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行動開始



 監禁されていた部屋から連れ出されたエステルたちは、仮面の男たちに前後を挟まれながら地下通路を進む。

 やはり迷路のように複雑な道となっていて、何度も曲がり角や分岐点を経て進んでいく。

 エステルはしっかり道順を記憶しているが、他の者では初見ではなかなか一度では覚えきれるものではないだろう。



(方角的には……だんだんと北に向かってるのかな?)


 彼女の並外れた感覚によれば、何度も方向を変えながらも徐々に北へ向っているらしい。



 やがて曲がり角や分岐点は無くなって、ただひたすらに真っ直ぐな道を進むようになった。

 監禁部屋を出てから既に一時間以上は経過していた。


『……けっこう遠くまで来たと思います。この分だと、王都の外に出るのかも……』


『おそらく、そうだろう』



 エステルは自身が得た情報をアルドに逐一報告している。

 そして報告を受けたアルドは、その情報と地下遺跡の地図(・・・・・・・)を照らし合わせながら配下の者たちに指示を飛ばしていた。

 それによって、地上ではエステルたちを追うようにクレイやギデオンたち先行部隊が動いている。






「……どう見る?フレイ」


「向かっている先でオークション会場となりそうな広い場所は……ここですかね。幸い、その付近に地上から出入りできる場所があるようです」


 アルドに意見を聞かれたフレイは、そう言って地図上の一点を指し示す。

 なお、彼は文官なので軍事・治安関連は門外漢のはずであるが、アルドに請われ参謀役を引き受けている。


 そして彼が示したところには確かに広い空間が描かれており、大人数が集まるのに適していると思われた。


「古代の劇場跡地……とあるな。しかし、これほどのものが王都の地下に人知れず埋もれていたなどとは……俄には信じ難い」


 神殿地下に通じる秘密の通路の存在にも驚かされたものだが、それすらほんの一部であることに彼は驚嘆する。


「エルネア王国建国以前も、ここは既に大きな街だったとのことですからね。そしてエル=ノイア神殿も……。情報提供者によれば、この地図は代々の大神官が引き継いできた資料から写したということです。女神様がまだ地上におられた時代に築かれた都市の遺構……いわば聖域ですね」


「……だとすれば、ますます罰当たりなことだ」


 エル=ノイア神殿はエルネア王国よりも長い歴史を持っている。

 今フレイが言った通り、神話の時代から今に至るまで存在しているのだ。

 故に、王家も知らないような伝説や歴史的事実、秘された様々な情報を神殿が持っているのも不思議ではないのだろう。

 ……もっとも、前大神官ミゲルが追放処分を受けたことにより多くの事柄が引き継がれなかったらしい事は、現大神官ミラが示唆した通りである。





「この事件が解決したら地下遺跡も調査する必要があるだろう。……さて、オークションの現場は押さえるとして……神殿地下と、他に潜伏場所となりそうなところも押さえるべきか」


「ええ。ただ、それら全ての場所に……となると、かなりの人員を割く必要があると思います」


「そうだな。……こうなると、ディラックが不在なのも痛い」


 今回の事件とは別の理由で遠征しているという、騎士団長ディラック。

 直近の報告によれば、一度王都に戻るとの連絡があったらしいが……未だ帰還していない。

 部隊を分散させるとなれば有能な現場指揮官はいくらでも欲しいところなので、そういう意味ではタイミングが悪かった。



「ですが……おそらく組織の者はこの地図の写しが存在することを知らないはず。その点ではこちらの方が有利かと」


「そうだな……直前まで気取られずに潜入し、一気にカタを付けたい」


 かなりの規模の組織であることが予想されるが、流石に王国騎士団を凌ぐほどの組織力は無いだろう。

 なので出来るだけ人員を投入して、一気に制圧する算段だ。

 内部に潜入しているエステルの力も大いに頼る事になるだろう。


 そうして、エステルの報告を受けながら、確実に裏組織を壊滅させるため、それぞれが動き出す。



『エステル。そういうことなので、もう少し頑張ってくれ』


『はい!任せてください!一緒に悪いヤツらをギッタギタにやっつけましょう!』


 いつも通り元気いっぱいに返すエステル。

 ようやく動きが見えたことで退屈を脱した彼女は活き活きとしている。

 嬉々として任務をやり遂げるだろう。




 それからアルドはエステルとの念話を一旦終わらせ、現場に向かおうとする。

 だが、その前に……と、フレイが主に問う。



「そう言えば、ディラック殿を訪ねてきたという……ジスタル殿の事はどうされるおつもりです?」


「ああ、そうだった……。だが、今はこんな状況だからな。取り敢えず俺はこれから現場に向かうが……もし再び義父上(ちちうえ)達がいらしたら、丁重にお迎えするように」


「(義父上呼びは確定なのか……)……承知しました。気を付けて行ってらっしゃいませ」


 突っ込みは心の中だけで留め、今度こそ主を見送るフレイであった。



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