための部屋となってます」


 クレハが各部屋の説明をするが、あまりのスケールの違いにエステルは目を白黒させている。



「……え~と、クレハさん、ここに何人泊まるんですか?」

 

「こちらはエステル様お一人のためのお部屋です。あ、私も使用人控室は使わせて頂きますね」


「ふわぁ……」


 流石に豪胆で物事を深く考えないたちのエステルであっても、驚きのあまり感嘆のため息しか出てこないようだ。




 そして、案内されるままに廊下奥の扉から居間に入ったエステルだが……



「ふぇ~……」


 またもや驚きの声が漏れる。


 とにかく広い。

 一人で使うような空間とは思えないほどだ。

 10人ほど集まってパーティをしても十分な余裕があるだろう。

 部屋を入って突き当りの壁は大きなガラス張りの窓になっていて、更にその先はバルコニーに出られるようだ。

 部屋の中は魔法の照明で照らされて非常に明るいが、窓の外はもう夕暮れ時で暗くなりつつあった。



 部屋の右手の扉は寝室や衣装部屋、お手洗い、浴室に続いているとの事。



(うわぁ……こんなところに泊まれるなんて……騎士って凄いんだぁ!)


 そんなわけあるか。

 誰か早く彼女に説明をしてください……




「それでは……先ずはお着替えいたしましょうか。そのドレスのままではごゆっくり出来ないでしょうから」


「あ、そうですね。そう言えば私の服と剣は……」


「エステル様のお召し物は、洗濯して後ほど剣と一緒にお返しいたします。こちらに部屋着のご用意がありますので、そちらに着替えていただければと思います」


「分かりました~。わざわざ洗濯して頂いてありがとうございます!」



 そしてエステルは居間から続く衣装部屋に通される。

 ご多分に漏れずその部屋もかなりの広さがある。


 ずら~……と並ぶクローゼットに化粧台、大きな姿見。

 クローゼットの1つを開けると……がらんとしてほとんど服は入っていなかったが、それは当然だろう。


 幾つかかかっていた服の一つをクレハは手にとる。



「こちらのワンピースで如何でしょうか?」


「え~と……よく分からないのでお任せします。……そう言えばドレスもそうですけど、なんで私のサイズにピッタリの服が用意されてるんです?」


 そんな疑問を口にするエステル。

 ドレスの時点で気が付いても良さそうなものだが……



「提出していただいた書類に身長、体重を書いて頂いてたかと思います。そこから大体のサイズは分かりますし、ご用意させていただいたのは、ある程度調整の効くものですので」


「あ、そっか~!」


 クレハの説明にエステルは納得する。

 だが実際は……


 エステルが提出した書類からおおよそのサイズを用意したのはその通りだ。

 ある程度調整が効く服を用意した……というのも。

 しかし、先日彼女が王城を訪れたとき、丁度いい機会だ……と言う事でアランがこっそり指示し、使用人たちが目算で測っていたのである。

 王城の使用人……恐るべし。





「それではお着替えも済みましたし、居間でゆっくりお寛ぎ下さい。いまお茶をお淹れしますね」


 そうして、着替え終わったエステルは居間に一人取り残される。

 取り敢えずソファにちょこん、と腰掛けるが……



「……何だか落ち着かない」



 エステルは非常に活動的な娘である。

 何もせず座っているだけ……というのは、どうにも落ち着かないのだ。



「お茶を淹れてくれるって言ってたし、それは頂きたいけど……せっかくだし探検に行きたいな~」



 まだ座ったばかりだというのにそんな事を言い出す始末。

 もう少し大人しくしていられないのだろうか……


 

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