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制圧……?



 仮面の男が放った魔物、『ルゥ・ガルゥ』と対峙するエステル。

 クレイやギデオン、そしてアルドも部下の騎士たちに任せ合流する。


 エステルとクレイは魔物退治は慣れたもの。

 ギデオンも辺境の強力な魔物と戦った経験はないが、ハンターとして活動していたので人間相手よりはやりやすい。

 アルドはエステルとも互角の力を持つ強者だ。

 この場ではコレ以上は考えられない最強の布陣である。



 そして魔物たちは……仲間を倒された怒りに唸り声を上げつつも、一度に数体を屠ったエステルに対して警戒している様子。



「スピードと連携に気をつけろよ」


「ぜんぜん問題ないよ。一撃必殺で確実に仕留めていこう」


「ああ」


 クレイとエステルは強力な魔物を前にしても落ち着いて言葉を交わす。

 シモン村の自警団に所属していた二人にとって、辺境の魔物たちとの戦いは日常に過ぎなかったから。



「よし、やるか。……陛下、俺たちはコイツらと戦い慣れてるんで、前は任せて下さい。他に抜けていきそうなヤツや、討ち漏らしの方をお願いします。ギデオンも頼んだぞ」


「……分かった」


「任せてくれ!!」


 クレイの頼みを、アルドとギデオンは了承する。

 アルドが一瞬ためらったのは、自分も前に出て戦うつもりだったからだが、戦い慣れた者に任せたほうが良いだろうと判断したらしい。



 そして、その場にとどまって警戒していたルゥ・ガルゥたちは、エステルたちの戦意の高まりを受けたのか再び動き始める。

 最初の襲撃とは異なり、隊列を組んだ統制のとれた動き……それこそがこの魔物の真の恐ろしさだ。



 エステルとクレイも魔物を迎え討つために飛び出していく。

 数の差では圧倒的不利……しかし、二人とも全く意に介さずに群れの中に突っ込んでいった。



「はぁーーっっ!!!スペシャルローリングエステルあたーーっくっ!!!」


 エステルは大剣を両手でぐるぐると回転させながら更に大きく振り回し、先頭を走る魔物たちを蹂躙していく。

 ……そしてやはり、技名はイマイチである。



「せいっ!!はぁっ!!」


 クレイも、エステルの攻撃から逃れた魔物を一頭ずつ確実に仕留める。



 そうやって二人で多くの魔物を撃退していくが、中には二人を避けて無力な獲物……舞台上の少女たちを狙おうとする敵もいた。


 しかし。


「させるかっ!!はっ!!」


「ここから先には行かせねぇぜっ!!ふんっ!!」


 アルドとギデオン、そして仮面の男たちの制圧を終えた騎士たちも戦列に加わって魔物を抑え込もうとする。


「辺境の強力な魔物だ!!無理せず複数人で当たれ!!」


「「「はっ!!」」」


 アルドや、辛うじてギデオンであれば一対一でも対処できるが、それ以外の者には荷が重いと判断したアルドはそのように指示した。

 しかし騎士たちも精鋭揃ではあるので、一人が攻撃を受け止める間にもう一人が攻撃する……というツーマンセルによって戦線は安定する。




(ふむふむ……あれが騎士の戦い方か~。なるほど~、勉強になるな~)


 怒涛の勢いで魔物たちを蹂躙する一方で、エステルはそんなふうに観察する余裕すらあった。

 クレイもそれは同様で、やはりこの二人とアルドは飛び抜けた力を持っている事が良く分かる。

 そして、先輩騎士たちが連携して戦う様は、騎士を目指しているエステルと騎士になりたてのクレイにとって意義のあるものだった。






 程なくして。

 エステルたちの活躍により、大きな被害を出すことなく全ての魔物たちは駆逐された。


 オークション会場にいた白仮面、黒仮面の男たちも殆どが無力化・拘束され……残るは『そこそこ』の白仮面だけとなった。



「もうあなただけだよ。大人しく降参しなさい。抵抗するなら相手になるけど?」


 びしっ!……と、大剣(バスタードソード)の切っ先を男に向けて、エステルは言い放った。

 仮に彼がエステルと同レベルの猛者であったとしても、もはや多勢に無勢のこの状況では降参するより他にないと思われた。



「……確かに。もはやこれまでか」


 そう言って男は意外な行動に出た。

 彼は徐ろに白い仮面を外して、自ら素顔を晒したのだ。

 その顔を見たエステル、クレイ、アルドは驚愕した。



「あなたは……モーゼスさん!?」


「……いや、違う。だけど確かに似ているな」


 そう。

 その男は……エル=ノイア神殿の大神官補佐であるモーゼスと良く似ていたのだ。

 モーゼスはジスタルやエドナとも知り合いだったらしいので、かつての『事件』に関わりがあったのかも知れないが……目の前の人物との関わりはいかなるものなのか?

 少なくとも血縁者だろうとは思われるのだが……



「お前は何者だ?」


 アルドが男に問うが、彼はそれには応えず視線を落として独り言のように呟きを漏らす。


「モーゼス……そうか。やけに騎士どもの展開が早いと思ったが……あいつの差し金か。なるほど、あの方(・・・)はこれを見越して……」


「……『あの方』とは組織の首領のことか?お前が幹部の一人であるのは間違いなさそうだが……とにかく、洗いざらい情報を吐いてもらうぞ」


 ようやく捕らえた組織の幹部だ。

 そして今ごろは、この場所以外の拠点と思われる場所にも捜査の手が入っているはず。

 全ての情報を明らかにして組織を完全に潰す……アルドは意気込んで、男の拘束を指示しようとしたが……



「……勘違いしてもらっては困る。『もはやこれまで』と言ったのは……俺が俺でいられる(・・・・・・・・)のが、もはやこれで最後と言う意味だっ!!」


 これまで常に淡々として冷静さを保っていた男だったが、最後の言葉には爆発するような気迫がこもっていた。


 そして次の瞬間。


 男の身体から絶大な力の波動が迸った。




「「「!!?」」」


 予想もしなかった突然の事態に、エステルたちは驚愕のあまり目を見開く。



 男の身体はみるみるうちに変容していき……

 そして、そこに現れたのは……人の身を超越した異形の者であった。




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