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【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ  作者: O.T.I
剣聖の娘、騎士登用試験を受ける……?
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試験会場……?



 エステルは別会場での試験という事で、案内してくれる者が来るまでその場で待機していた。


 次々と受験生が騎士団本部の建物の中に入っていくのを、彼女は暇そうに、ぼ~……と眺める。



(う~ん……?何で私だけ別なんだろ?……あぁ、もしかして男女別なのかな?)



実際、入団希望者は男性が殆んどであるが、少ないながらエステルの他にも女性はいる。

 しかし、彼女たちが男性と同じように騎士団本部へ入って行くのをエステルは何度か見かけた。



(……まぁ、いいか。ちゃんと試験は受けられるみたいだし)


 考えても分からないことは考えても無駄……と、エステルはそれ以上は気にしないことにした。







 そして、エステル以外の受験生が全員試験会場に入った頃、ようやく彼女を案内する者が現れた。


「貴女様がエステル様でいらっしゃいますね?」



 声をかけてきたのは妙齢の女性。 

 彼女は王城の使用人の服……いわゆるメイド服に身を包んでおり、とても騎士には見えない。

 薄い茶色の髪をシニヨンに纏め頭巾を被る。

 瞳の色も髪に近い色合いの茶。

 柔和な顔立ちで優しげな微笑みを称えている。

 誰の目も惹くと言うほどではないが美人の部類だろう。



「はい!!エステルは私です!!」


「大変お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。少々準備に手間取ってしまい……。あ、申し遅れました……私、王城の使用人でクレハと申します。どうぞよろしくお願いいたします」


「あわわ……えっとえっと、よ、よろしくお願いします?」


 折り目正しく挨拶されたエステルは、何と返せばよいのかと慌てふためき、何故か疑問形で返す。

 まるで貴族相手のような丁寧な対応をされて、相当テンパってるようだ。



「では、ご案内いたします。こちらへどうぞ……」


 そうして、王城の使用人……クレハは案内を始める。


 彼女は騎士団本部の建物の横にある小径を進み、王城の裏口を目指す。



「申し訳ありません。本来はエステル様のようなご令嬢をこのような通用口からご案内するのは失礼にあたるのですが……時間がありませんのでご容赦ください」


「ふにゃ……ご令嬢……私のこと?」


 自分を指すにしては聞き慣れない単語で、エステルは戸惑う。

 

「はい。あ、少々手狭ですのでお気をつけください」


 注意を促しながらクレハが通用口の扉を開ける。

 その先は、彼女が言った通り人一人が通るには十分だが、二人並んで歩くには少々狭い通路が奥へと続いている。

 魔法の燭台による灯りも最低限のもの。

 少々薄暗く、確かに貴人を歩かせるようなところでは無いだろう。

 ……そもそもエステルは単なる村娘なので、全く問題はないのだが。


 通路の両側には幾つかの木の扉。

 雰囲気的には倉庫か何かだろうか?

 完全に裏方の作業用といった趣。


 そんな場所を二人は進んでいく。


 エステルは何だか迷宮探索をしているような感覚になり、ちょっとワクワクしてきた。


 だがそんな通路も少し歩いただけで終わりを告げ、十分に広く明るい廊下へと出るのだった。



「……あれ?ここは……」


 エステルはその場所に見覚えがあった。


 つい先日……アランに案内されて通った廊下だ。

 彼女は以前豪語していた通り、一度行った場所は忘れることがない。

 ……進んで未知の場所に行きたがるので、よく迷子になるが。


 ともかく、彼女が今歩いているのは以前も通った廊下。

 そうすると、いま向かっている場所は……


「もしかして『後宮』に向かってるんですか?」


 そう、この先には主のいない後宮があるはずだ。


 エステルに聞かれたクレハは少し驚きながら答える。


「はい、その通りでございます。よくお分かりになりましたね……」


「えへへ……この間、アランさんに案内されて行ったんですよ」


「アラン……様?……あぁ、なるほど。そういう事でございましたか」


 エステルの説明を聞いて納得の表情を浮かべるクレハ。

 その事から、どうやら彼女もエステルの対応に疑問を感じていたのが分かる。

 これまでの彼女の態度を見る限り、そのような疑念を持っていたことなど分からなかったが、余計な事を言わないのは優れた使用人であるが故だろう。

 彼女の表情が変わったのもほんの一瞬の事。

 直ぐにもとの微笑みを称えた表情に戻った。



「一度来られてるのであればお分かりかと思いますが、あともう少しで到着いたします」


「はい!!」


(そっか~……確かにあそこなら、戦うのに十分な広さがあるもんね)



 ……ここに至っても、まだエステルは自分が騎士登用試験の会場に向かっているものと信じているのだった。



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