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剣聖の娘、真価を発揮する!


 彼らは、自分たちが今まで爆弾を抱えていたという事実に、今更ながら気付いた。



 エステルは抑え込んでいた闘気を爆発させると、まずは舞台上で少女たちを取り囲んでいた白仮面の男たちを無力化させるため行動を開始した。


 見た目は可憐な少女が突如として獰猛な肉食獣と化すのを目の当たりにした彼らは、驚きのあまり硬直している。

 それは致命的な隙となり、エステルはあっというまに男たちに肉薄して強烈なボディーブローを叩き込んでいく。



「ぶぇっ!?」


「ぐはぁっ!!」


「うぼぁっ!!」


 悶絶してその場に蹲る男たち。


 そして、そのタイミングで会場内にある複数の扉が音を立てて一斉に開け放たれ、アルド率いる部隊がなだれ込んできた。



「一人も取り逃がすな!!少女たちの安全にも配慮するんだ!!」



 静かだったオークション会場は、一転して怒号が飛び交う状況に陥った。

 突然の事態に混乱して狼狽する黒仮面のバイヤーたちに対し、騎士たちは統制のとれた動きで次々と彼らを無力化、捕縛していく。


 その一方で、白仮面の男たちは混乱から立ち直って騎士たちに応戦する者もいたが、クレイやギデオンら精鋭たちの前にその数を確実に減らしていった。



 と、その時。


「止まれ!!女たちがどうなっても良いのか!?」


 そう叫んだ白仮面の一人は観客席の隅の方に立ち、狙いを付けるかのように右腕を舞台上の少女たちに向けていた。

 そしてその手に火の玉が生まれる。

 更に、同じように舞台上を狙う者が数名確認できた。



「ちっ……!魔導士か!!」


 アルドは舌打ちする。

 だが、エステルならばきっと何とかしてくれるはず……と声をかけようとするが、それより前に彼女は行動していた。



「えいっ!!とりゃっ!!そりゃっ!!」


 エステルは足元に転がっていた石をいくつか拾い上げると、目にも止まらぬ速さで魔導士たちに向かって投げつける。

 可愛らしい掛け声とは裏腹に、猛烈な勢いで放たれたそれは正確に男たちの頭を直撃……彼らは悲鳴を上げるまもなく昏倒した。



「みんな!!絶対に護るからね!!」


 エステルの力強い言葉が、恐怖と絶望に心を支配されていた少女たちを勇気付ける。

 彼女たちはエステルの、騎士たちの活躍をその瞳に焼き付ける事だろう。




 そうして、騎士たちがその場を制圧するのも時間の問題と思われたのだが……




(あの男はどこに……)


 仮面の者たちの中でも最も手練れと思われた男を、エステルは探していた。

 

(……いた!!逃げるつもり!?)



 その男は混戦を避け、一見してその場から逃げようとしているようにも見えた。

 しかし出入口は全て騎士団員が押さえているので、逃げ場は無い。

 いかに手練れと言えど、単身で突破するのも困難であるはずだ。


 だが、彼は出入口に向かうでもなく……その動きからすると、人が少ない広い場所を目指しているらしかった。



(何をする気なの……?)


 少女たちを護りながらも男の動向に注目していたエステルは、彼の不可解な行動に疑問を感じていた。

 そしてその答えは直ぐに判明する。



 彼は自分の懐に手を入れ、何かを取り出してそれを掲げた。

 それぞれの指の間に挟まれた、いくつもの丸い宝玉のような何か。(・・・)


 エステルと同じように男の動きに気づいていたアルドが、その宝玉の正体に気が付いて驚愕の声を発する。


「あれは……まさか!?いかん!!誰かヤツを止めろ!!」


「もう遅い!!……出でよ!!そして思うがままに蹂躙するがいい!!」


 叫び声とともに宝玉が床に叩きつけられると、まばゆい光が溢れ出す。

 そして一瞬のうちにその光が晴れたあと、そこに現れたのは……!



「魔物!?あれは……ルゥ・ガルゥ!!」


 その魔物は、額から一本の角を生やした狼のような姿をしていた。

 体長は成人男性を優に超えるほどの巨躯を誇る。

 それが、十数体ほど。


 辺境の地に現れる魔物であり、エステルも何度も相手をしたことがあるのでよく知っている。

 彼女やクレイからすれば、単体ではそれほど脅威とはならないが、魔物と戦い慣れてない者にとっては危険な相手だ。

 何より数が多い上に、野生の狼と同じく連携を取ってくる点も厄介だ。

 護るべき者がいる状況では尚のこと。




『ぐるるぅ………』


 低く唸り声を発しながら、魔物たちは騎士団員を敵と見定めたようだ。

 思わぬ敵の出現に困惑しながらも、騎士たちは迎撃態勢を取った。


 そして魔物たちが一斉に駆け出し襲いかかろうとした、その時……!



「エステル!!」


 クレイが大声で叫ぶ。

 その手には、エステルに渡すために持ってきていた、彼女の愛剣である大剣(バスタードソード)が握られていた。


「クレイっ!!ソレちょうだいっ!!」


「ああ!!受け取れっ!!」


 そう言ってクレイは、大剣をエステルに向かって放り投げる。


 くるくると回転するそれを、大きく跳躍したエステルが空中で掴み取った。

 そして彼女はそのまま大剣を振りかぶって……


「くらえ!!スーパーウルトラエステルスラーシュッ!!!」


 少々微妙な技名を叫びながらの一閃!


 その衝撃波の一撃は、騎士たちに飛びかかる直前だった魔物たちの数体をまとめて薙ぎ払った。



 そして……


「みんな!!いくよっ!!」


 騎士たちの先頭に立ったエステルは、彼らを鼓舞する。

 美貌の聖女騎士が見せる勇ましい姿と圧倒的な力に、彼らの士気は否が応でも高まるのだった。




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