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【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ  作者: O.T.I
剣聖の娘、騎士登用試験を受ける……?
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騎士志願者たち



 エルネ城の城壁沿いの脇道を進むエステルたち。

 城はかなりの大きさなので当然その敷地は非常に広大である。

 門番に聞いた話では裏手の方に回り込むらしい。



「城の裏側……ここからでも結構遠いな。もうあまり時間がないから走るか」


「おっけ〜!」



 そして二人は一旦立ち止まってから前屈みになり……



 ドンッ!!


 ドンッ!!



 と、踏み込みの大きな音を響かせて瞬時にトップスピードに乗る。

 そして衝撃波すら伴ってあっという間にその場を走り去ってしまった。



 たまたま朝の散歩をしていた老紳士が、驚きのあまり腰を抜かしてへたり込むのに彼らは気が付かなかった。















「おっと!!あそこみたいだぞ!」


「いっぱい人が集まってるね!!」



 走り出してからそれほど経たないうちに、多くの人集りが二人の行先に見えてきた。

 帯剣した若者たちの……その出で立ちや雰囲気からして、騎士志望者の集団で間違いないだろう。



 ザザーーーッッ!!!



 あっという間にそこに近付くと、集団の直前でエステルたちは急制動をかけて止まる。

 あまりの勢いだったものだから、もうもうと盛大に土煙が舞った。


 ド派手な二人の登場に好奇の視線が集まる。

 特にエステルは、その美少女ぶりも相まって無数の視線が突き刺さるが、当人はどこ吹く風である。



 さて……彼らがやってきた場所は、門番に聞いた通り城壁に沿ってぐるっと城を回り込んだ裏側。

 かなりの広さを持つ広場。

 石畳に覆われて街路樹なども整備された王城前広場に対して、こちらは土がむき出しの地面という殺風景な場所だ。


 

 ここは王国騎士団の騎士や衛兵たちが大規模な訓練を行うめの演習場である。

 そして、演習場の王城寄りには王国騎士団本部の建物が建っていた。


 本部というだけあって、かなり大きな建物だ。

 ここには事務所、作戦会議室、屋内訓練場、宿舎、食堂などがあり、騎士団の活動に必要な機能が備わっている。




「もし合格すれば……ここで俺たちも働くことになるかな?」


「そだね〜、がんばろっ!!」



「おいおいおい、冗談はよしてくれ。お前たちみたいな田舎モンのガキどもが合格出来る訳ないだろ?」


 エステルたちが話をしていると、そんなふうに彼らを馬鹿にするような言葉をかけてくる者がいた。

 自殺志願者だろうか。


 二人が声のした方を振り向くと、そこには筋骨隆々の巨漢が立っていた。

 エステルなど彼の胸元までしか頭が届かないほど。

 短く刈り込んだ黒髪、その体躯に見合った厳つい容貌。

 その顔には、ニヤニヤと人を小馬鹿にするようないやらしい笑みが浮かんでいた。



「なんだ、お前?」


「はわ〜……おっきいなぁ……」


 クレイは不機嫌そうに返し、エステルは男の顔を見上げて目を丸くして驚いている。



「わざわざ田舎から出てきたのに残念だな。恥をかかないうちに帰り支度したほうが身のためだぜ?」


 二人の服装などから王都外から来たのだと当たりをつけたのだろう。

 そして、二人はパッと見では強そうに見えないので、少しでも優位に立とうと威圧してきたようだ。

 先程の非常識なスピードで走って登場したのを見れば、彼らが只者ではないことが分かりそうなものであるが……



「余計なお世話だな。他人の心配より自分の心配をしたらどうだ?物語なんかでよくあるだろ?大口叩くデカブツは、大抵が噛ませ犬だ」


 と、クレイは辛辣に返した。


 彼は慎重派で余計な事には首を突っ込まない主義だが……

 シモンの民たる者、売られた喧嘩はきっちり買うのだ。



「んだとぉ……てめえ、その言葉……後悔するなよ!!」


 クレイの言葉に怒りをあらわにするが、ここで揉め事を起こさないくらいの分別はあるらしい。


 そして、次はエステルに視線を向けて捨て台詞を吐こうとするが……



「そっちの女も、そんな細腕で騎士が務まると思ったら大間違い…………!!?」


 男はエステルの顔を見て、雷に打たれたように固まった。


「?……どうしたの?」


 クレイと大男の険悪な雰囲気は気にもせず、ほぇ〜……と男を眺めていたエステルは、急に固まった彼の様子に怪訝そうに訪ねた。


「!?いや、何でもねえ!!……ふんっ!せいぜい頑張ることだな!!」


「うん!!頑張るよ!!ありがとうね!!」


 最後の捨て台詞にも、エステルは言葉通りの意味に受け取ってお礼の言葉を返す。

 それに面食らった男は、顔を赤らめてその場を離れていってしまった……




(……惚れたな。全く、どいつもこいつも見た目に騙されやがって)


 去り際の様子で男の心情を察したクレイは、内心でそんな事を思うのだった。


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