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【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ  作者: O.T.I
剣聖の娘、騎士登用試験を受ける……?
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ライバル



 エステルが後宮で人生初のドレスを着て、人生初の化粧を施されようとしていた時……


 騎士団本部の作戦会議室では、騎士志望の若者たちが筆記試験を受けていた。

 人数がかなり多いので、複数の部屋を使って行われてる。


 その中にはクレイの姿もあるのだが……



(……思ったよりは簡単だな。これならエステルでも問題ないだろ。それにしても……アイツ、この部屋じゃなかったのか)


 エステルが騎士団本部から離れて後宮に行ってる事など知る由もないクレイ。

 当然、別の部屋で筆記試験を受けているものだと彼は信じている。



(……はぁ。試験は簡単だが、エステルだからなぁ……不安だ)


 筆記試験でトラブルが発生するなんて早々無いだろうが、生粋のトラブルメーカーである彼女が視界にいないのはとても不安を増大させる。


 そしてそれは、決して彼の取り越し苦労であるとは言えない。

 実際、既に彼女は現在進行形でトラブルに巻き込まれているところなのだから……















「さぁ、如何でしょうか?」


「…………これ、私なの?」


 ドレスに着替え、クレハに化粧を施してもらったエステル。

 大きな姿見で全身を確認した彼女の第一声がそれだった。


 めかしこまなくても十分過ぎるくらいに美少女であるエステルだが、プロの手にかかって身嗜みを整えられた彼女は、まさに輝くばかりの美貌であった。

 ネックレスやイヤリングなどのアクセサリー類も、あまり派手になりすぎないよう、あくまで彼女を引き立てるために使われている。



 自身の容姿やお洒落にさしたる興味もなかったエステルであっても、流石にその変貌ぶりには驚きを隠せなかった。



「わたし……綺麗……」


 そんな自画自賛とも言える呟きすら漏れ出てくる。

 これを機に、多少はお洒落にも興味が湧いたかも知れない。



「はい。とてもお綺麗でいらっしゃいます。きっと、どんな殿方であっても魅了してしまわれるでしょうね……」


 そう言うクレハの賛辞の言葉も、どこかうっとりした響きが混じっていた。

 同性の目から見ても魅了されるものなのだろう。



「……でも、やっぱり動きにくいなぁ。こんな格好で私、ちゃんと戦えるかなぁ?」


「何をおっしゃいます。これこそ女性の戦いに相応しい姿ではないですか」


「女性が戦うための姿……はい!!私、頑張ります!!」


 彼女たちの会話は、噛み合っているようで噛み合ってない。


 エステルはまだ、これが騎士登用試験のための準備であると信じている。

 果たして、彼女はいつ気付くのだろうか……












「さて、時間も丁度よい頃合いですね……そろそろ行きましょうか」


「次はどこへ行くんですか?……それに、他の受験者は……?」


「皆様、一階のダンスホールの方にお集まりかと。ご案内いたします」


 そう言って彼女は、再びエステルを案内するため部屋の外に出る。

 そしてエステルもついていくのだが……



「う〜……歩きにくい」


「ヒールは慣れていらっしゃらないのですね。ゆっくり行きますから、足元お気をつけくださいね」



 エステルは、これも人生初のハイヒールを履いて、普通に歩くのにも一苦労だ。



(私、どこかで騎士の事を舐めてた……やっぱり凄く大変なんだ……でも、がんばる!!)



 困難な騎士への道のり(勘違い)を前に、新たな闘志を燃やすエステルであった。





















 一度玄関ホールへ降りて、今度は入り口の扉から入って真っ直ぐ突き当りにある大きな扉をくぐる。

 そこは、広々とした空間を持つダンスホールだ。



 エステルたちが中に入ると、既に何人もの少女・淑女たちが集まっている。

 一人静かに佇んでいる者もいれば、友人と集まって談笑してる者たちもいた。


 そして、新たにやって来たエステルに無遠慮な視線が注がれた。





(あの人たちがライバルなんだね!!……でも、あんまり強そうに見えないなぁ?)


 値踏みするような視線に晒されてもエステルは全く動じず、逆にライバルたちの実力を推し量ろうとする。

 しかし、どう見ても戦いなど無縁そうに思える彼女たちを見て戸惑うエステル。



(……はっ!?いけない!!さっき自分を戒めたばかりだよ!ほら、よく見れば……あんな靴でも普通に歩いてるよ。きっと、実力を隠してるに違いないよ!!う〜……負けない!負けないよ!!!)



 そんなふうに、彼女は内心ますます闘志を燃やす。



 ……漏れ出た闘気にあてられた少女たちの何人かが青褪めているのに、彼女は全く気が付かないのであった。




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